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ホフマン『砂男』再読して感想

 以前にも感想を書いたが、再読しての二度目の感想となる。

 主人公ナターナエルは、何らかの呪いや黒魔術じみた力によって破滅に追いやられたと見る見方もあるとは思う。

 個人的には、そうは受け取らず、ナターナエルの恋人のクララが言った通り、彼自身が病的な考えに囚われており、それゆえに破滅したのだと考えている。

 ナターナエルは自負心が強く、自分の考えに自信を持ち、固執する。聡明で、健全な精神の持ち主であるクララの忠告を素直に聞き入れることができない。

 一度は仲直りしたかに見えたが、根っこのところで気質を変えることはできない。よくできた自動人形のオリンピアを本物の女性と間違えて、クララを捨てて、オリンピアに求婚しようとする。

 オリンピアが、自分の言う事を、何でもはいはいと聞き入れてくれる女性だと思ったからである。

 主人公ナターナエルは、女性と、あるいは誰とでも、本当の意味で対等な関係を築くことができないタイプの若者だったのではなかろうか。

 破滅フラグを回避するにはどうすればよかっただろうか?

 クララを認めて、自分の言いなりにしたいと思わず、トータルに受け入れればよかったのだと思う。

 ただそれは、クララが、本当に主人公を愛していて、賢明で健やかな心身の、愛するに足る存在だから、それにふさわしく愛するのであり、愚かな女でも、男を利用する悪女でも、誰でも愛さなければならないという話ではない。

 そこは識別力が必要なのだと思う。その識別力は、同時に、一見従順そうに作られた自動人形と、本物の活きた知恵を持つ女性を見分けさせてくれる。

 識別力を持って、賢明に。

 それがこの物語において、破滅フラグを回避する方法であると思う。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。また次回の記事もよろしくお願いします。

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