ヒュッゲの国デンマークの「幸せな暮らし」作りの仕組み
冬が長く厳しいデンマークでは、国を挙げて幸せな暮らし作りに取り組んでいます。
その結果、国連が発表する「世界幸福度ランキング」 では毎年上位にランクイン。2020年は2位でした。
これは156か国を対象とした調査で、一人当たり国内総生産(GDP)、社会保障制度などの社会的支援、健康寿命、人生の自由度、他者への寛容さ、国への信頼度の6つの指標を加味して順位付けしたものです。
世界幸福度ランキング 2020年版
1位 フィンランド(北欧)
2位 デンマーク(北欧)
3位 スイス
4位 アイスランド(北欧)
5位 ノルウェー(北欧)
6位 オランダ
7位 スウェーデン(北欧)
8位 ニュージーランド
9位 オーストリア
10位 ルクセンブルク
フィンランドが3年連続で首位。同じく北欧のデンマーク、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンも、毎年トップ10にランクインしています。寒い国の幸福度ランキングが高いのは、やはりみんなで助け合うという意識が強いからでしょうか?
気になる日本は、2018年54位、2019年58位、2020年は62位と徐々に順位が下がってきています。
でも、なんとなく日本の順位が低すぎるような感じがします。ちょっと調べてみたら、面白い記事が見つかりました。
6つの指標に関して、日本の評価はそれほど悪くはない。健康寿命は世界最高水準で、一人当たりGDPも上位だ。腐敗認知度と社会的支援も幸福度の順位よりは良い。それ以外の2つ、人生選択の自由度と寛容さが足を引っ張った、というのがもっぱらの評価だ(参照・日本の幸福度、過去最低の58位 「寛容さ」足引っ張る 朝日新聞デジタル 2019/03/20)。
だが、こうした見方には疑問が残る。
人生選択の自由度と寛容さは確かに点数が低めですが、それにしても、実際のランキングが低すぎる。何か他の原因もあるのではないかと、筆者は疑問を呈しています。
他国と比べ「どちらでもない」や「わからない」といったハッキリ白黒をつけない回答を好む人が多いのは、国際比較調査等で頻繁に見られる日本の特徴だ。こうした傾向を、ここでは「どちらでもないバイアス(偏り)」と呼ぶ。
私たち日本人は、議論するときも中間的な意見を言いがちです。
この記事では、そういった「どちらでもないバイアス」が、世界幸福度ランキングの順位に悪影響を与えている可能性を示唆しています。
私も、そのとおりだと思います。
しかし、「どちらでもないバイアス」がなかったとしても、上位に食い込むほどではなさそうです。
もちろん、日本にも良いところはたくさんありますが、北欧の幸福度の高さの理由を考え、日本流にアレンジして実践できたら、もっと幸せになれるかもしれません。
・・・
今回参考にした本は『幸せってなんだっけ? 世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年 ヘレン・ラッセル (著)、 鳴海 深雪(翻訳)』。
著者のヘレン・ラッセルさんは、デンマーク移住を機に英国版『マリ・クレール』編集部を退社。現在は、世界中の新聞や雑誌への寄稿、『テレグラフ』のコラムニスト、『ガーディアン』の特派員として活躍している方です。
実際に1年間住んでわかったデンマークが、外国人目線、ジャーナリスト目線でリアルに描かれています。
ヒュッゲ
デンマークの人たちが、特に大切にしているのは「ヒュッゲ」。
その「ヒュッゲ」を日本語で正確に表すのは難しいのですが、くつろげる空間、ほっとできる時間、楽しい時間そのものと、それを大切にする仕組みや気持ちの総称のようなイメージです。
ヒュッゲ
家の中を、そして社会を心地よい空間にする
家族や友人を大切にし、一緒に食事し語り合う
趣味を楽しむ
一人の時間も大切にする
ささやかな幸せを大切にする
言葉にしてみると、なんだかありきたりになってしまうのですが、デンマーク人は、食べるとか寝るとか、それをしなかったら死んじゃうぐらいのレベルでヒュッゲを大切にしているようです。
税金の使い道
デンマークは、税金が高いことでも有名です。
(幸せってなんだっけ? P327)
年間収入が44万9000デンマーククローネ(約730万円。これはデンマークでは珍しくない額)までの場合は37%の税金を払います。もし、これ以上の収入がある場合は最高税率が適応され、税率51.7%になります。ちなみに全員が自動的に8%の社会保障税がかかります。
加えて、消費税は一律25%です。
日本でも税金は高いと思うのに、デンマーク国民からは不満は出ないのでしょうか?
