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①IQの教科書:知能にまつわる13の衝撃的な事実と高いIQを持つ10の科学的なメリット


【はじめに】IQとは、あなたの「脳のスペック」のこと⁉︎【知能指数が高い人=脳の性能が良い】


 こんにちは、ググれ香澄です!
 このたびは、本書を手に取っていただき誠にありがとうございます。

 本書では、科学的な根拠をもとに、以下のような疑問に お答えしていきます。

「IQって……結局、なんの役に立つの? 知能指数が高いと、どんなメリットがあるの?

「IQが高い人は『頭が良い』って言うけど……それ、ほんとうなの? そもそも、知能指数って何なの?

 さきに結論を言うと、IQとは「脳のスペック」のことです。

 あなたの脳が、どれだけ効率的かつスピーディーに はたらいているかを示した指標。あなたの脳のスペックを数値化した指標。
 それが、科学が意味するところの『IQ(知能指数)』です。

 なので、IQが高い人のほうが、脳が より効率的かつスピーディーに機能している、ということになります。
 問題を解決するために、より少ないエネルギーと早い時間で脳をはたらかせることができる。知能指数が高い人には、そんな特徴があります。いわゆる「頭の回転が速い人」ですね。

 たとえるなら、それは最新版のiPhoneを使って生きているようなもの。
 ほかの人が古いCPUを搭載したスマホを使っている一方で、IQが高い人は「処理能力の高いスマホ」を使ってブラウジングをします。最新版のスマホを使って、さまざまな問題解決に当たります。

 当然、高いスペックを持ったスマホのほうが、より快適にネットでブラウジングできますよね。
 アプリを利用するときも、より効率的かつスピーティーにダウンロードできます。ソシャゲで遊ぶときも、ラグ(遅延)が生じることなく快適にゲームできるでしょう。「Now loading…」にイライラすることもありません。

 つまり、知能指数が高いということは、最新のCPU(処理装置)を搭載しているということ。
 ほかの人が60分かけて問題解決するところを、IQが高い人は20分くらいで解決できちゃいます。あるいは、15分しかかからないかもしれません。
 かんたんに言うと、知能が高い人は情報の処理速度が早いのです。

 脳の神経ネットワークが効率的かつスピーディーに機能していれば、より短い時間で解決策に辿りつくことができます。
 たとえるなら、知能指数が高い人と低い人の関係は、童話に出てくる『ウサギとカメ』のような関係性ですね。

 IQが平均よりも低いと、ゴールに辿りつくまでに時間がかかります。カメです。
 一方で、知能指数が平均よりも高いと、ほかの人たちよりも早くゴールに辿りつくことができます。ウサギです。
 このように、問題解決というゴールに辿りつくには、IQが高いほうが「お得」なのです。

 大切なことなので、もう一度くり返します。

 IQとは脳のスペックのことです。
 あなたの脳が普段どれだけ効率的かつスピーディーに機能しているかを示した指標。脳のスペックを数値化して表した指標。それが、科学が定義するところの「知能指数の正体」です。

 ちなみに、IQの高さと関連が強い脳のエリアは、前頭前野頭頂葉だと言われています。

The Parieto-Frontal Integration Theory (P-FIT) of intelligence: converging neuroimaging evidence. Rex E Jung et al. Behav Brain Sci. 2007 Apr.
Brain Structural Networks Associated with Intelligence and Visuomotor Ability. 2017. Youngwoo Bryan Yoon, et al.


 研究者が言うには、前頭前野と頭頂葉の結びつきが強いほど、IQが高くなる傾向にあると指摘されているのだそう。

 つまり、この2つのエリアが互いに結びつき、有機的な神経ネットワークを築くことで、知能指数の高さが生まれているのですね。
 もちろん、これは あくまで1つの仮説に過ぎませんが。

 図解すると、以下のとおり。



 そして、ここまでの話を まとめると、以下のようになります。

▼IQとは何か?
→脳のスペックのこと。
→「前頭前野⇄頭頂葉」の神経ネットワークの結びつきの強さ(スペックの高さ)=知能指数の高さに関連

 さて、なんとなく「IQについてのイメージ」は固まりましたか?
 おぼろげだった「IQとは何なのか?」という疑問に対して、少しだけ輪郭が見えてきたのではないでしょうか。

 このさきでは、知能指数の正体について さらに深掘りしていきます。具体的には、IQにまつわる13の事実+高いIQを持つ10のメリットについて解説。いずれも、科学的な研究をもとに お話していきます。
 なので、情報の信頼性はバッチリですよ。

