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①生きる意味の教科書:不安定な人生から卒業するための3つの手順と58の科学的なメリット
はじめに
こんにちは、ググれ香澄です!
この度は、本書を手に取っていただき誠にありがとうございます。
さっそく結論ですが、本書は次のような三部構成になっています。
▼本書の内容【三部構成】
①生きる意味・人生の目的を明らかにするメリットについて
②人生の意義を明確化する「科学的な方法」について
③「人生に意味はあるのか?」についての答え
いま、あなたは苦しい状況にあるかもしれません。
客観的な答えのない「人生の意義」を模索し続けるのは、かなりの心的な労力をともないます。頭を抱えて、もんもんと悩む場面も少なくないはずです。
ときに、安易な答えに飛びつきたくなることもあったかもしれません。「幸せになることこそ、人生の意味なんだ!」といったように。
しかし、ご注意ください。
じつは、二〇一二年の研究データによれば、人生の目的に「快楽(楽しさ、幸せ)」を据える人ほど、かえって無意味さに囚われやすくなってしまうのだそう。
Roy F. Baumeister, Kathleen D. Vohs, et al. Some Key Differences between a Happy Life and a Meaningful Life. October 2012 The Journal of Positive Psychology 8(6)
つまり、楽しいことだけを追求する毎日を送っていると、かえって「自分、なんのために生きてるんだろう……」となってしまいがちなのです。なので、安易に「人生の目的=幸せのため」と結論づけるのは危険な選択。
科学的に重要なのは、あなた自身が「何をやっているときに、こころが満たされるのか?」を明確に把握しておくこと。
あなたの根っこにある価値観が何なのか。なんのために生きて、行動し、時間を費やしていくのか。その根本的な行動原理を明らかにすることが、ひいては、あなた自身の幸福につながっていきます。
たとえるなら、価値観をハッキリさせることは、目的地を明確にするようなもの。「どこに向かって進めばいいか?」を明らかにしておけば、人生の迷子になることを避けられます。
それどころか、旅の進路を明確化しておくことによって、より幸福度の高い幸せな人生を歩めるようになるでしょう。
人生の目的とは、幸せに生きるための「行動指針」なのです。
その証拠に、一九八七年と二〇〇〇年の研究によれば、人生の目的をハッキリできている人ほど、主観的な幸福度が高くなる傾向にあるのだそう。
Meaning and purpose in life and well-being: a life-span perspective. G T Reker et al. J Gerontol. 1987 Jan.
Purpose in life: What is its relationship to happiness, depression, and grieving? Rostyslaw W Robak, Paul W Griffin North American Journal of Psychology, 2000.
つまり、あなたなりの生きる意味を見つけることが、あなた自身の幸せにつながるということです。
そして、ハッキリと言えることが一つだけあります。
それは、生きる意味を模索できているあなたは、漠然と毎日を生きる人たちより一歩、二歩も先を進んでいるということ。
その他大勢の人たちは、そもそも「生きる意味」について深く考えることをしません。それほど、漠然と毎日を生きています。
みんな、どこかのタイミングで「そんなこと考えても意味ない」「明確な答えなんてない」などと決めつけ、諦めてしまっています。
多くの人は、人生のどこかで「乾いた大人」になることを受け入れてしまうのですね。悲しいことですが。
じっさいに、二〇〇二年のデータによれば、歳をとるにつれて、目的意識の喪失が顕著になる傾向が確認されています。
Martin Pinquart. (2002) Creating and maintaining purpose in life in old age: A meta-analysis.
つまり、多くの人が、晩年になるにつれて「生きる目的」を失くしてしまい、みずからの「人生の意味」について考えることを止めてしまうのです。
ここで一度、周りを見回してみてください。
あなたの周囲に、人生の意義について真剣に考えている人はいるでしょうか?
みずからの生きる意味について、真剣に向き合っている人がどれだけいるでしょうか?
