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①人間関係の心理学マニュアル——『アイツ』から今すぐ逃げろ!:絶対に避けるべき9タイプの人間関係と自分と向き合うための4つの科学的メソッド
はじめに
こんにちは、ググれ香澄です!
この度は、本書を手に取っていただき本当にありがとうございます。
いきなりですが、あなたに1つ質問させてください。
あなたは、人間関係を「選定」できていますか?
付き合うべきではない人と積極的に付き合うべき人を、きちんと選り分けられているでしょうか?
良い人と積極的に関わり、悪い人との関係を断ち切っていくこと。これは、科学が証明した「幸せな人生を歩むために欠かせない要素のひとつ」です。
というのも、かつてハーバード大学が進めてきた「人間の幸せには何が必要か?」について調べた研究があります。
その調査期間は、じつに70年以上。とんでもない長期研究です。専門的には、『ハーバード成人発達研究』と呼ばれていますね。
そして、本研究で明らかになったことは非常にシンプル。その内容は、次のとおりです。
「幸せな人生に必要なのは、良好な人間関係を築くこと」
Harvard 2nd generation study STUDY OF ADULT DEVELOPMENT
https://www.adultdevelopmentstudy.org/grantandglueckstudy
つまり、良い人間関係を作ることこそが、わたしたちの人生を幸せにしてくれるのです。幸せのカギは、気心知れた人との「温かみのある関係」を作ることにあります。
さぁ、振り返ってみてください。
あなたは、良い人間関係を築けていますか?
温かみがあり、信頼できる人との関わりを持てていますか?
反対に、科学が示す「付き合っちゃダメな人」と関わっていないかどうか。
あなたの人生を不幸にする『アイツ』と関わっていないかどうか……。あなたの周りにいる人たちは、ほんとうに「積極的に付き合うべき価値がある人間」でしょうか?
ハーバード成人発達研究が示すとおり、幸せの源泉が人間関係にあるのなら、不幸の源もまた人との関わりにあると言えます。
つまり、付き合ってはいけない人と関わること——悪い人間関係を築いてしまうことは、ダイレクトに不幸へと直結してしまうのです。
人との関係性は、表裏一体。
たとえるなら、コインの裏表のようなものでしょうか。
良い人間関係を築くことが幸せに直結するなら、悪い関係性を築くことは不幸に直結する “疫病神” です。
幸せを感じられない人生なんて、まっぴらゴメンですよね。
そこで、本書の前半では、人間関係における「付き合ってはいけないアイツ」と題しまして、絶対に避けるべき9タイプの人々を紹介していきます。
科学的な根拠をもとに解説していきますので、情報の信頼性はバッチリですよ。
さらに、本書の後半では、あなたの人材価値を高めるための「自己理解を深める方法」について解説。
あなた自身が「付き合う価値のある人間」になるためには、まずは「自分はどんな人間なのか?」について知っておく必要があります。
つまり、自己理解を深めて あなた自身の価値を高めることが、良い人間関係を引き寄せるための “磁石” となるのです。良い人の周りには良い人が集まってきますからね。
良い人間関係を掴み、幸せな人生を歩むためには、自分自身と向き合うことは避けられません。
なにより、人生で もっとも深く付き合っていくのは「自分自身」ですから。自分自身と良い関係を築ける人は、他者とも良い関係を築けること間違いナシです。
逆に言えば、「自分とは どんな人間か?」が理解できていなければ、「どんな人と付き合うべきか?」が分かりません。
「自分は どんな性格で、何を大切にしてて、どう生きていきたいのか?」が明確になっていなければ、あなたとマッチする人が誰なのかが分からなくなってしまうのです。
断言できます。
さいごに勝つのは、自己理解を深めることを通じて、自分自身を「最高の友」にできる人なのだと。
科学的なデータをもとに、あなたの中にいる『アイツ』を追い出していきましょう。
さきに結論をまとめると、本書の構成は以下のようになっています。
▼付き合ってはいけない人【9タイプ】
①攻撃的な人
②サディスト
③サイコパス
④ナルシシスト
⑤マキャベリスト
⑥メンヘラ
⑦誠実性が低い人
⑧視野が狭い人
⑨毒親(機能不全家庭の親)
▼自己理解を深めるための【4つのポイント】
①メタ認知診断
②ビッグ5診断
③繊細さん診断
④価値観の明確化
初めましてなフレーズも多いかもしれませんが、だいじょうぶ。科学的な根拠をもとに、中学1年生でも理解できるよう分かりやすく解説していきますので。
さぁ、幸せな人生を歩む準備はよろしいでしょうか。
それでは、本題へと入っていきましょう。
パート1【科学で解説】9タイプの「付き合ってはいけない人」の正体とは?