(幸せってなんだっけ? P327)
キム・スプリズボールは本物の税務官だ。
「デンマークでは皆、喜んで税金を払いますよ。世界一の福祉を享受できると知っていますからね。学校、大学、病院は無料ですし、有給休暇も多く、雇用主はデンマークの居住者に本当に役立つ年金制度にお金を払っていますから。人生のどこかの時点で大半のデンマーク人が公共サービスを必要とすることになりますし、家族が病気になる可能性もあります。国民はインフラを理解して、自分たちのお金の行き先がわかっているのです。」
つまり、税金が国民のために正しく使われているから、納税義務を果たすことが当然だと思っている、というわけです。
日本人の感覚からしたら、税金の使い方を信用しているなんて、ちょっと信じられませんが、デンマークの政治家を信頼できそうな統計が見つかりました。
世界各国の汚職を監視する国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」は毎年、各国の汚職度合いを指数化したランキングを発表している。
このランキングは、国際機関などが公表しているさまざまなデータをまとめ指数化したもの。0〜100の数値を算出、その指数が高いほど汚職が少なく政治の透明性が高いということになる。
2019年1月末に発表された最新版で、もっとも指数が高かったのは北欧デンマークだ。指数は88ポイント。世界でもっともクリーンな国ということになる。最新版で評価対象となったのは世界183カ国。
国会議員の報酬も少なく、地方議員に至ってはボランティアも多いという事実も、信頼される要因の一つになっているようです。
デンマーク大使館によると、「国政選挙は、これまで投票率が80%を下回ったことがありません。」とのこと。すごいです。
私たちも、暮らしを良くするために、もっと政治への関心を高めるべきですね。
教育
日本とはかなり違うポリシーを持って教育をしているようです。
(幸せってなんだっけ? P236)
デンマークの子どもたちは6歳からフォルゲスコーレと呼ばれる公立の学校に通い始め、20人余りの子どもたちとさまざまな授業に参加し、10年間を過ごす。学校生活の大半を同じクラスメイトと過ごすことはデンマーク式教育の支柱となる、平等と自主性を育むための教育を受けるにあたり、安全で信頼に足る環境を提供すると考えられている。
そうそう! 私は人見知りなので、毎年のクラス替えはかなり苦痛でした。
席に座った瞬間、隣の席の女の子が「え~!」なんて言ったりしたら、やっぱり嫌じゃないですか。
「ともだち100人できるかな」っていう、歌も嫌いでした。
・・・話が変な方向に行ってしまいましたが、「幸せってなんだっけ?」を読んでいると、デンマークでは人と人との関係が深いような気がしました。ひょっとすると、小さい頃の学校の仕組みにも影響を受けているのかもしれません。
もっと決定的に、日本と違う部分を見つけました。
(幸せってなんだっけ? P237)
デンマークの学校制度についてさらに深く知るためにオーフス大学のカーアン・ビャアウ・ピーダセンに話を聞いた。
「ここでの教育とは、子どもの社会的、認知的能力を伸ばし、自身で経験することによって学ぶ教育を指します。生徒たちには現体制に対し批判的であることを奨励します」
ヒトラーのデンマーク占領の影響により、子どもたちには、体制に疑問を抱くよう教えるようになったそうです。
日本で教師が「現体制に対し批判的であることを奨励」したら、その教師がどうなるのかは、なんとなく想像できます。
あなたは、日本とデンマークのどちらが、より良いと思いますか?