もしかしたら、明確な目的意識を持っている人はマイノリティかもしれません。少数派かもしれません。
しかし、今のあなたのように「生きる目的を問うこと」には、さまざまな科学的メリットがあります。
たとえば、二〇二〇年の研究データによれば、人生の意味を探し求められる人のほうが、そうでない人よりも高い幸福度を持つ傾向にありました。
Li, J.-B., Dou, K., & Liang, Y. (2020). The relationship between presence of meaning, search for meaning, and subjective well-being: A three-level meta-analysis based on the meaning in life questionnaire. Journal of Happiness Studies: An Interdisciplinary Forum on Subjective Well-Being. Advance online publication.
つまり、あなただけの生きる意味を追い求めることは、幸福度の向上とダイレクトに関わっているのです。
これまで、もんもんと悩んできてツラかったですよね。苦しかったですよね。
周りの人に答えを求めることもできず、孤独な思いをしてきたかもしれません。寂しい思いをしてきたかもしれません。
でも、もう大丈夫。
本書では、科学的に実証されたデータや文献をもとに、あなたが抱える悩みや苦しみを解消していきます。
わたしと一緒に、生きる意味に悩む毎日から卒業していきましょう。科学的な方法をもって、日々の苦しみから抜け出していきましょう。
さぁ、人生を変える準備はよろしいですか?
それでは、始めていきます。
第一章
【科学が証明】目的を明確化する「五八のメリット」とは?
さて、まずは「生きる意味を明確にするメリット」について解説していきましょう。
さきに結論ですが、複数の研究データや文献によれば、人生の目的を明確化できている人ほど、次のメリットを受けやすくなるのだそう。
まずは、キャリア面・仕事面のメリットについてです。
▼キャリア面での【五つのメリット】
・出世しやすくなる
・年収が上がりやすくなる
・学業(学習)成績がアップ
・業務パフォーマンスがアップ
・バーンアウト(燃え尽き症候群)に陥りにくくなる……など
次に、身体面・フィジカル面のメリットを概観していきましょう。
▼身体面での【二四のメリット】
・血糖値が改善
・神経痛が改善
・睡眠の質が改善
・免疫力がアップ
・痛み刺激に強くなる
・肥満になりにくくなる
・長寿になりやすくなる
・糖尿病のリスクが改善
・脳卒中のリスクが改善
・体内の炎症レベルが改善
・コレステロール値が改善
・心臓発作のリスクが改善
・ダイエットに成功しやすくなる
・全般的な死亡率が “三〇%” も改善
・慢性的な病気から回復しやすくなる
・「むずむず脚症候群」の症状が改善
・全体的な「入院日数」が減少(改善)
・全体的な「通院回数」が減少(改善)
・HDL(善玉コレステロール)が増える
・アルツハイマー病(認知症)のリスクが改善
・ナチュラルキラー細胞が活性化しやすくなる
・睡眠時無呼吸症候群(SAS)のリスクが改善
・炎症を引き起こす『インターロイキン6』の値が改善
・体内のコルチゾール(ストレスホルモンの一種)の値が改善……など
さいごは、精神面・メンタル面のメリットについて。
▼心理面での【二九のメリット】
・孤独感が改善
・共感力が改善
・自殺率が改善
・抑うつ気分が改善
・マイナス思考が改善
・社交スキルがアップ
・生活満足度がアップ
・人生の幸福度がアップ
・自尊心(自信)が改善
・モチベーションが改善
・性生活の満足度が改善
・ストレス抵抗力がアップ
・集中力や注意力がアップ
・禁煙に成功しやすくなる
・逆境を乗り越えやすくなる
・不安や心配を感じにくくなる
・グリット(粘り強さ)がアップ
・良い人間関係を築きやすくなる
・衝動的な言動を取りにくくなる
・否定的な考えに囚われにくくなる
・憂鬱(ゆううつ)を感じにくくなる
・日常的にリラックスできるようになる
・「他人との繋がり」を感じやすくなる
・アルコール依存から抜け出しやすくなる
・クリエイティビティ(創造性)がアップ
・自己コントロール力(自制心)がアップ
・PTSD(精神的なトラウマ)のリスクが改善