さて、まずは「付き合っちゃダメな人」について、科学的なデータとともに解説していきましょう。
さきほど お話ししたとおり、幸せな人生を送るためのキーワードは「人間関係」にあります。そして、不幸な人生に陥るポイントもまた、人との関わりにあるのだと指摘しました。
ですので、まずは「関わってはいけない人」について知っておく必要があります。
具体的には、次の「9タイプの人間」に関わっていないかどうか、ご自身の人間関係をチェックしてみると良いでしょう。
▼付き合ってはいけない人【9タイプ】
①攻撃的な人
②サディスト
③サイコパス
④ナルシシスト
⑤マキャベリスト
⑥メンヘラ
⑦誠実性が低い人
⑧視野が狭い人
⑨毒親(機能不全家庭の親)
【関わってはいけない人①】あなたの周りにいる「攻撃的な人」の特徴とは?
さて、1つ目に紹介するのは「攻撃的な人」について。
言うまでもなく、攻撃的な人と関わるとロクなことがありません。
非難される。
威圧される。
人格攻撃される。
暴力を振るわれる。
暴言を吐き捨てられる。
精神的に追い詰められる。
ネチネチと悪口を言われる。
誹謗・中傷を浴びせられる……など。
心理学的に言うと、攻撃的・暴力的な人の多くは「人生への不満」を抱えています。「どうして、こうも人生がうまくいかないんだ!」というフラストレーションを抱えているからこそ、そのはけ口となる対象を求めてしまうのですね。
じっさいに、この心理は『フラストレーション=攻撃仮説』として知られています。
Dollard, J., Miller, N. E., Doob, L. W., Mowrer, O. H., & Sears, R. R. (1939). Frustration and aggression. Yale University Press.
ひとことで言うと、人生において何らかの不満を抱えている人のほうが、他人を攻撃したり暴力を振るったりといった行動を起こしやすい。
フラストレーションという心の歪みを抱えている人ほど、他人を責めたり殴ったりといった “暴挙” に出やすいのです。
たとえば、パワハラやモラハラなどをおこなう人は、このフラストレーション=攻撃仮説の典型例でしょう。
家庭がうまくいっていないのかもしれません。仕事の調子がよくないのかもしれません。部下の教育がヘタなのかもしれません。
人それぞれに様々な理由がありますが、共通していることは1つです。
彼ら/彼女らの多くは、人生に不満を抱えている。強いフラストレーションを抱えているからこそ、他人に迷惑をかけるような攻撃的な行動に出てしまうのです。
あなたの周りにもいませんか?
何かにつけて、人の文句や悪口を言ってばかりの人が。
大声で怒鳴ったり、モノに当たったりといった迷惑行為に走る人が。
ちなみに、2021年の研究によれば、こういった「攻撃的な人」の脳には、ほかの人とは異なる活動が見られるのだそう。
具体的には、以下の脳領域との強い関連が指摘されています。
・前部中脳
・前部島皮質
・補足運動野……など
Jules R. Dugre, et al. Neural bases of Frustration-Aggression Theory: A multi-domain meta-analysis of functional neuroimaging studies. May 2021.
分かりやすく言うと、攻撃的な人の脳は「ふつうの人とは違う活動をする」ということ。他人を攻撃して悦に浸る人というのは、身体の内側から「ほかの人とは違う」のです。
【事実】攻撃的な人ほど、自尊心が低い可能性あり⁉︎【暴力を振るう人の6つの特徴】
もちろん、攻撃的な人の特徴は他にもあります。フラストレーションを抱えていることだけが、人を攻撃性に駆り立てる たった1つの原因ではありません。
そこで、攻撃的な行動に出やすい人の特徴をまとめておきましょう。具体的には、以下のとおりです。
▼攻撃的・暴力的な人ほど……
・自尊心が低い
・幸福度が低い
・共感性が低い
・孤独を感じている
・IQ(知能)が低い
・EQ(感情知性)が低い……など
たとえば、2020年の研究によれば、攻撃性の高さは「幸福度の低さ」と関連していると報告。
Suat Kılıçarslan, et al. Examining the Relationship between Happiness and Aggression among Adolescents. November 2020.
