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【詩】逆立ち

透き通る 空に綴じた網の目の
風を孕んだ 真ん中で
斑らの蜘蛛が 逆立ちしている
身じろぎもせず 待っているのは
通りがかりの きまぐれな風

絹の投網に 息をひそめ
逆さの宇宙に 身を投げて
よろこぶもなく かなしむもなく
反転する 空の深みに
何を 眺めているのだろうか

喰うものも 喰われるものも
見えない糸に あやつられ
いずれ 力尽きて 絡めとられ
あきらめて 干からびてゆく

蜘蛛は 危うげな逆さまで
何を想って 見上げているのか
繰り返される 雲の影絵を

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。