・うつ病や不安障害に罹(かか)りにくくなる
・健康的なライフ スタイルを実現しやすくなる……など
ヴィクター・J・ストレッチャー(2016)『目的の力ー幸せに死ぬための「生き甲斐」の科学』(松本剛史 訳)ハーパーコリンズ
ケリー・マクゴニガル(2016)『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(神崎朗子 訳)大和書房
鈴木祐(2018)最高の体調 ACTIVE HEALTH クロスメディア・パブリッシング
鈴木祐(2021)『不老長寿メソッド 死ぬまで若いは武器になる』かんき出版
以上を概観して分かるのは、シンプルな答えです。
それは、生きる意味についての理解を深めることは、わたしたちが考える以上のメリットがあるということ。
まとめると、ぜんぶで【五八のメリット】が確認されています。もちろん、すべて科学的な研究データに裏打ちされた情報ばかり。なので、信頼性のほどは折り紙つきですよ。
このさきでは、それぞれのメリットについて、各種の研究データとともに見ていきましょう。
目的の明確化で『寿命』が伸びる⁉︎
たとえば、二〇一一年の研究によると、人生の目的を持っている人ほど、寿命に関わる「テロメアの短縮」が改善される傾向にありました。
Tonya L Jacobs, Elissa S Epel, et al. (2011) Intensive meditation training, immune cell telomerase activity, and psychological mediators. Psychoneuroendocrinology.; 36(5):664-81.
この『テロメア』とは、DNAの端っこに付いている「細胞のライフゲージ」のようなもの。
なので、テロメアの短縮が改善されるというのは、より長生きできる可能性が高まることを意味します。
なんと、「人生の目的」や「大切な価値観」を持つだけで、あなたの寿命が伸びやすくなるのです。おろどきですよね。
その証拠に、二〇一四年の研究でも、生きる意味を明確化できている人ほど、そうでない人と比べて、相対的に長生きできる傾向にあったと報告。
Purpose in life as a predictor of mortality across adulthood. Patrick L Hill, Nicholas A Turiano. Psychological science 25 (7), 1482-1486, 2014.
つまり、人生の意義をハッキリと自覚することは、あなたの寿命を伸ばすことに役立つのです。
理由の一つとしては、生きる目的を明確化できている人のほうが、より健康的なライフスタイルを心がけるからでしょう。
たとえば、わたしは自分の「人生の意味」を自覚しているので、危ない遊びや不健康な飲み会などには参加しません。
理由としては、わたしの身に危険が及ぶようなことがあれば、次の「四つの価値観」に沿った生き方ができなくなるから。
▼筆者の大切な価値観【四つ】
・学び
・平穏
・自由
・好奇心
だれしも、生きている間は「できるだけ幸せに過ごしたい」と思うもの。
わたしの場合、以上の「四つの価値観」に沿って生きることが、幸せな人生に直結しているわけですね。だからこそ、価値観に反した行動は取りたくない。
どれだけの大金を手に入れようとも、わたし自身の目的に沿った生き方ができなければ……充実感は得られない。わたしは、そう考えています。
参考までに、人生の目的が定まっていない「ダメな例」を見てみましょう。
たとえば、宝くじやギャンブルで一攫千金を実現したがために、人生すらブチ壊しにしてしまう人がいますよね。
お金で人生を台無しにしてしまう人に共通するのは、いざ大金を手にしても「何に使ったらいいかが分からない」ということ。
だからこそ、次のような お金の使い方をしてしまうのでしょう。おそらく、ですが。
・悪い友だちにタカられて大金を貸してしまう
・キャバクラで数百万もするようなシャンパンを空ける…など
ちなみに、一九七八年に発表された古典的な論文では、宝くじの当選者の幸福度は「一年後にはもとのレベルに戻る」と報告されています。
Lottery winners and accident victims: is happiness relative? P Brickman et al. J Pers Soc Psychol. 1978 Aug.