また、2019年の研究によると、孤独を感じている人のほうが、他人を攻撃しやすい傾向にあったのだそう。
Relationships Amongst Aggression, Self-Theory, Loneliness, and Depression in Emerging Adults. Yasemin Yavuzer et al. Psychol Rep. 2019 Aug.
さらに、2008年の研究を見ると、攻撃的な行動に出やすい人ほど、以下の特徴を持つ傾向にあったのだそう。
▼攻撃的な人ほど……
・孤独感が強い
・人生の満足度が低い
・他人からの評価が低い……など
Reputation, loneliness, satisfaction with life and aggressive behavior in adolescence. Sofía Buelga et al. Span J Psychol. 2008 May.
まとめると、他人に攻撃性・暴力性を向けやすい人ほど、さまざまな面でフラストレーションを抱えていることが分かります。
低い幸福度。
孤独感の悪化。
人生への不満足。
そして、社会的評価の低さ。
以上のような特徴を持つ人ほど、他人に攻撃性・暴力性を向けやすい。つまり、科学的な意味で「関わってはいけない人」だ断言できます。
また、2009年の系統的レビューによれば、じぶんに自信が持てない人——自尊心が低い人のほうが、他人に暴力を振るいやすい傾向にあったと報告。
Walker, J. S., & Bright, J. A. (2009). False inflated self-esteem and violence: A systematic review and cognitive model. Journal of Forensic Psychiatry & Psychology, 20(1), 1–32.
同様に、2015年におこなわれたメタ分析でも、自尊心の低さ(自信の無さ)は高い攻撃性と関連していたと結論されています。
Zhaojun Teng, et al. A Meta-Analysis of the Relationship between Self-Esteem and Aggression among Chinese Students. January 2015.
つまり、自分に自信が持てない人のほうが、他人を攻撃しやすいということ。「自尊心の不足」というフラストレーションが、人を暴力へと駆り立ててしまうのですね。
ちなみに、メタ分析および系統的レビューとは、科学的に もっとも信頼性が高いと言われる研究手法のひとつ。たとえるなら、科学界の「王様・王女」のような存在です。なので、情報の信頼性はピカイチですよ。
【衝撃】攻撃的な人ほど、知能が低い可能性……【頭の悪さが人を暴力に駆り立てる】
まだあります。
続けていきましょう。
攻撃性と知能の関連について調べた古典的な研究によると、他人に暴力を振るいやすい人ほど、IQが低い傾向にあったと確認されています。
Intellectual functioning and aggression. L R Huesmann et al. J Pers Soc Psychol. 1987 Jan.
おなじように、1994年に発表された研究でも、脳の認知機能(≒IQ)の低さは、攻撃性・暴力性に強く関連していると指摘。
Giancola, P. R., & Zeichner, A. (1994). Intellectual ability and aggressive behavior in nonclinical-nonforensic males. Journal of Psychopathology and Behavioral Assessment, 16(2), 121–130.
そして、2019年の研究データが示すのは、IQの高さに比例して暴力性が減少していくという可能性です。
Association between intelligence quotient and violence perpetration in the English general population. 2019. Louis Jacob, et al.
まとめると、脳の認知機能が低い人のほうが、攻撃的になりやすい傾向があるのです。
とはいえ、これは当然の傾向でしょう。
というのも、わたしたち人間がストレスやフラストレーションを感じたとき、体内では『コルチゾール』や『ノルアドレナリン』といったストレス物質を分泌します。
いくつかの研究によれば、このストレス物質たちが神経系に干渉することで、脳の認知機能(IQ)が低下してしまうのだそう。
Poverty impedes cognitive function. Anandi Mani et al. Science. 2013.
Some consequences of having too little. Anuj K Shah et al. Science. 2012.
Long-Term Stress Disrupts the Structural and Functional Integrity of GABAergic Neuronal Networks in the Medial Prefrontal Cortex of Rats. Boldizsár Czéh et al. Front Cell Neurosci. 2018.
von Stumm, S., O'Creevy, M. F., & Furnham, A. (2013). Financial capability, money attitudes and socioeconomic status: Risks for experiencing adverse financial events. Personality and Individual Differences, 54(3), 344–349.
