それでしか生きられなくて、それで死ぬ。「断食芸人」カフカ(青空文庫)
カフカについて知っているのは通りがかりに見かけた本の表紙から「絶望名人」だったらしいということ。
あとは変身を書いたことも知っている。ある朝目覚めたら毒虫になるの話。とまぁ短編だがカフカについてなにも知らずに読んだ。詳しい人がいればこれを知っておくとより味わえるよという豆知識を教えてください(>_<)
断食芸人は断食でしか生活できない人間であったが、断食によって死んだ。今際において彼は自身が断食しかできないと考えるようになった理由を
「うまいと思うものを見つけられなかったからだ」
と表明している。
いかにも馬鹿げている。だけど微塵も馬鹿にできない。
行動のきっかけはその人にしか響かない。大なり小なり抱いたその動機は前向きにせよ後ろ向きにせよ、当人の根幹となり唯一の信じられるものだ。馬鹿にできないと考えるのは、現実世界でも誰しもが前向きな動機に突き動かされているとは限らないからだ。作品の中で憐れな存在として描かれている断食芸人は、自身と重なる部分があって悪寒が走る。
劣等感なんて軽々しく口にしてはいけない。表明すれば楽になるから。脳を騙せるから。断食芸人が最期に想いを表明したように、誰しも抱く感情である劣等感は秘密の原動力でなければならない。
楽にならないで生きていこう。