つまり、身の丈に合わないお金を手に入れたところで、きちんとした使い方が分かっていないと幸せにはなれないのです。
反対に、人生の目的が明確化できている人ほど、自分の望み・願いにマッチした「適切なお金の使い方」をする傾向に。
そう断言できる根拠は、わたし自身の経験にあります。
たとえば、わたしは次の四つの価値観に合わない「お金の使い方」をしません。
▼わたしの大切な価値観【四つ】
・学び
・平穏
・自由
・好奇心
理由としては、じぶんの価値観にマッチしない使い方をしても、絶対に「心が満たされることはない」と理解しているから。かりに、表面的には楽しくいられたとしても、心の奥底では「なんか違うなぁ……」と感じてしまうのです。
適切なお金の使い方を覚えていれば、長生きするために『健康』に投資できます。お金で時間を買って、効果的なエクササイズに投資することもできるはずです。『運動』への投資ですね。
テロメアの短縮が改善される——長寿傾向が促進されるのは、そういった「日々の積み重ね」の結果なのでしょう。
このように、生きる目的を明確化することには、あなたの寿命を延ばす効果が期待できます。
目的の明確化で『人生の幸福度』が大幅にアップ!
逆に、わたしが大切にしている「好奇心」や「学び」などの価値観を満たす『読書』には、積極的にお金を使います。
おそらく、これまでに二〇〇万くらいはお金を費やしてきたかもしれません。
しかし、好きなことに好きなだけお金を使えて、わたしはすこぶる幸せです。読書は最高の投資ですから。
その証拠に、二〇〇六年の研究によると、価値観をハッキリと把握できている人ほど、幸福度が高まりやすいことが証明済みです。
Holahan, C. K., & Suzuki, R. (2006). Motivational Factors in Health Promoting Behavior in Later Aging. Activities, Adaptation & Aging, 30(1), 47–60.
また、二〇一二年の研究データによれば、生きる目的を明確化できている人ほど、衝動的な言動を取りにくくなることも分かっています
A. Burson,J. Crocker, and D. Mischkowski, ”Two Types of Value-Affirmation: Implications for Self-Control Following Social Exclusion,” Social Psychological and Personality Science 3, no.4(2012): 510-16
『衝動的な言動』とは、たとえば「仕事のイライラ」を家族や友だちにぶつけてしまったり、好きでもない「不特定多数の異性」と関係を持ったり……などといったイメージ。
もちろん、文字どおり「衝動買い」も同様です。
つまり、明確に「人生の目的」を持てている人のほうが、目のまえにある問題や困難に “冷静に” 対処できるわけですね。
ここで1つ、振り返ってみてほしい。
さいきん、職場のストレスでドカ食いしてしまったり、ついつい家族に悪態(あくたい)をついてしまったことはありませんでしたか?
「もっと冷静に対応できたはずなのに……」と、ご自分の言動を後悔したことはなかったでしょうか?
だいじょうぶ。
あなただけの人生の目的を見つけられたら、これまでのような「衝動的な言動」を取ることも減るはずです。
もちろん、お金の悩みや仕事の悩みも減って、ストレスに負けない「力強い生き方」も実現できることでしょう。
その証拠に、二〇一三年の研究によれば、生きる意味を自覚できている人のほうが、過去のトラウマから立ち直りやすく、ネガティブな感情に囚われにくいことも分かっています。
Purpose in life predicts better emotional recovery from negative stimuli. Stacey M Schaefer et al. PLoS One. 2013.
つまり、人生の意義を見出せている人ほど、幸せでストレスに負けない「芯のある生き方」ができるようになるのです。
目的の明確化で「あらゆる死亡リスク」を改善!
目的意識の強さは、あなたの死亡率をグッと改善してくれる可能性があります。
というのも、一〜七点で測られる「目的の強さテスト」のスコアが高い人ほど、長期的な死亡率が改善される傾向にあるのです。
具体的には、二〇一四年の研究データによると、最大七点で測られる「生きる意味の強さ」のスコアが一ポイント上がるごとに、全般的な死亡率が “十二%” も減少しました。
Patrick L. Hill and Nicholas A. Turiano (2014) Purpose in life as a predictor of mortality across adulthood Psychol Sci. 2014 Jul;25(7):1482-6.