具体的には、ストレスによって『前頭前野』と呼ばれるエリアが機能不全を起こし、理性的な行動を取れなくなる傾向が確認されています。
言ってみれば、前頭前野とは「脳のブレーキ」です。
想像してみてください。
ブレーキを踏めなくなったポンコツ車では、減速できなくなりますよね。
それは、他人に対して「感情というアクセル」をベタ踏みするようなものです。
アクセル全開で突っ込んでしまえば、人間関係に問題が生じることは避けられません。
イライラや不満といった強い感情は、人間関係をダメにしてしまう「アクセルべた踏み状態」を引き起こすのです。
やはりキーワードとなるのは、さきほど紹介した『フラストレーション=攻撃仮説』。
つまり、攻撃的な人の認知機能(IQ)の低さは、心理的な不満や生理的なストレスが原因かもしれないのです。
だれしも、心に余裕がないときほど、イライラしやすくなるものですよね。
ときには、他人を攻撃することによって、不満を解消させることもあるかもしれません。声を荒らげたり、モノに当たったり……といった感じで。
ちなみに、暴力的な行動にでるかどうかについては、明確な男女差があります。
たとえば、1988年におこなわれた古典的な研究では、男児のほうが暴力を振るいやすいことが明らかにされました。
Lagerspetz, K. M., Björkqvist, K., & Peltonen, T. (1988). Is indirect aggression typical of females? Gender differences in aggressiveness in 11- to 12-year-old children. Aggressive Behavior, 14(6), 403–414.
さらに、1986に発表された研究データによれば、男性のほうが “約2倍” も暴力を振るいやすいことが証明されています。
具体的な比率は、以下のとおりです。
▼暴力を振るう人の割合
・男性=72.9%
・女性=41.2%
Makepeace, J. M. (1986). Gender differences in courtship violence victimization. Family Relations: An Interdisciplinary Journal of Applied Family Studies, 35(3), 383–388.
以上のように、攻撃的・暴力的な行動に出やすいのは「男性」のほう。どちらかと言えば、女性のほうが攻撃性・暴力性が低い傾向にあるのですね。
とはいえ、男性も女性も、ストレスを感じているときほど認知機能が低下し、イライラや不満といったネガティブな感情を他人にぶつけやすくなります。研究データが明らかにするのは、心の余裕を失くした人ほど攻撃・暴力的になりやすいという傾向です。
あえて言葉を選ばずに言うと、イライラしている男性には近づかないほうが賢明かもしれません。一時期 話題になった「ぶつかりオジサン」のように、まったく関係のない人間にまで危害を加える可能性がありますから。
【科学が証明】攻撃的な人に欠けているのは『許し』と『共感』⁉︎【愛が暴力を減らす】
では、反対に、攻撃的な言動を減らすファクターとは何なのでしょうか。
そのキーワードは、『許し』と『共感』にあります。
というのも、2010年に発表されたメタ分析によれば、『許し』の気持ちが強い人ほど『共感』の値も高く、他人に怒りを向けることが少なかったのだそう。
The road to forgiveness: a meta-analytic synthesis of its situational and dispositional correlates. Ryan Fehr et al. Psychol Bull. 2010 Sep.
また、2018年の系統的レビュー&メタ分析でも同様に、許しの精神を養うことによって、怒りや敵意といったネガティブ感情を改善できる可能性があると報告。
Forgiveness Therapy for the Promotion of Mental Well-Being: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sadaf Akhtar et al. Trauma Violence Abuse. 2018 Jan.
さらに、1988年におこなわれたメタ分析では、共感レベルが高い人のほうが、攻撃的な行動に出にくいことが指摘されています。
Miller, P. A., & Eisenberg, N. (1988). The relation of empathy to aggressive and externalizing/antisocial behavior. Psychological Bulletin, 103(3), 324–344.
以上の内容をまとめると、『許し』と『共感』の気持ちが強い人のほうが、他人を攻撃する頻度が少なくなるということ。
あえて情緒的な言い方をすれば、「愛が暴力を減らす」のです。少なくとも、『許し』や『共感』といった愛情を持てない人は、他人に優しくできない傾向があります。
そして、許しや共感の精神に欠ける人は、インターネットにも顔を出します。
というのも、2015年の研究によれば、ネット炎上に積極的に関わる人の多くが、異口同音に「自分は正しいことをやっている」「間違ったことをやるヤツが許せない」などと口にするのだそう。
Yamaguchi S. (2015) An Empirical Analysis of Actual Examples of "Flaming" and Participants' Characteristics.