 高いIQを持つメリットについては、本書の後半にて お話ししていきます。ぜんぶで10つありますので、要チェックです。

 一応、お断りしておくと、本書では便宜(べんぎ)的に「IQが低い人」という言葉を使いますが、それは差別的な意味を持ちません。「相対的に知能指数が低い」というだけで、その人たちのことをバカにするつもりも嘲笑するつもりもありません。
 あくまで、スムーズに話を進めるために「IQが低い人」という言葉を使います。その点だけ、ご理解いただけたらと思います。どうか、誤解なきよう。

 さぁ、IQにまつわる事実について知る準備はできましたか?

 それでは、始めていきましょう。

第1章——IQにまつわる13の衝撃的な事実とは?



 本題へと入る前に、さきに概要をまとめておきましょう。以下のとおりです。

▼IQに関する衝撃的な事実【13つ】
①IQ=脳のスペックのこと
②メンタルが強くなる可能性
③左翼的な思想を持つ可能性
④孤独なほうが幸せになれる可能性
⑤より効率的に脳を使っている可能性

⑥陰謀論に振り回されなくなる可能性
⑦イジメによってIQが低下する可能性
⑧年々、IQは上がり続けている(フリン効果)
⑨心理学における『開放性』のスコアと関連する可能性

⑩ IQはストレス(コルチゾールの分泌)で簡単に下がる
⑪社会・経済的な地位が低い子ども=IQが低くなる可能性
⑫チェスやマージャンなどの知的な遊びでIQが上がる可能性
⑬約80%が遺伝で決まる(後天的にIQを上げるのは難しい)

 本書で紹介する「IQに関する事実」は、ぜんぶで13つあります。「IQ=脳のスペックのこと」については解説しましたので、のこりは12つですね。

 さっそく、本題へと入っていきましょう。

【IQに関する事実①】知能指数が低い人ほど、犯罪をおかしやすい傾向アリ……⁉︎



 さて、1つ目に解説する事実は「知能指数が低い人=犯罪をはたらく傾向がある」についてです。「刑務所に入所しやすい傾向がある」と言い換えてもいいかもしれませんね。

 いきなり炎上しそうな内容ですが、ちゃんとした根拠があります。統計的なデータがあります。

 まずは、下の図を ご覧ください。



 それから、以下のパーセンテージを ご覧ください。

・測定不能=3.4%
・IQ49以下=3.7%
・IQ50〜59=5.7%
・IQ60〜69=11.6%
・IQ70〜79=21.8%
・IQ80〜89=26.0%
・IQ90〜99=19.3%
・IQ100〜109=7.1%
・IQ110〜119=1.2%
・IQ120以上=0.1%以下

 上のグラフとパーセンテージは、日本の受刑者のIQと割合を数値化したものです。ご覧のとおり、平均以上の知能指数を持つ人たちの犯罪率は、そうでない人たちと比べてグッと低くなっています。全体の1割ていどですね。IQ120以上の人たちに関しては、わずか0.1%以下でしかありません。

 全体値として見ると、知能指数が高い人ほど「犯罪をおかしにくい」。あるいは、IQが高い人ほど「刑務所に入所しにくい傾向がある」と言えるでしょう。

 反対に、最大のボリューム・ゾーンはIQ70〜99の人たちです。この人たちだけで、全体の7割ちかくを占めています。日本の受刑者のうち、60%以上は「知能指数が70〜99に属する人たち」なのですね。

 とはいえ、この理由は定かではありません。なぜIQが低いことが犯罪率に相関するのかは、いまのところ不明なのです。

 もしかしたら、知能指数が高い人は、犯罪をはたらいても逃げおおせるのが上手なのかもしれません。捕まらないための立ち回りが上手い、ということですね。
 その反対に、IQが低い人は、犯罪をおかしたときにバレやすいのかもしれません。ずさんな犯行をしてしまう結果、知能指数が低い人のほうが刑務所に入所しやすくなる。現時点でできるのは、そのような推測でしかありません。

 さきほど紹介したとおり、IQとは「脳のスペック」のことです。問題を解決するにあたって、脳がどれだけ効率的かつスピーディーに機能するかを数値化した指標です。

 となれば、知能指数が高い人が犯罪をおかした場合、おそらく「どうすれば捕まらずに済むか?」を考えるでしょう。「犯罪者にならないためには、どのような解決策が考えられるか?」について頭をはたらかせるはずです。刑務所に入らずに済む方法を考えるはずです。