ひとことで言うと、「自分は〇〇のために生きるんだ!」という思いが強いほど、長期的な死亡率がグッと改善する傾向にあったのですね。
理由としては、目的や価値観に沿った生き方をする人のほうが、危ないライフ スタイルとは縁を切るからかもしれません。
たとえば、「自分は『安全』のために生きるぞ!」と決心している人が、危険な土木系の仕事に就く姿なんて想像できませんよね。
あるいは、わたしのように『平穏』に生きると心に決めている人間が、地雷処理を生業(なりわい)にするなんて、あきらかにミスマッチでしょう。
以上のように、「価値観 × 日々の言動」は密接に結びついています。
おそらく、人生の目的を明確にできている人ほど、しぜんと「死亡率を改善させるような行動」を取るのでしょう。健康に配慮したライフスタイルを心がけるのかもしれません。
また、二〇一三年の別の研究によれば、一〜六点までで測られる「目的意識の強さ」のスコアが一ポイント上がるごとに、心臓発作のリスクが “二七%” も改善。
Eric S Kim 1, Jennifer K Sun, Nansook Park, Laura D Kubzansky, Christopher Peterson (2013) Purpose in life and reduced risk of myocardial infarction among older U.S. adults with coronary heart disease: a two-year follow-up. J Behav Med. Apr; 36(2): 124-33.
くわえて、二〇一四年の研究データを参照すると、一〜六点までで測られるスコアが一ポイント上がるごとに、入院日数が “十七%” も減少する傾向にあったのだそう。
Kim, E. S., Strecher, V. J., & Ryff, C. D. (2014). Purpose in life and use of preventive health care services. PNAS Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 111(46), 16331–16336.
まだあります。続けていきましょう。
二〇一三年の研究を見ると、一〜六点までで測られるスコアが一ポイント上がるごとに、脳卒中のリスクが “二二%” も改善されると証明されました。
Eric S Kim, Jennifer K Sun, Nansook Park, Christopher Peterson. (2013) Purpose in life and reduced incidence of stroke in older adults: 'The Health and Retirement Study. J Psychosom Res. May;74(5):427-32.
「なんのために生きるか?」を自覚することには、以上のような「全体的な死亡率を下げる効果」が期待されます。
その証拠に、二〇一九年の研究データでも、人生の目的をハッキリ持てている人ほど、早死にリスクが改善される傾向にありました。
Aliya Alimujiang, et al.(2019)Association Between Life Purpose and Mortality Among US Adults Older Than 50 Years.
さいごに紹介するのは、メタ分析による研究結果です。
『メタ分析』とは、もっとも信頼性が高いと言われる研究手法のひとつ。なので、次に紹介する内容は「かなり信頼できる情報」だと思っていただいて構いません。
二〇一六年のメタ分析が示すのは、人生の意義を感じながら生きている人のほうが、すべての死因による死亡リスクが十七%も改善される傾向にあること。
Randy Cohen, Chirag Bavishi, Alan Rozanski, (2016) Purpose in Life and Its Relationship to All-Cause Mortality and Cardiovascular Events: A Meta-Analysis.
「すべての死因」とは、糖尿病、心疾患、脳卒中、ガン……などといった、すべての病気のこと。
つまり、生きる目的を感じられている人のほうが、あらゆる病気に対する耐性が高いということです。おどろきの研究結果ですよね。
目的の明確化で「睡眠の質」まで向上⁉︎
生きる目的を明確化することは、あなたの睡眠の質を向上させる効果もあります。
「え? 人生の意味って、眠りの質にも関係するの?」と思いましたか? 意外な研究結果ですよね。
じつは、二〇一七年の研究によれば、人生の意味を感じている人のほうが、良質な睡眠を取れる傾向にあったのだそう。
Arlener D. Turneretal. (2017) Is purpose in life associated with less sleep disturbance in older adults? Sleep Science and Practice; 1:14
具体的には、寝ているときに無呼吸になってしまう『睡眠時無呼吸シンドローム(SAS)』のリスクが改善されたと報告。
それだけでなく、足に「妙な不快感」を覚える『むずむず脚 症候群』の症状まで改善され流傾向にあったのだそう。
さらに、二〇一五年のデータが証明するのは、六点満点のスケールで「生きる意味の強さ」のスコアが一ポイント上がるごとに、睡眠障害にかかるリスクが “十六%” も改善される傾向です。
Eric S Kim, Shelley D Hershner, Victor J Strecher. (2015) Purpose in life and incidence of sleep disturbances.