つまり、歪んだ正義感をもとに行動する人たちは、他人のミスや間違いが「許せない」のです。
ネット炎上という暴力に参加したがる人の多くは、みずからの正義を振りかざして他人を攻撃してしまうのですね。
ちなみに、研究によれば「ネット炎上に参加する人の男女比=男7:女3」くらいの割合なのだそう。
さきほど「攻撃性に男女差はない」という研究を紹介しましたが、ことネット炎上にかぎっては男性が多く関与しているようですね。
以上のように、許し・共感といった気持ちを持てなくなることは、パワハラやモラハラといった典型的な攻撃行動のほか、ネット炎上という現代的な暴力にも関与する可能性があります。
おそらく、SNSでクソリプを飛ばしたり、YouTubeでクソコメを残してしまう人たちの多くは、共感や許しといった思いやりの精神に欠けているのでしょう。
自他を思いやれる人が、他人を傷つけようなどと思うはずがありませんから。科学的な研究データが、その事実を裏づけています。
お気をつけください。
あなたの周りにいる「攻撃的な人」に関わるほど、どんどん幸福な人生が遠のいていく危険ありですので。
攻撃的な人に出くわしたら、フラストレーションのはけ口にされるまえに「逃げる」が正解ですよ。
【関わってはいけない人②】他人を傷つけるのが大好き——サディストの特徴とは?
さて、2つ目に紹介するのは『サディスト』について。
Sadism: Review of an elusive construct. 2019. Lucy Foulkes.
さきほどの「攻撃的な人」と似た特徴を持つサディストですが、その性格傾向は以下のようにまとめられます。
▼サディストの特徴
・他人を傷つけるのが大好き
・苦しんでいる人を見るのが喜び
・暴力を振るうのが楽しくて仕方ない……など
サディストも、攻撃的なことには変わりありません。ただ、さきほど紹介した「攻撃的な人」と違うのは、ストレスやフラストレーションがあろうがなかろうが、サディストは他人を傷つけるのが大好きだという点。つまり、サディストの攻撃性は「生まれつき」の可能性があるのですね。
じっさいに、2013年の研究によれば、サディズム気質が強い人ほど、誰彼かまわず傷つけようとする傾向が高かったのだそう。
Buckels, E. E., Jones, D. N., & Paulhus, D. L. (2013). Behavioral confirmation of everyday sadism. Psychological Science, 24(11), 2201–2209.
つまり、サディストは「無実の人であろうが平気で攻撃する」のです。おそろしいパーソナリティですね。
サディストの多くは、ただ単純に「快楽のため」に他人を傷つけます。他人が苦しんでいるのを見るのが「大好き」なのです。
ですから、わざわざ自分から困っている人に近づいて、さらに追い打ちをかけてやることも少なくありません。
彼ら/彼女らの多くは、共感性や道徳心といった「人としての温かみ」が欠落しています。
他人を思いやることもなければ、倫理的な行動を是とすることもない。サディストにあるのは、ただ1つ「嗜虐性(しぎゃくせい)の追求」のみです。
くわえて、サディストは他人に危害を加えることに罪悪感がありません。
他人を傷つけても、いたって平気でいられるメンタリティの持ち主。それが、科学的な意味での『サディスト』なのです。
以上のようなパーソナリティーを持っていますから、ネット上の荒らしやイジメに参加することも少なくないでしょう。
サディズム傾向の強い人は「争いごとを見ると興奮する」と報告するため、集団でのケンカやリンチなどに加担したがる可能性があります。
もしくは、遠くのほうから争いごとを傍観するなど。
そして、サディストの標的にされるのは「優しい人」や「気弱な人」です。マゾっ気の強い人ですね。
学校や会社などの組織では、おせっかいな世話焼きほどサディストの餌食にされがちです。
たとえるなら、カモがネギを背負ってくるようなものですから。サディストからすれば、「お、エサが自分から寄ってきたぞ!」といった感じでしょう。
また、サディズム傾向の強い人は、血しぶきが噴き出るような暴力的なゲーム・映像などを好む傾向にあります。
血を見ることなど暴力性の最たるものですから、そういった嗜虐性(しぎゃくせい)が刺激されるドラマや映画などを好むのがサディストの特徴です。
さぁ、振り返ってみてください。
あなたの周りに、他人をいたぶるのが大好きな人はいませんか?
影からチクチクと攻撃してきたり、見えないところで悪口を口にするような人はいないでしょうか?
嗜虐的な性向を持つ人は、そう少なくありません。このさきで紹介するサイコパス・マキャベリスト・ナルシシストと同様に、人口比で1%くらいはいると仮定されています。
サディストに出くわしたら、あなたが取るべき選択は「逃げる」です。けっして、真正面から戦ってはいけません。
サディストは、あなたの勇気を「自分への挑戦・挑発」と受け取る可能性があるからです。事態が悪化するだけなので、ここは1つ「逃げるが勝ち」に徹するのが吉ですよ。
【関わってはいけない人③】いっさいの良心が欠けている人——サイコパスの特徴とは?