 その結果、彼ら/彼女らは受刑者にならずに済むのかもしれません。犯罪をおかしても、捕まらずに済むのかもしれません。知能犯的ですね。もちろん、脳が正常な状態にある人は、そもそも犯罪をおかそうとは思わないでしょうけれど。
 特別な理由がないかぎり、現代のような法治社会では「犯罪をおかすのはコスパが悪い」と言えます。一般的な社会生活が送れなくなりますから、どう考えてもコスト対効果が悪いでしょう。
 なので、ふつうの社会生活を送ろうと思ったら、法を侵すことを躊躇するはずです。ためらうはずです。となれば、一般的な生活を望む人ほど、法律を遵守(じゅんしゅ)するだろうと推測できますよね。

 IQが低い人たちは、そのあたりの計算がニガテなのかもしれません。

【IQに関する事実①】IQが低い人ほど、反社会的・攻撃的な行動をとる傾向に⁉︎



 じっさいに、科学的な研究でも、知能指数の低さは「反社会性・暴力性に関連する可能性がある」と指摘されています。

 たとえば、2006年の研究では、IQのスコアが低い子どものほうが、5〜7時点での「反社会的な行動」と関連する可能性があると指摘されました。

Genetic influences on the overlap between low IQ and antisocial behavior in young children. 2006. Karestan C Koenen, et al.


 また、2019年の研究でも同様に、脳の認知機能(≒IQ)の低さは、反社会性や攻撃性に関連する可能性があると結論されています。

Cognitive functioning and aggressive antisocial behaviors in young violent offenders. Märta Wallinius et al. Psychiatry Res. 2019 Feb.


 まとめると、相対的に知能指数が低い人のほうが、そうでない人と比べて、反社会的・攻撃的な傾向が強いのですね。

 IQが低い人のほうが、攻撃的で反社会的。これは、わたし個人の意見ではなく、統計的な傾向です。科学的な事実です。

 くり返しですが、わたしは知能指数が低い人たちのことをバカにするつもりもなければ、嘲笑するつもりもありません。
 ただ純粋に、科学的な研究によって分かっている「客観的な事実」について解説しているだけ。「知能指数にまつわる事実」について説明しているだけです。

 なので、どうか「IQが低い=みんな犯罪者になる」と短絡的に解釈なされないよう、お願いします。

 知能指数が低くとも、ふつうに暮らしている人は山ほどいます。むしろ、そちらのほうがマジョリティでしょう。IQが低いからと言っても、ほとんどの人は「犯罪をおかさない」し「攻撃的でもない」のです。この点だけ、ご理解いただけるよう重ねて お願い致します。

 さて、話を戻しましょう。

 1987年におこなわれた古典的な研究によれば、8才時点で測られた「攻撃性の高さ」は、中年期時点での低いIQに関連することが指摘されました。

Intellectual functioning and aggression. L R Huesmann et al. J Pers Soc Psychol. 1987 Jan.


 分かりやすく言うと、子どものころに攻撃的だった人ほど、成人後の知能指数が低い傾向にあったのです。「①幼少期の攻撃性→②大人になったときのIQの低さに関連」ということですね。

 また、1994年の研究データによると、知能指数が低い人のほうが、相手の挑発に乗りやすい傾向が明らかにされています。その結果、攻撃的になりやすいのだそう。

Giancola, P. R., & Zeichner, A. (1994). Intellectual ability and aggressive behavior in nonclinical-nonforensic males. Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 16(2), 121–130.


 ひとことで言うと、IQが低い人のほうが「カッとなりやすい」のです。知能指数が平均以上の人たちに比べて、攻撃的になりやすいのです。

 以上のように、IQと攻撃性の関連については、科学的な研究によって指摘されています。知能指数が低い人のほうが、反社会的で攻撃的。統計データでは、そのような傾向が明らかにされています。

 なので、もしも「平均以上のIQ」を持って生まれたとしたら、それはラッキーだと言えるでしょう。生まれ持った知能指数が、あなたの犯罪率を下げているかもしれないのですから。
 ですから、平均的なIQを持って生まれたことは、反社会性・攻撃性という観点から見れば「幸運」です。ラッキーだと言えます。なぜなら、あなたは生まれながらにして、犯罪をおかす割合が低くなっているはずだからです。