なんと、生きる目的が定まっている人のほうが、全体的に「良い睡眠」を取れる傾向にあったのですね。
理由は定かではありませんが……人生の目的が明確にできていると、精神的に「安心」できるからかもしれません。
自分がどこに向かっているか分からない……といったような宙ぶらりんの状態でいると、ふとしたときに不安や心配に襲われることがありますよね。
とくに、就寝前などは、将来への不安に囚われやすくなる傾向にあります。「このままでいいのかな……」「いまのままで大丈夫かな……」といったように。
心配ごとが頭をもたげると、夜眠れなくなることもしばしばですよね。もちろん、わたしにも経験があります。
そんな状況を打破する手段のひとつとして、人生の目的を定めることが役立つのかもしれません。
じっさい、わたしは、以上に紹介した研究データをリアルに実感しています。
学生のころから不眠に悩まされていた私ですが、二〇代前半に「自分なりの人生の意味」を見つけることができました。
その影響もあってか、現在では毎日しっかりと八時間睡眠をキープできています。不眠に悩まされることも無くなりました。
なので、以上に紹介した「生きる目的 × 睡眠の質の改善」という研究結果は、わたし自身の経験からも保証できます。
まとめると、あなた自身の「人生の意味」を自覚することは、質の良い睡眠を取ることに欠かせない要素のひとつ。
少なくとも、科学的なデータはそう結論づけていますよ。
目的の明確化で「人間関係の質&満足度」まで改善⁉︎
もちろん、人生の目的を持つメリットは、フィジカル的なものに限りません。
たとえば、二〇一二年のデータによれば、生きる意味を明確にできている人のほうが、良い対人関係を築きやすく、人間関係の満足度も高まりやすい傾向にありました。
Inner strength in relation to functional status, disease, living arrangements, and social relationships among people aged 85 years and older. Berit Lundman et al. Geriatr Nurs. May-Jun 2012.
それから、女性を対象にした二〇一一年の研究では、目的意識を強く持っている人ほど、性的な満足度が高くなる傾向にあったのだそう。
B. A. Prairie, M. F. Scheier, K. A. Matthews, C. C. H. Chang, and R. Hess, "A Higher Sense of Purpose in Life Is Associated with Sexual Enjoyment in Midlife Women," Menopause 18, no.8(2011): 839-44.
まとめると、生きる意味を明確にできている人のほうが、満足のいく人間関係を築ける傾向にあるのですね。
と、ここで一つ疑問に思いませんか?
どうして「人生の目的」を持つだけで、人間関係が良くなりやすくなるのか……と。人生の目的と対人関係という二つの要素は、さほど関係がないようにも思えますよね。
その理由は、価値観を明確に設定できている人ほど、ムダな関係を断ち切れるからかもしれません。
あるいは、目的に合わない人との付き合いを控えて、じぶんにとって意味のある関係 “だけ” を残すからかもしれませんね。
ひとことで言うと、価値観がハッキリしている人は、対人 関係において「損切り上手」。
「大切なものは何か?」が明確に自覚できているからこそ、心を鬼にして「不要なものを切り捨てられる」のですね。
ひとつ例を挙げると、わたしは自分の人生の目的に沿わない関係性は、周りからギョッとされるほどスパッと断ち切ります。
理由としては、意味のない関係にコストを費やすほど、わたしの人生には時間が余っていないから。時は金なりですね。
二つ上の先輩たちは、そんな私のことを「サイコパスじゃないんだから(笑)」とディスりました。けっして、悪気はないのですが。
ちなみに、「良心がない人」として知られるサイコパスもまた、目的に合わない関係はズバッと切って捨てるのだとか。
彼らサイコパスは「極端に合理的」なので、企業のCEO(社長)や外科医、それから弁護士などの職業に多いのだそう。
以上の職種はいずれも、時に「非情になること」が要求される仕事ばかりですよね。
そして、人生の目的を明確化できている人もまた、サイコパスと同様に「価値感に合わない関係」をスパッと切り捨てる。
両者はどちらも「目的のために合理的に行動する」という点で共通しています。
だからこそ、生きる意味をハッキリと自覚することにより、結果的に「人間関係の満足度が高まる」のかもしれませんね。
目的の明確化で「過去のトラウマ」すら克服!