さて、3つ目に紹介するのは『サイコパス』について。
Skeem, J. L., Polaschek, D. L. L., Patrick, C. J., & Lilienfeld, S. O. (2011). Psychopathic personality: Bridging the gap between scientific evidence and public policy. Psychological Science in the Public Interest, 12(3), 95–162.
今日では、さまざまな場面で「サイコパス」というフレーズを耳にすることが多くなりましたね。
良心がない。
人として冷たい。
思いやりに欠ける。
人間性が欠落している……など。
サイコパスの特徴として、以上のようなイメージを抱くかもしれません。あなたの想像は、おおむね正解です。
さきに結論をまとめると、サイコパスには以下のような特徴があります。
▼サイコパスの特徴
・とても冷淡
・社会性がない
・共感能力がない
・恐怖や恐れを感じない
・罪悪感なく他人をダマす
・魅力的な人として映ることがある……など
じつは、サイコパスの脳は、ふつうの人と違う活動を示すことが分かっています。
その証拠に、2014年の研究によれば、サイコパスの脳内では以下のエリアに活動低下が見られるのだそう。
・扁桃体
・眼窩前頭前皮質
・腹内側側前頭前野……など
Functional Neuroscience of Psychopathic Personality in Adults. 2014. Ana Seara-Cardoso, Essi Viding.
以上に示す脳領域は、道徳的な感情や共感スキル、それから恐怖心の喚起などに関わっています。
それらのエリアでの活動が低下しているということは、サイコパスには「道徳・共感的な説得が通用しないこと」を意味します。
ですので、サイコパスに論理・感情的な説得をもちかけるのは愚の骨頂。
脳の観点から「倫理観が欠如している」と言えるため、まともに話が通じる相手ではありません。
じっさいに、2011年の研究によると、サイコパス的な気質は「反社会性・犯罪性」と大きく関わっており、法律違反やアルコールの乱用といった行動が多くなると報告。
Lynam, D. R., Gaughan, E. T., Miller, J. D., Miller, D. J., Mullins-Sweatt, S., & Widiger, T. A. (2011). Assessing the basic traits associated with psychopathy: Development and validation of the Elemental Psychopathy Assessment. Psychological Assessment, 23(1), 108–124.
つまり、わたしたち一般人は「サイコパスに関わるだけ損」なのです。反社会性の強い人と一緒に過ごしたところで、得られるものは極小でしょう。
それから、サイコパスはウソを常用することで知られています。つまり、自分の立場を優位にするために、平気で嘘をつくのです。
サイコパスの行動原理は「自分ファースト」なので、都合の悪い情報は意図的に隠したり消したりすることもあるのだそう。とんでもないですね。
対処法としては、サディストのときと同様で「逃げる」一択です。
サイコパスは刺激を求める傾向も強いため、あなたの抵抗・反抗を「自分への挑戦」と受け取る可能性があります。
彼ら/彼女らにとって、一般人の抵抗は「楽しいゲーム」なのです。この点は、サディストと似ていますね。
ですから、間違ってもサイコパスと戦ってはいけません。失うものがない無敵の人と戦っても、万が一にも勝ち目はありませんので。
【関わってはいけない人④】自分が大好きすぎる人——ナルシシストの特徴とは?
さて、4つ目に紹介するのは『ナルシシスト』についてです。
ナルシシストの概要については、説明するまでもないくらい一般化していますね。
ひとことで言って、自分が大好きな人。自分が大好きすぎて、他人の都合なんてまるで考えない存在。
それが、心理学が意味するところの「ナルシシスト」です。
2007年におこなわれた研究によれば、ナルシシストと虚栄心との相関は、数値にしてr=0.72だと結論されています。
Egan, V., & McCorkindale, C. (2007). Narcissism, vanity, personality and mating effort. Personality and Individual Differences, 43(8), 2105–2115.
r=0.72という値は、心理学の研究ではナカナカお目にかかれないほどの高さです。つまり、ナルシシスト傾向が高い人ほど、「自分を良く見せたい!」という気持ちが強いのですね。
そして、研究では、ナルシシストほど自己アピールが激しい傾向にあると指摘。「もっと私を見て!」「もっとオレに注目してくれ!」という気持ちが人一倍つよいため、SNSでの過剰な自己アピールに走る可能性があります。
これだけを聞くと、以下のように感じるかもしれませんね。
「ナルシシストってウザいけど、意外と無害そうじゃない? だって、自己アピールするだけの構ってちゃんなんでしょ?」
しかし、ご注意ください。
じつは、2021年に発表されたメタ分析によれば、ナルシシズム傾向が強い人ほど、他人に攻撃を向けやすいのだそう。
Narcissistic personality traits and prefrontal brain structure. 2021. Igor Nenadić.