筆者のヘレン・ラッセルさんは、引っ越しを頼んだ運送業者の作業員のことを、こう話しています。
(幸せってなんだっけ? P52)
礼儀正しくはっきりものを言う、これまで出会った中でも飛びぬけて教育水準の高い引っ越し作業員たちだった。(中略)EUについてどう思うかなど質問は実に多岐に及んでいた。
長年の努力の積み重ねが、国民の政治への関心を高め、それによって、信頼に結びつく政治が行われるという好循環ができている感じです。
デザインと家具、装飾品
デンマークは、アルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナー、ボーエ・モーエンセンなど、多くの巨匠を輩出したデザイン大国です。
世界的に有名なメーカーも、たくさんあります。
ロイヤルコペンハーゲン 陶磁器
バング & オルフセン オーディオ
フリッツ・ハンセン 家具
ルイス・ポールセン 照明器具
Lego社 子供用玩具
そういえば、私もバング & オルフセンの製品を持っていました。つい衝動買いしてしまったイヤフォンです。
お洒落でしょ!
なぜ、デンマーク人がデザインにこだわるのかは、たぶんこの言葉に集約されていると思います。
(幸せってなんだっけ? P49)
デンマークのデザイン・ミュージアムの館長アネ=ルイーセ・ソマを見つけ出し、協力を求めた。(中略)
「冬は多くの時間を家の中で過ごすので、家に多くのお金をかけるのです。そうすれば長い時間、家の中にいても良い気分ですごせますから!」
モダンデザインの父とも呼ばれるウィリアム・モリス(1834-1896)も、「有用とも美しいとも思えないものを家のなかにおいてはいけない(1880年の講演 生活の美より)」と言っています。
でも、美しい家具を揃えるには、やはり余分にお金がかかります。経済的な余力がない場合は、いったいどうしたら良いのでしょうか?
(幸せってなんだっけ? P53)
デンマークで最多発行部数を誇るインテリア誌「Bo Bedre」のシャロデ・ラウンホルトは、シンプルさを大切にするよう提案した。
「デンマークらしさを求めてたくさんのアイテムを買い漁らなくても大丈夫。いくつかのキーアイテムから始めて、手持ちのアイテムを混ぜたり、合わせたりするのがコツです」
気に入ったもの、長年使えて、いずれは子どもたちに譲れるものを少しずつ増やしていこうという考え方です。
私も、予算の都合で、つい安いものに手を出しがちです。
長く使えるもの、ステキなものに、もっと目を向けるべきだと深く反省しました。
仕事
デンマークの労働時間は公的には週37時間ですが、現実はさらに3時間ほど短いそうです(金曜日は早く帰る!)。さらには有給休暇の日数も多いので、年間労働時間は日本よりも、かなり短くなっています。
デンマーク人は、できるだけ仕事をしたくないのかな? ダラダラ仕事をしているのかな?
ついそう思ってしまったので、労働生産性のデータを調べてみました。
OECD データに基づく2018 年の日本の時間当たり労働生産性(就業1 時間当たり付加価値)は、46.8 ドル(4,744 円/購買力平価(PPP)換算)。米国(74.7 ドル/7,571 円)の6 割強の水準に相当し、順位はOECD 加盟36 カ国中21 位だった。(中略)
主要先進7 カ国でみると、データが取得可能な1970 年以降、最下位の状況が続いている。
ちなみに、デンマークは5位(77.2ドル)。すごいです。かなり労働生産性が高い国だということがわかりました。
日本でも働き方改革が進んできてはいますが、労働時間が短くなって労働生産性が変わらなければ、給料が減ってしまうかもしれません。
それだけは、マジで困ります。
カギとなるのは労働生産性の向上です(日本政府もそう言っていますが・・・)。労働生産性さえ上がれば、企業も喜んで労働時間の短縮を進めることができるでしょう。
(幸せってなんだっけ? P87)
近年のユーロバロメーター調査によれば、デンマーク人はEU内でも最も幸せな労働者であり、(中略)加えてウォーリック大学の調査によれば、人はポジティブな状態であると12%も生産性が上がるということだ。
最も幸せな労働者! うらやましすぎます!