【IQに関する事実②】IQが高い人は、孤独を好む。ひとりで過ごすときのほうが幸せ(らしい)。



 さて、2つ目に紹介するのは「IQが高い人は、孤独でいたほうが幸せになれる」について。

 じつは、知能指数が平均よりも高い人は、孤独でいたときのほうが、生活満足度がアップする傾向にあるのだそう。反対に、IQが高い人が集団にまぎれて行動すると、幸福度が低くなりやすい傾向が明らかにされています。

 その証拠に、2016年の研究によると、IQが高い人は「1人で過ごしたとき」のほうが、生活満足度が上がりやすい傾向にありました。

Country roads, take me home… to my friends: How intelligence, population density, and friendship affect modern happiness. Norman P Li et al. Br J Psychol. 2016 Nov.


 反対に、知能指数が高い人は、社交に費やす時間が増えるほど、生活満足度が低下する傾向にあったのだそう。

 分かりやすく言うと、IQが高い人は「群れるのを嫌う」のです。他人と一緒に過ごすよりも、ひとりで過ごすほうが幸せ。孤独でいるほうが、幸せな人生を歩めるようになる。
 よく「孤高の天才」と言いますが、知能指数が高い人には「孤独を好む傾向」があるのですね。むしろ、孤独でいるからこそ、ほかの人にはないアイデアを思いつくのかもしれません。他を圧倒する考え方ができるのかもしれません。

 この研究データは、わたし自身の体験から見ても納得できる内容です。
 マウントを取るつもりはありませんが、わたしのIQは127です。そして、知能指数が120〜129の数値を示す人の割合は、人口比で上位6.4%くらいだと言われています。なので、わたしのIQは「平均以上」ということになりますね。

 その影響あってか、わたしは1人でいたときのほうが人生を楽しめます。孤独でいれば、読書に時間を費やすこともできますし、なにより「ひとりで考える時間」を作ることができます。それは、わたしにとって とても幸せなこと。ひとりで黙々と思考する時間は、わたしにとって「楽しい時間」なのです。

 しかし、人によっては、わたしのことを「変わり者」と感じる場合もあるかもしれません。「1人で家にいるより、友だちとかとディズニーに行ったほうが楽しくない? 家で読書とか、楽しいのソレ?」と思うかもしれません。

 わたしにとって、読書は「最高にエキサイティングな活動」です。
 けれど、一部の人たちは「読書=活字を追うだけの退屈な作業」と解釈するかもしれません。このあたりに、IQの高低による価値観の違いがあります。知能指数の違いによる齟齬(そご)が生じています。

 わたしたちは、他人が嫌いというわけではありません。人間ギライというわけではありません。むしろ、人間好き度合いは人並みレベルです。
 ただ純粋に、IQが高い人たちは「1人でいるのが好き」なのです。ほかの人たちが「他人と一緒に過ごす=楽しい」と感じるところを、知能指数が高い人たちは「ひとりで過ごす=楽しい」と感じるだけ。ただ、それだけなのです。

 IQが高い人たちにとって、孤独はネガティブなことじゃない。むしろ、ひとりでいることは「最高にリラックスできる時間」です。好きなだけ知的な活動に時間を費やし、あれこれと思考をめぐらせることができる時間。好きなことを思い、考え、感じられる時間。
 それが、知能指数が高い人たちにとっての「孤独」なのです。

【IQに関する事実③】知能指数が高い人のほうが、メンタルが強くなる可能性アリ【鬱病リスクが改善】



 さて、3つ目に解説するのは「IQが高い人=メンタルが強い可能性」について。

 というのも、90,529人を対象にした2017年の研究によると、相対的に知能指数が高い人のほうが、うつ病に罹患するリスクが低い傾向にあったのだそう。

Intelligence and neuroticism in relation to depression and psychological distress: Evidence from two large population cohorts. 2017. L.B. Navrady, S.J. Ritchie, et al.