それから、生きる目的を持つメリットのなかには、挫折から立ち上がる「精神的な打たれ強さ」もあります。
たとえば、二〇一三年や二〇一四年の研究によると、価値観を明確にできている人ほど、PTSDを乗り越えて『心的外傷後成長』を経験しやすい傾向にありました。
A. Feder, A. Ahmad, E. J. Lee, J. E. Morgan, R. Singh, B. W. Smith, S. M. Southwick, and D. S. Charney, "Coping and PTSD Symptoms in Pakistani Earthquake Survivors: Purpose in Life, Religious Coping and Social Support," Journal of Affective Disorders 147 (2013): 156-63.
Y. Jin, J. Xu, H. Liu, and D. Liu, "Post traumatic Stress Disorder and Posttraumatic Growth Among Adult Survivors of Wenchuan Earthquake after 1 Year: Prevalence and Correlates, "Archives of Psychiatric Nursing 28 (2014): 67-73.
『心的外傷後成長』とは、かんたんに言うと「困難を乗り切ったあとの心の成長」のこと。「苦しいことを経験した人ほど、他人に優しくなれる」という言葉は、まさしく心的外傷後成長のことを指しています。
つまり、生きる目的を客観的に把握できている人のほうが、後の人生で逆境を乗り越えやすくなるのです。精神的に強くなれるのですね。
ちなみに、いくつかの研究をまとめると、心的外傷後成長を成し遂げるメリットは次のとおりです。
▼身体的なメリット
・免疫力がアップ
・早死にリスクが改善
・身体的な疲労感が改善
・全体的な健康レベルが改善……など
▼心理的なメリット
・共感スキルがアップ
・人生の幸福度がアップ
・モチベーションが改善
・自尊心(自信)が改善
・ストレス抵抗力がアップ
・人間 関係の満足度が改善
・逆境を乗り越えやすくなる
・「感謝の気持ち」が増える
・「他人への思いやり」が増える
・自制心(自己コントロール力)が改善
・レジリエンス(メンタルの打たれ強さ)が改善……など
▼キャリア面のメリット
・問題解決スキルがアップ
・学習(仕事)成績がアップ
・業務パフォーマンスが改善……など
ケリー・マクゴニガル(2016)『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』(神崎朗子 訳)大和書房
リチャード・ワイズマン(2012)『その科学が成功を決める』)(木村博江 訳)文春文庫
苦しみを乗り切った人のほうが、より大きな成長を遂げられる。科学的な研究データは、その事実を裏づけています。
もちろん、以上のようなメリットがあるからといって、積極的に「苦労は買ってでもしろ!」と言うつもりはありません。
たとえば、二〇一八年の研究データによると、ルワンダ大虐殺を経験した当事者の “六一%” は、その後PTSDに罹患してしまったのだそう。
Caroline Williamson Sinalo(2018)Rwanda After Genocide : Gender, Identity and Post Traumatic Growth. Cambridge University Press
つまり、目の前で家族を惨殺(ざんさつ)された人の多くは、癒えることのないトラウマを抱えてしまったのです。
しかし、希望を捨ててはいけません。
私が言いたいのは、もし あなたが立ち直れないほどの苦痛を経験したとしても、どうか希望を捨てないで欲しい……ということ。
だいじょうぶ。
絶望したくなるほどの挫折を経験したとしても、ふたたび立ち上がることは可能です。苦しみは、きっと乗り越えられます。
目的の明確化で『心的外傷後成長』を成し遂げよう!
