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かすみを食べて生きる93:推しの話を聞きたい

脳梗塞 発症2か月と30日目:リハビリ病院3か月目⑨

・食事:脳梗塞(ワレンベルグ症候群)の後遺症のため、嚥下ができなくなり訓練中。食事形態はミキサー食からみじん食を経て先々週、3食常食(普通食)にたどり着いた。首を左に向けると飲める。
・状態:歩けるようになってきた。終日、館内フリー歩行自立。きょろきょろすると少しめまいがする。

向かいのベッドの門田さん(仮)が退院して、そこに新しい方が入った。
私は3通の手紙を書きあげるため、自主練を返上した。
退院まであと2日。

『かすみを食べて生きる 序文と目次』
<発症2か月と29日目:リハビリ病院3か月目⑧
 
発症2か月と31日目:リハビリ病院3か月目⑩>


朝ごはん#36

朝は不思議なおかずが多い


献立はこちら。

  • 麻婆キャベツ

  • 牛乳

  • 食パン

  • ジャム&マーガリン

  • バナナ

  • アイソカル100

麻婆キャベツ?とはいかに?

麻婆キャベツ

なるほど。麻婆春雨的なもので春雨ではなくキャベツがメイン。
しかもひき肉ではなくジャコ。
ジャコは口の中でバラバラとなってのどにひっかかりやすいので気をつける。
今日もバナナは大きい。
所要時間は53分。
悪くないペース。

門田さん(仮)の退院

入院が私とほぼ同時期で、長らく仲良くしてもらった同室の門田さん(仮)が今日退院する。
退院は朝9~10時に家族が迎えに来ることになっている。
その時間帯、私は言語療法のリハビリ。
今日はちょうど病室でやることになっていたので、門田さん(仮)を見送ることができた。
車いすに乗って看護師さんに連れられ、病室を出る門田さん(仮)に声をかける。
「門田さん(仮)!お元気で!」
門田さん(仮)は前を向いたまま手を振って病室を出て行った。
その姿がかっこよくて、最後まで門田さん(仮)らしかった。

お昼ごはん#49

珍しくフライ

フライ!おいしそう!
献立はこちら。

  • 鮭フライ、ブロッコリー添え

  • アスパラとトマトのサラダ

  • キウイ

  • 軟飯

鮭のフライ、先日のとんかつの時、衣が少し怖かったけど、油もあるからかしっかり噛めば思った程ざらざらせず、のどで引っかかることはなかった。
レモンをかけていただく鮭フライ、おいしい。
フライが戻ってきてくれてうれしい。
生野菜もしっかり噛めば大丈夫。

先日の栄養指導で、野菜は加熱したものなら1食に片手1杯程度は食べることを勧められたけど、生野菜だと小鉢にしっかり1杯なのね。
なかなかの量。
所要時間は48分。
がんばってる。

推しの話を聞きたい

門田さん(仮)に代わって、昼前には新しい方が向かいのベッドに入院してきた。
昼ごはんから帰ってきて、いつもの癖で門田さん(仮)がいたベッドを見るとカーテンが開いていて、中にいる方と目が合った。
ちょうどいいタイミングなので「向かいのベッドの吉山(仮)です」と挨拶をした。

そこから切れ味の鋭いマシンガントークが始まった。
久保さん(仮)は御年90才を超えておられるそうで、お話のメインはお嫁さんの愚痴。
初対面の私に語られる、会ったこともない人の悪口。
私も嫁という役割を持つ一人なので、聞いていて胃がきゅーっとなる。

いつまで続くのだろうかと思いつつ聞いていたら、少しめまいがしてきた。
久保さん(仮)はベッドに座って、私は立った状態で30分が経過していた。
今朝までいた門田さん(仮)は話を始めるとすぐに「座ったら?」と言って、椅子をすすめてくれていたことに気が付いた。
私、門田さん(仮)のいないこの病室で生きていける気がしない。