 さらに、研究では「IQが高い人のほうが、情緒安定性が高い傾向にある」とも指摘されました。つまり、知能指数が高い人のほうが、メンタルが強い傾向にあるのですね。

 この理由については、ハッキリとしたことは分かっていません。研究によって示されているのは、ただ純粋に「IQが高い=メンタルが強くなりやすい」ということだけ。それ以上のことは、あまり詳しく分かっていないのです。

 ただし、考察はできます。

 たとえば、知能指数が高い人は孤独を好みます。そして、読書を好みます。家で ひとり本を読んでいるときが、高いIQを持つ人たちにとっては「幸せ」なのです。さきほど お話ししたとおりですね。

 ここにヒントがあります。

 というのも、いくつかの系統的レビュー&メタ分析によれば、読書は「うつ病の治療に効果的」だと証明されているから。本を読むことは、傷ついた心を癒すことに役立つのです。

The effects of bibliotherapy on the mental well-being of informal caregivers of people with neurocognitive disorder: A systematic review and meta-analysis. Shanshan Wang et al. Int J Nurs Stud. 2020 Sep.
R W Marrs. (1995) A meta-analysis of bibliotherapy studies.


 ちなみに、系統的レビュー&メタ分析とは、もっとも科学的な信頼性が高いとされる研究手法のこと。なので、情報の信頼性はバッチリですよ。

 それから、読書によって養われたボキャブラリーの多彩さは、ストレス耐性を高めることに役立つ可能性があります。

 じっさいに、2014年の研究によると、多彩なボキャブラリーを操れる人のほうが、うつ病リスクが改善する傾向にあったのだそう。

Quoidbach, J., Gruber, J., Mikolajczak, M., Kogan, A., Kotsou, I., & Norton, M. I. (2014). Emodiversity and the emotional ecosystem. Journal of Experimental Psychology: General, 143(6), 2057–2066.


 反対に、2012年の研究データでは、うつ病に罹患している人ほど、ボキャブラリーの多彩さが失われる傾向にありました。

Feeling blue or turquoise? Emotional differentiation in major depressive disorder. Emre Demiralp et al. Psychol Sci. 2012.


 つまり、読書を通じて「さまざまな言葉」に触れることにより、精神疾患にかかる率を下げることができるのですね。もちろん、本を読むことソレ自体にも、心を癒すはたらきがあります。

 その証拠に、2009年の研究によれば、週に1回30分の読書をおこなうだけでも、体内のストレスレベルが有意に低くなる傾向にありました。

Stress Management Strategies For Students: The Immediate Effects Of Yoga, Humor, And Reading On Stress. 2009. Denise Rizzolo, et al.


 まとめましょう。

 IQが高い人ほど、メンタルが強い傾向にあります。それから、知能指数が高い人ほど、読書を通じて多彩なボキャブラリーを養う傾向にあります。そして、たくさん本を読む人ほど、うつ病にかかるリスクが低くなる傾向にあります。

 なので、順番的には「①IQが高い→②1人で読書する→③鬱病にかかりにくくなる→④結果的にメンタルが強くなる」といった感じですね。

【IQに関する事実③】知能指数とメンタルの強さが関連する理由とは?【筆者の考察】



 もちろん、読書は一例に過ぎません。そのほかにも、IQの高さとメンタルの強さを関連づける要素はあるはずです。

 思うに、知能指数が高い人ほど、メンタルに効く「良い行動習慣」を身につけているのかもしれません。持ち前の知能の高さを利用して、運動や食事に気を遣っているのかもしれません。そういった「良いライフスタイル」を身につけていれば、結果的に、メンタルが強くなってもフシギではないでしょう。

 じっさいに、2015年の研究によると、健康的なライフスタイルを持っている人ほど、脳の神経ネットワークの連携が良い傾向にあったのだそう。

A positive-negative mode of population covariation links brain connectivity, demographics and behavior. Stephen M Smith et al. Nat Neurosci. 2015 Nov.


 反対に、喫煙やアルコールの常用など、好ましくないライフスタイルを持つ人の神経ネットワークは、連携が悪かったのだとか。つまり、ダメな生活習慣を持っている人の脳は、そうでない人と比べて「働きが悪い」のです。

 さきほど、わたしは「IQとは脳のスペックのこと」だと言いました。そして、以上の研究データが示すとおり、ダメな生活習慣は「脳のスペックを下げる原因のひとつ」です。喫煙やアルコール、それから運動不足や不健康な食事といった「悪いライフスタイル」は、脳の神経ネットワークの連携を悪化させる危険があります。

 たとえば、わたしはタバコを吸いません。お酒も飲みません。週に2回は運動をしますし、科学的な研究をもとに「身体に良い食生活」を心がけています。もちろん、質の良い睡眠も欠かかしません。毎日グッスリです。

