ラブクラフト『狂気の山脈にて』より『猟犬』の感想
新潮文庫『狂気の山脈にて』に収録されている『猟犬』の感想をお送りします。
冒頭で主人公すなわち語り手が、すでに起こった出来事を語り始める場面から始まるのはラブクラフトの定番のパターンです。
それからいつもなら、『危険な場所に行き、探索し、事件が起こり対処してラスト』なのですが、今回は少しだけパターンをずらしてきています。
危険な場所に行き、無事戻ってきて、自宅で危険な事が起きます。別な場所に逃げるがそこでも事件が起こり、呪いを封じるために危険な場所に戻ってラスト、なのですね。
あらすじは以下の通りです。
堕落して怪しげな趣味にふけるようになった主人公とその友人は、様々な刺激にも退廃にも飽きてしまい、やがて古い墓を暴いて死体や埋葬品を盗み出すようになります。
こんなことをしていて悪い事が起こらないわけがないだろうと読者に思わせつつ、実際にその通りになるストーリーです。
こうしてあらすじだけを書くと、何故そんな事をしでかすのか疑問に思われるかも知れませんね。
しかし、実際に読んでみると、主人公の心理描写が実に巧みで、そんなふうに刺激を求める気持ちをエスカレートさせてゆくのはあり得ることだと思えてくるのです。
悪徳の挙げ句に破滅する物語は、ラブクラフトが影響を受けたエドガー・アラン・ポーの小説にもあります。
もちろんポーが書いたそのままではなく、ラブクラフト流の味付けがなされた上で短編にまとめてあるのです。
この中には、まさにクトゥルフ神話の有名な本が出てきます。その本に呪われるかのように破滅する主人公たちの物語で、後世の多くのクリエイターたちの想像力をかき立てた一篇でもあると思われますね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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