というのも、生きる意味を明確化できていれば、苦しいトラウマを乗り越えられる可能性があるからです。
その証拠に、二〇一三年の研究によると、人生の目的をハッキリできている人ほど、PTSD(トラウマ)を回避できる傾向にあっただそう。
A. Feder, A. Ahmad, E. J. Lee, J. E. Morgan, R. Singh, B. W. Smith, S. M. Southwick, and D. S. Charney, "Coping and PTSD Symptoms in Pakistani Earthquake Survivors: Purpose in Life, Religious Coping and Social Support," Journal of Affective Disorders 147 (2013): 156-63.
具体的にいうと、二〇〇五年に起きたパキスタン地震にて、トラウマを回避できた “三五%” の人々は、生きる目的を強く持っていたのだとか。
つまり、生きる意味を持つこと自体が、PTSDへの罹患を防いでくれたということです。
続く二〇一四年に行われた研究では、生きる目的を持っている被災者の “五〇%以上” が、心的外傷後成長を経験していると報告されました。
Y. Jin, J. Xu, H. Liu, and D. Liu, "Post traumatic Stress Disorder and Posttraumatic Growth Among Adult Survivors of Wenchuan Earthquake after 1 Year: Prevalence and Correlates," Archives of Psychiatric Nursing 28 (2014): 67-73.
しかも、それだけではありません。
おどろくことに、自然災害の被害を強く受けた人ほど、より大きな心的外傷後成長を達成できたのだとか。
K. Taku, A. Can, R. G. Tedeschi, and L. G. Calhoun, "Core Beliefs Shaken by an Earthquake Correlate with Posttraumatic Growth," Psychological Trauma: Theory, Research, Practice, and Policy 7, no.6 (May 25, 2015): 563-69.
Y. Jin, J. Xu, H. Liu, and D. Liu, "Post traumatic Stress Disorder and Posttraumatic Growth Among Adult Survivors of Wenchuan Earthquake after 1 Year: Prevalence and Correlates," Archives of Psychiatric Nursing 28 (2014): 67-73.
わたしたち人間が持つ「心の強さ」を感じさせてくれる研究ですよね。
また、二〇一九年の研究結果によると、人生の意義を見出せている人ほど、自殺念慮や自殺意図といった自殺関連行動が減少する傾向にあったのだそう。
The Meaning in Life in Suicidal Patients: The Presence and the Search for Constructs. A Systematic Review. Alessandra Costanza et al. Medicina (Kaunas). 2019.
さらに、二〇一二年の研究データによれば、生きる意味をハッキリと自覚できている人ほど、うつ病や不安障害に罹(かか)りにくくなる傾向にありました。
Y. Kyutoku, et al., "Cognitive and Psychological Reactions of the General Population Three Months after the 2011 Tohoku Earthquake and Tsunami, "PLOS ONE 7, no.2 (2012): e31014.
くわえて、二〇一五年の研究データでは、心的外傷後成長を経験することで、後のPTSDへの罹患リスクが軽減されたと報告。
J. Chen, X. Zhou, M. Zeng, and X. Wu, "Post-traumatic Stress Symptoms and Post-traumatic Growth: Evidence from a Longitudinal Study Following an Earthquake Disaster," PLOS ONE 10, no.6 (2015): e0127241.
ひとことで言うと、大切な価値観を意識しながら生きる人のほうが、さまざまな逆境や挫折に打たれ強くなるのですね。
自殺。
うつ病。
不安障害。
そして、PTSD。
それらの不幸を避ける手段のひとつは、生きる意味を明確化することにあるのです。
なので、断言できます。
人生の困難を乗り越えるキーポイントは、あなただけの『生きる目的』を見つけることにあると。
【うつ病で苦しんだ体験談】『人生の目的』が私を救ってくれた
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