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【詩】冬風

畦道に、冷たい風が吹きすさぶ
手はかじかみ、眼差しは凍えている
畝の起伏は、寂しさを隠そうともしない
水を抜いた田に、白く渇いた土を晒し
いちめん、地に張りついた枯れ色が
冬の日差しを浴びている

よく見れば、露わになった泥にまみれて
くすんだ緑の草の葉が、枯れもせず
生き長らえ、寒さをこらえている

不思議だ、今日の圃場は
陽に照らされて、麦色にかがやく
陽に隠れれば、苔色に染まる
これほど、鮮やかなのは何故だろう

里に下りた山鳥が、金切り声で叫ぶ
追い縋る颪が、唸りとともに駆けてゆく
みな、口をつぐんで、沈黙に耐え
肩をすくめて、やり過ごすだけ

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。