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20代の経験

20代の経験と一口に言っても、私はたくさん仕事をしたのと、たくさん本を読んだことしか思い浮かばない。彼女もいない時期も長かったので、ひたすら本を読んでいた。休みの日は一言も発することもなく、本読みまくってた(そんな表現が合うんです )。たまに友達と飲みにいくこともあったけど、それも月1回くらい。あとは学会参加や仕事関係の会議も多くて、他病院の先生方と食事を共にすることはたまにありました。

しかし基本的にはひたすら本を読み漁り、新聞を読み、活字の海に溺れていたような日々です。毎週本屋さんに行って、古本屋さんに行って、直感で本を購入していました。

あの時期は何だったんだろう。貴重な20代。人と会っていた記憶より、読んだ本の記憶の方が圧倒的に多い。大学卒業した後って、意外と友達と会わなくなるんですよね。私も意外だったんです。そりゃ結婚式に呼ばれたらプチ同窓会みたいになるし、実際にはそれを楽しみにもしていたけど、毎週毎週結婚式はあるわけでもないし、少しずつ自分の日常が仕事と重なっていく感覚があったんです。

人と会わなくなると時間ができます。その時間はほぼ本を読む時間に充てていました。きっと本を読むことで心のスキマや寂しさの穴埋めをしていたのでしょう。それはわかっていました。それでも本を読んでいる時間は楽しかったし、1ページ1ページめくるたびにワクワクしていました。物語に引き込まれ、疑似体験のような感覚を受けるのも心地良かった。

高校の時は部活一色、大学は講義と友達とアルバイト三昧。本を読む時間はあまりありませんでしたね。それが大学を卒業した20代にここまで読書にのめり込むとは驚きです。勿論当時は読書にのめり込んでいるという実感は無かったですけど。いま考えると年間200冊は読んでいたと思います。来る日も来る日も、電車で座る度、空き時間がある毎、本のページをめくる日々。そんな時があったのかあ。

そもそも当時お付き合いしていた方と理由あって別れた20代前半。そのあと位から私は本の海に浸り続けていました。恋愛より読書。そんな時期だったんです。ある程度の経験は人間を強くします。私はそれを本を読んだ経験から感じました。本を読むことで、理論的に倫理的にまた感情的に物事を考え、自分のことを考えました。それで成長したかどうかを言いたいのではなく、強くなった弱くなったかを言いたいわけはなく、本を読む経験そのものが貴重だったんです。その経験から得難い何かを身につけることができました。

言い換えることも難しいですが、ある程度の年代に集中して取り組んだ経験は晩年に役立つと思うんです。何に役立つかはわかりませんが。少なくても、誰よりもたくさん本を読んだ20代の経験には私自身が一番満足しています。自分が満足できていれば良いんです。あの経験のもとに今の自分がいるんです。あぁ、あの日々が楽しかったなあ。


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小麦パン
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