私も悪かった。
久保さん(仮)の話は、高齢の方によくあるループが全くない。
次から次にあふれ出てくるお嫁さんに対するフレッシュな悪口。
どこまで続くのか少し気になってしまった。
結果、いつまでも続く。
すごい。こんなに一つの話題について違うことを話し続けられるなんて、もはや情熱すら感じる。
残念なのはこれが純度100%の悪口であるということ。
この熱量で大好きな推しの話でもしてもらえたら、私も楽しく聞けたのに。

横目でベッドサイドに置かれている、久保さん(仮)のリハビリ予定表を確認する。
あと20分でリハビリが始まる。
あとちょっと耐えれば。
すでにクラクラしていて、このマシンガントークの切り方がわからない。
頼む…リハビリのセラピストさん早く来て!

こうして20分ちょっと耐えたところでセラピストさんが来た。
「リハビリですね、それでは私はこれで…」
とふらふらとベッドに戻りカーテンを閉めた。

このパターン、入院中と発症前にも何度か経験している。
たまたま隣り合わせた年配の方と話をしたら、相手が一方的に知らない人の悪口をまくしたてて止まらなくなる。
そして人の悪口をマシンガントークで語る方は、みなさんとてもお元気。
きっと悪口は長生きの秘訣の一つ。

私は人の話、とりわけ推しの話は大好物だけど、悪口を聞くのはただただ消耗してしまう。
これに巻き込まれてはならない。
初手で受けたダメージは大きかったけど、必要な距離感はわかった。

手紙、手紙、手紙

向かいのベッドの久保さん(仮)に1時間程度つかまってしまっていたけれど、今日の私は忙しい。
明日がリハビリ最終日となるので、3名のリハビリ担当の皆さんにお礼の手紙を書いている。
お一人に便せん3枚程度。
今日は自主練を返上して筆を走らせる。
感謝と思い出エピソード、仕事への賛辞、感謝、感謝、感謝。

感謝の手紙は、もはやラブレター

理学療法士田中さん(仮)にはいつも元気をもらい、作業療法士花井さん(仮)には退院後の生活を一緒に考えてもらった。
そして言語聴覚士下浦さん(仮)。
食べることができるようになるかわからない状態だった私を、いつも落ち着いた物腰で、でも力強くあと押しし続けてくれた。
食べることがイメージできなかった私は、下浦さん(仮)のイメージ(リハビリ計画)をただ信じてのっかった。
おかげでなんとか常食を食べることができるところまで回復した。

ありがとうございました。
そして皆さんのこれからのご活躍とご健康とご多幸とを陰ながら祈りまくります。

夕ごはん#29

ごぼうが山盛り

今日は自主練をしていないのであまりおなかがすいていないけれど、夕食も頑張って食べる。
献立はこちら。

  • 治部煮

  • 中華風和え物

  • わかめスープ

  • 軟飯

治部煮、なかなかの量のごぼう。
比較的柔らかく煮てあるけど、繊維が強いのでしつこく噛む必要がある。
こんにゃくは口の中でまとまらないので一口量を少なめにする。
サラダの春雨は朝にもお会いしたかな。
短く切ってあるので助かる。
所要時間は1時間。
ごぼう、がんばった。


ーー振り返って

門田さん(仮)が去って、新しい方が入ってきました。
門田さん(仮)が恋しくてしかたありませんでした。

悪口をマシンガントークされる方、皆さんしっかりされていてお元気。
ため込まないことは大事、ということは学びました。
あと恐らく「話しをする」ことは、たとえ一方的でも頭をとても使っているのだろうなと感じました。

セラピストさん達への手紙は書いていくと、これはラブレターかファンレターかなという熱量になりました。
最後なので心置きなく伝えきることにしました。
ハードなお仕事なので、とにかく健康でいてほしいと思っていました。

明日はいよいよ最後のリハビリです。


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