デンマーク大使館の次の記事を読むと、その理由がなんとなくわかります。
【デンマーク人は4年に1度転職する!そのメリットは?】
労働者も、解雇されたとしても、失業手当は最高2年間従前給与の90%が支払われますし、その間、健康保険料や年金保険料を負担する必要がありません(デンマークの医療や年金は保険ではなく税金でまかなわれています)ので、生活面での不安はそれほど大きくありません。また、教育機関はそもそも大学院まで全て無料であり、無料の職業訓練も提供されるため、新しい技能や知識を身につけることもできます。
転職が容易かつ頻繁であるデンマークの労働市場は、個人が新しいチャレンジをしたいと思えば比較的それが可能であり、社会全体としてみれば、新しい成長産業に古い産業から労働力の移動が円滑であるというメリットがあると考えられます。
税金は高いものの、社会保障が充実していて将来の不安が少ないことから、給料の高さで仕事を選ぶのではなく、何がしたいかで仕事を選ぶのが普通だというから驚きです。
好きな仕事ができるようになると、いいですよね!
家族や友人との時間、趣味のクラブ
デンマークの人たちは、家族や友人との時間をとても大切にしているので、常に家を綺麗にしています。
ホームパーティもよく開きますが、掃除しなきゃと、特別にバタバタすることはありません。
友人や近所の人など、招かれた人も食事作りから参加し、みんなで一緒に楽しみます。
(幸せってなんだっけ? P270)
有名シェフのトリーネ・ヘーネマンに(中略)聞いてみることにした。
「デンマーク人は食事を何にしようか、どう料理しようか、どう客を楽しませようかと一日中考えるのが好きなのよ。それから頑張って準備した後は何時間も座ってお喋りして楽しむの。(中略)」
それを聞き、先週の半ばに招待したお客さんたちが夕方6時にきて深夜1時までいたことを話した。
日本には、暗黙の了解でお開きのタイミングというものがありますが、デンマークにはそういう概念が存在しないそうです。
すごいです!
・・・
いつも孤独でいるのは、とてもつらいことです。
なるべく孤独にならないよう、デンマーク政府は趣味のクラブ活動のために施設を無償提供するなどの支援もしています。
(幸せってなんだっけ? P97)
デンマークには8万以上のクラブがあり、デンマーク人の90%以上がクラブのメンバーであり、平均すると1人当たり2.8のクラブに加入している。
人と人とのつながりは、とても大切ですね。
ローソクの話
照明は、部屋の雰囲気を変えてくれます。
デンマークの家にはランプがたくさんあり、さらには、ローソクも効果的に使って雰囲気を盛り上げています。
(幸せってなんだっけ? P315)
デンマーク人のキャンドルの使用量は世界一。1人当たり年間6kgのキャンドルを燃やしているというヨーロッパのキャンドル協会の情報を思い出した。お隣のスウェーデンでは1人当たり年間4kgで、イギリスともなると0.6kgまで少なくなる。
火事にならないよう十分に注意する必要はありますが、ローソクも試してみたい気持ちになりました。
そうそう、関係ないですけど・・・北海道には「ローソクもらい」という習わしがあるんですね。
ローソクもらい
7月7日もしくは月遅れの8月7日の七夕に北海道で行われる行事。
ローソクもらいの日には、子供たちが缶灯籠や提灯を手に三々五々集まり、7人前後の集団となって、囃し歌を歌って近隣各戸を訪ねあるく。
現代の子供たちは当然お菓子を貰うことを期待しているが、引越してきたばかりの人など、この行事を知らない人は囃し歌の通りにローソクをあげてしまうので子供ががっかりしてしまうことがある。
「ローソク出ーせー出ーせーよー 出ーさーないとー かっちゃくぞー おーまーけーにー噛み付くぞー 噛み付いたら放さんぞー」
この囃し歌、デンマークの人たちに教えてあげたい!
日本も最高です!
あとがき
デンマークも、もちろん良いところばかりではありません。
がんの罹患率が世界トップクラス(喫煙などの影響)、飲酒率がヨーロッパで最も高い、離婚率が高い、季節性情動障害(冬鬱)、ティーンエイジャーが気軽にドラッグに手を出してしまいがち、などの問題もあります。
しかし、社会制度から考え方・ヒュッゲなどの良いところは参考にし、幸せな暮らしをしたいものです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
・・・
片付けトントンのホームページでもブログを書いています。
商売っ気は少なめで、寝る前でもお読みいただけるように心がけています。めちゃくちゃ頑張っていますので、お時間のある時にお読みいただけたら嬉しいです。
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