つまり、ナルシシストは「一般人よりも暴力的」なのです。
ちなみに、2015年のメタ分析によれば、ナルシシストの比率は「男性>女性」であると明らかにされています。
Grijalva, E., Newman, D. A., Tay, L., Donnellan, M. B., Harms, P. D., Robins, R. W., & Yan, T. (2015). Gender differences in narcissism: A meta-analytic review. Psychological Bulletin, 141(2), 261–310.
なんと、男性のほうが「じぶん大好き」な人の割合が高いのですね。
自分のことを「特別な存在」だと思い、セルフイメージの向上のために他人を利用することも厭(いと)わない。
サイコパスやサディストと同じく「共感性」に欠け、他人に対して思いやりを向けることができない。
尊大で、狡猾で、自己中心的で、自己愛の強い人。心理学が意味するところの「ナルシシスト」とは、そのようなイメージですね。
そして、ナルシシストの対処法もサディストやサイコパスと同じく、例にならって「逃げる」一択です。
じっさいに、研究によれば、ナルシシストもまた「抵抗や反抗=自分への挑戦・挑発」と受け取る傾向が強いのだそう。なんだか、そんな人たちばっかりですね?
ともかく、ナルシシストと正面から戦うのは得策ではありません。
現代のナルシシストはSNS上にいることが多い傾向にありますから、不運にも絡まれたときはミュート&ブロックで乗り切るのが吉。
あなたを利用してくる自分大好きの構ってちゃんは、相手をせずに「そっと身を引く」が賢い選択だと言えます。
【関わってはいけない人⑤】他人を利用することに躊躇がない——マキャベリストの特徴とは?
さて、5つ目に紹介するのは『マキャベリスト』について。マキャベリストに関しては、初めましてなフレーズかもしれませんね。
ひとことで言うと、マキャベリストの特徴は「他者のコントロール」にあります。
じぶんの利益のために、他人を利用することをなんとも思わない人。
共感能力に欠け、まるで他人のことを「自分の手駒」のように扱って搾取する人。それが、マキャベリストの大きな特徴のひとつです。
じっさいに、2021年のメタ分析によれば、マキャベリストの多くは、他者への共感能力が大きく欠落していると結論。
Malicious mind readers? A meta-analysis on Machiavellianism and cognitive and affective empathy. 2021. Christian Blötner, et al.
つまり、科学によって「マキャベリスト=共感能力が欠落」という事実が証明されたのです。
そして、マキャベリストの脳もまた、これまでに紹介してきたサディスト・サイコパス・ナルシシストと同様に、ふつうの人とは違うはたらきをしています。
たとえば、2013年と2017年の研究によれば、マキャベリストの脳は以下の脳領域が活性化しやすい傾向にあったのだそう。
・視床
・下前頭回
・前帯状皮質
・背側前部島
・左 背外側前頭前野
Neural correlates of Machiavellian strategies in a social dilemma task. Tamas Bereczkei et al. Brain Cogn. 2013 Jun.
Machiavellian tendencies increase following damage to the left dorsolateral prefrontal cortex. Shira Cohen-Zimerman et al. Neuropsychologia. 2017 Dec.
以上に示されるエリアの多くは、道徳的な判断や共感、それから意思決定などに関わっています。
とくに、背外側前頭前野は「抑制」に関与する領域。感情や道徳・倫理的な判断をおこなうときに活動するため、わたしたち人間にとって「理性の中枢」とも呼べるエリアです。
これらの領域で相互に機能不全が起きることにより、他人を自分の目的のためだけに利用するパーソナリティー——マキャベリストが生まれます。
そして、マキャベリストもまた、ほかの「関わってはいけない人」と同様に、高い攻撃性を持つことで知られる危険な人格。
その証拠に、2014年と2017年の研究では、一般的な健常者と比べて、マキャベリストには「高い攻撃性」が確認されたのだそう。
Machiavellianism, self-monitoring, self-promotion and relational aggression on Facebook. 2014. L Abell, et al.
Verbally Aggressive Instructors and Machiavellian Students: Is the Socio-Communicative Style an Over-Bridging? 2017. Alexandra Bekiari.
