カッシー伯爵の絶チル感想〜2巻〜
皆本の授かったギフト
「天使で悪魔」
この回では、皆本もまたチルドレンとは違う祝福と呪いのギフト「高過ぎる知能」を授かった子供だったことが分かる。
皆本にとって薫を救うことが過去の自分を救うことになる構図が面白い。
そのことを知らないチルドレンたちも、何かを感じ取って皆本への信頼度が上がった。
何気に薫がノーマル(皆本)を献身によって助けるのを始めて描写した回でもある。
才能は身を滅ぼす危険性があるという重要なメッセージの話を2巻でやってるのもすごい。
必死に生きて間違えて悩む子供なんだから、天使でもあり悪魔でもある。
皆本という保護者
「天使で悪魔」②
皆本という保護者が身をもって利他の精神を見せてくれたから、薫もそれが出来た。でも、自分の命を危険に晒したのはきっちり怒ってくれる皆本。
「君は、ここにいていいんだ」
全ての人が他者に言われたがっている言葉。
それを繋げていく慈愛のバトンを皆本が薫に渡した回。
チルドレンと学校生活
「姿なき保護者」
チルドレンが学校に馴染んでいく回。
外の世界と普通の同年代の友達。
チルドレンは超能力無しで学校に馴染めるのか!?
今後もよく登場する東野(ノーマル)とちさと(レベル2テレパス)も初登場!
過去のちょっとしたすれ違い&好意の裏返しからまぁまぁな差別発言をしちゃう東野。早めに軌道修正できてよかったね!
そして光化学迷彩を使ってまで潜入して見守る皆本と、暴走する局長(笑)
過干渉な局長には高〜いプレゼントを要求してお仕置き!
紫穂と両親の距離感
「触る大捜査線」
紫穂が警視総監であるお父さんに協力して凶悪エスパー犯罪を解決する回。
また、同族のエスパーにだってどうしようもないクズはいると再認識される回でもあり、皆本だけでなく親もチルドレンを愛しているのが分かる回でもある。
紫穂「私ね、こんな能力だから、この世がおとぎ話とは違うってことはもうわかってる。だから、世の中に汚いことがあることは隠さなくていいのよ。
薫ちゃんや葵ちゃん、それにパパや皆本さんが守ってくれてることも知ってるから……私は平気!!」
真面目な葵の不満
「長距離瞬間移動能力者の孤独」
真面目な性格の葵が損ばかりしてる気がして悩む中、葵と皆本の2人が指名で長距離輸送任務が命じられる。
手のかかる子のほうが可愛がられるというのは子供の普遍的な悩みかも?(とくに葵はチルドレンで唯一下の兄弟がいる長女だからか真面目)
でも、そんな彼女も大人の皆本からしたら同じ手のかかる子供(笑)
最後はチームとしての自分を再認識して、薫や紫穂が大好きなことを思い出す葵が可愛らしい。
「ウチの黒星は『チルドレン』の黒星や!」
薫と自由奔放な家族
「あたしンち」
薫の母と姉が登場する回。
これは私の想像だけど、父親がいないのは薫を育てることから逃げて、妻に薫を押し付けていなくなったからだろうか?
薫の言うように母も姉も、ものわかりのいい遊び人のフリをして実は薫の能力が怖がってる面もあるかもしれないが、彼女たちが薫を愛しているのもまた事実。
しかし、薫は反発して出ていってしまう。
「本当のこと言えばいいじゃん!『こんな家、どーでもいいし 別にいたくもない』って!」
(薫の家族は反エスパー組織に狙われる可能性から住居を転々としている)
迎えに行った皆本。
「お前の言うことが本当だとしても、お前にだって責任はあるんじゃないか…!!
普通の人間の弱さもわかってくれ。もうほんの少し…大人になればそれですむことじゃないか」
人の弱さを受け入れられる皆本が言うから説得力がある。彼だってまだ20歳。
薫の姉「私たち、仲が悪いってわけじゃないし———
残りの半分はただのヤキモチなんだから!」
かわいい
ECM(超能力対抗装置)と"普通の人々"
「普通の敵」感想①
エスパーの力を封じる装置ECM。
"普通の人々"が使うそれは、才能を押さえつける社会の圧力のメタファーかもしれない。
普通と違うからと子供をバケモノ扱いして平気で暴力を振るう反エスパー系テロ組織"普通の人々"。
メンバーは全員がキャラの立ってないモブ。
なぜなら、彼らは一般人の"異物を排除する攻撃性"そのものだから。改めて皮肉が効いていてリアリティのある敵だと思う。
ちなみにチルドレンたちが彼らに監禁された時の紫穂のセリフもなかなか良い。
「子供だってされたことは忘れない…!!」
「私たち、超能力はすぐに取り戻すし、いずれ大人にもなるわ。薫ちゃんに何かしたら———そのとき死ぬほど後悔させてあげる……!!」
では、なぜバベルもECMの実験を続けるのか?
皆本はECMの普及によってノーマルとエスパーの壁はなくなると伝えるが、薫は不安そうな表情で訴える。
「それってさ、あたしたちの力をいつ使うか、他人が決めるってことだろ…!?」
「皆本は!?皆本もやっぱりその方が安心!?
この力、ない方がいいと思ってる?
誰か他の人間が抑えてないとそんなに怖い…!?」
特殊な才能・個性を持った子供の純粋な叫びと疑念
ECCM(超能力対抗対抗装置)と皆本
「普通の敵」感想②
ECMをさらに妨害する電波を出す装置ECCM。
皆本がECM開発研究に関わるのは、反エスパー団体などとの開発競争の最先端に立ち、チルドレンを守るためだった。
"SAVE THE CHILDREN"(子供たちを救う)
それが皆本が設定したECCMパスワード。
皆本の信念と愛が分かる言葉。
そして、ECCMの効果も切れ皆本に銃弾が迫った時、仲間を殺されかけた怒りによって、ECMすら物ともせず暴走する薫。
「こいつらは元々負け犬だ。自分の中に超能力以上の価値を見つけられないんだ!!だからエスパーを恐れている…!!こんな連中のために君が汚れる必要なんかない!!」
カッコいいけど、相変わらずストロングな皆本さん。
そんな彼女を止めるのは、社会からの抑圧(ECM)ではなく、大人に貰った愛と自分自身の強さ。シリーズ通してのテーマを見せてくれるシーンだったと思う。
"普通の人々"「誰にも止めることが出来ないということか…!?正真正銘のバケモノ…!!」
皆本「止められるさ……!!でもそれは———武器や機械の力でじゃない……!!」
2巻感想まとめ
2巻は全体的に「チルドレンと社会」「チルドレンと大人たち」を見せてくれた巻だった。
最初の「天使で悪魔」と、最後の「普通の敵」で皆本とチルドレンの向き合い方を描き、その間に3人それぞれのメイン回と初登校回を入れてくるのは上手い。
シリーズ全体のテーマである「成長」をしっかり見せてくれていて、ずっとブレないのが絶チルの凄さ。
また、薫が皆本からはっきり「慈愛というバトン」を貰って、次の人に渡す準備が出来た巻だったと思う。