 その影響あってか、朝起きた瞬間から脳がスッキリしています。
 ベッドから降りると、すぐに仕事に取りかかれるほどです。脳に良いライフスタイルを身につけてからというものの、不安や憂鬱といったネガティブな感情に囚われることも少なくなりました。健康に感謝ですね。

 メンタルに良いライフスタイルを身につけていれば、鬱々とした気分になることも少なくなります。それは、ひいては「自殺率の改善」という結果につながるかもしれません。

 じっさいに、1,109,475人を対象にした研究によると、IQの標準偏差が1.57pt上がるごとに、自殺リスクが改善される傾向にあったのだそう。

Psychosis alters association between IQ and future risk of attempted suicide: cohort study of 1,109,475 Swedish men. G David Batty et al. BMJ. 2010.


 また、2020年の研究でも同様に、知能指数のスコアが高い人のほうが、自殺する割合が低いことが示されました。

How intelligence and emotional control are related to suicidal behavior across the life course - A register-based study with 38-year follow-up. Nora Hansson Bittár et al. Psychol Med. 2020 Oct.


 以上のように、IQと精神的な強さは、なんらかのカタチで関連しています。
 そして、知能指数が高いということは、メンタルにおける最大の悲劇——自殺を防ぐ可能性があるということ。高いIQを持つ人のほうが、自死という不幸を避ける割合が高いのですね。

 なので、知能指数が高いに越したことはありません。高いIQを持っていたほうが、自殺という人生を不幸を避けられるかもしれないからです。心の強さを養えるかもしれないからです。

【IQに関する事実④】高い知能指数を持つ人=エネルギーを効率的に使っている可能性アリ!



 さて、4つ目に紹介するのは「高いIQを持つ人=より効率的にエネルギーを使っている可能性」について。

 じつは、高い知能指数を持っている人のほうが、より効率的に脳のエネルギー——グルコースを消費する傾向にあるのだそう。

 じっさいに、2017年に出版された書籍によれば、IQが高い人は「より効率的にグルコースを消費して、知的な活動をおこなう傾向がある」と結論されました。

Haier, R. J. (2017). The neuroscience of intelligence. Cambridge University Press.


 ひとことで言うと、知能指数が高い人の脳は「燃費がいい」のです。「IQが低い人=燃費の悪い車」だとしたら、知能指数が高い人は、少ない燃料で遠くまで旅ができる「燃費の良い車」です。

 なんとなく、知能が高い人には、たくさんのエネルギーを必要とするイメージがありますよね。がんがんグルコース(糖分)を消費して、ガンガン頭を使っている印象があります。
 しかし、じっさいには、高いIQを持つ人ほど「燃費が良い脳みそ」を持っている。少しのエネルギーで、遠くまで旅できる「燃費の良い車」に乗っているのです。高い知能指数を持つ人は。

 なので、IQが高い人ほど、知的労働に適性があると言えるでしょう。知能指数が高い人は、生まれつき「頭を使った活動」が得意な傾向にあります。ですので、知的作業が要求される仕事は天職です。持ち前の高い知能を持って、いかんなく能力を発揮できるでしょう。

 反対に、高いIQの人が肉体労働に従事するのは、いささか「宝の持ち腐れ」感があります。たとえるなら、戦略を練るのが得意な軍師が、前線に出て戦うようなものだからです。
 もちろん、これは肉体労働が悪いと言っているのではありません。単純に、ものごとには「向き・不向き」があるというだけの話です。たとえば、遠距離攻撃が得意な魔法使いが前線に出ていたら、多くの人が「おいおい、後ろからサポートしてくれよ……」と思うでしょう。適材適所ですね。

「魔法使いは前線に出ちゃダメ」というわけではありませんが、ものごとには向き・不向きがあります。高い知能指数を持つ人は、後方支援が得意なタイプです。IQが高い人は、ほかの人がニガテな知的労働を担当したほういい。そのほうが、社会への貢献度を高められることでしょう。

 せっかく、脳のエネルギーを効率的に使えるという才能があるのですから、使わない手はありません。高い知能指数を持つ人は、RPGで言うと軍師タイプです。頭を使って戦略を練ることが得意な傾向にあります。

 IQが高い人は、燃費の良い車。そう考えると、おぼろげだった「知能指数の正体」が明確になるような気がしませんか?

 IQが高い人と低い人では、単純に「乗っている車」が違うのですね。

【IQに関する事実⑤】知能指数が低い人ほど、陰謀論やスピリチュアルにハマりやすい⁉︎

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