研究によれば、物理的な暴力と言葉による暴力の両方が確認。
殴ったり蹴ったりといった暴力のほか、相手をののしったり精神的に追い詰めたりといった「人格攻撃」もおこなう傾向にあると結論されました。
くり返すように、マキャベリストは目的のためには手段を選びません。他人をコントロールすることに躊躇(ためら)いがなく、ウソをついても平気でいられます。
一方で、人心掌握のテクニックに優れているという側面を持つため、周りに人が集まってくる場合も少なくないのだそう。「周りに人がいる=人気者=安心できる」というマキャベリストの罠にハマらないよう注意ですね。
万が一、出会ってしまったときの対策としては、やはり「関わらない」が賢明です。
「三十六計、逃げるにしかず」とも言われるように、戦力差のある相手と正面きって戦うのは分が悪いでしょう。
相手は、生まれつき「他者操作のプロ」ですから、いいように丸め込まれてしまう可能性もゼロではありません。
ですから、マキャベリストと対峙したときは「逃げる」が吉。できるだけ接点を減らして、ターゲットにされないよう注意していきましょうね。
【悪の四角形】心理学的にもっとも危険なパーソナリティー——ダーク・テトラッドとは?
さて、ここまでの内容をまとめましょう。
▼関わってはいけない人
①攻撃的な人
→ふつうの一般人。ただし、ストレスやフラストレーションを抱えている場合が多い。
②サディスト
→いじめっ子。他人をいたぶったり傷つけたりすることが大好きで、とても攻撃的。
③サイコパス
→冷淡で冷血。恐怖や恐れを感じず、平気でウソを吐いたり約束を破ったりする。
④ナルシシスト
→じぶん大好き。自己中心的な思考の持ち主で、他者への共感が欠けている。
⑤マキャベリスト
→暴君。他人をコントロールする術を持ち、人から搾取することに躊躇いがない。
これまで紹介してきた人たちは、みな一様に「攻撃的」です。サイコパスしかり、マキャベリストしかり、他人に危害を加えることにためらいがありません。
その理由のひとつは、彼ら/彼女らが「自分ファースト」だから。
じぶんの欲求・目的を叶えることがプライオリティであって、他人に共感するとか倫理・道徳を守るといった考えは後回し。自分たちの目的達成のために、いかに他者を「使う」かを考えるため、他人を利用することに罪悪感を覚えません。良心が欠けているのですね。
ただ一方で、ここまでの話を聞いて、次のような疑問を抱いたかもしれません。
「さいしょに紹介した『攻撃的な人』はともかく、サイコパスとかマキャベリストの特徴って似通ってない? みんな、共感能力が低くて攻撃的なんでしょ?」
たしかに、その通りです。サディストも、サイコパスも、ナルシシストも、そしてマキャベリストも皆、以下の特徴が共通しているのでしたね。
・高い攻撃性
・共感性の欠如
・自分ファースト
・道徳心や倫理観の欠落……など
となれば、以上の特徴を持つ人たちを「似たようなもの」と考えてしまうのもやむなし。じっさい、彼ら/彼女らの特徴は似通っていますから。
それもそのはずで、2017年に発表されたメタ分析によれば、これらのパーソナリティは「相互に関係し合っている」と指摘されています。
Muris, P., Merckelbach, H., Otgaar, H., & Meijer, E. (2017). The malevolent side of human nature: A meta-analysis and critical review of the literature on the dark triad (narcissism, Machiavellianism, and psychopathy). Perspectives on Psychological Science, 12(2), 183–204.
つまり、これまでに紹介してきた以下の4つのパーソナリティーは、白黒ハッキリ分かれるものではなく「グラデーション」なのです。
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なので、世の中には「サイコパス+ナルシシスト」という最悪のパーソナリティーを持つ人がいたり、あるいは海鮮丼よろしく「全部乗せ」のパターンもあるということ。
さながら、シリアルキラーのような存在ですね。絶対に関わりたくありません。
ちなみに、これまでに紹介してきたサディスト・サイコパス・マキャベリスト・ナルシシストの4つのパーソナリティーのことを、あわせて『ダークテトラッド』と呼びます。
これは「悪の四角形」という意味ですね。
Chabrol, H., Van Leeuwen, N., Rodgers, R., & Séjourné, N. (2009). Contributions of psychopathic, narcissistic, Machiavellian, and sadistic personality traits to juvenile delinquency. Personality and Individual Differences, 47(7), 734–739.
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