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「DolbyAtmos」「轟音」「極上音響」を『BLUEGIANT』で比較
先日公開された映画『BLUEGIANT』はとにかく音が良いことで評判です。私も公開初日に観て感動し、映画館の音響で曲を聴くために早や5回。せっかくの良い音なんだからということで、無理せず行ける範囲ではありますが3回目以降は高規格の音響システムを採用している映画館に行って鑑賞しています。
1・2回目の鑑賞は高規格ではない映画館で。3回目はDolbyAtmos、4回目はTOHOシネマズの「轟音」、5回目は立川シネマシティの「極上音響」。それぞれ高規格を謳っているだけあって、明らかな音の違いを感じられたのですが、その中でもどのようなシーンに強いというような特徴があるように思えたので、その違いを比較したいと思います。
あくまで個人の感想であり人によって聴こえ方は違うと思いますので、実際に映画館で聴いてみることをお勧めします。
1.DolbyAtmos
1-1.公式の謳い文句
ドルビーアトモスは、従来のサラウンドサウンドに加えてさらにレイヤーを追加することで、エンターテイメントにおいてプレミアムな多次元サウンドを体験できる空間オーディオテクノロジーのパイオニアです。
この説明では正直あまり理解できませんが、具体的には、「高さ」の情報を持った音響データを使用し、天井辺りに配置されたスピーカーによって立体的な音の表現ができる。そのため、より映像とリンクした音の聴こえ方となり没入感が高まる……ということのようです。
1-2.アクセス性と価格面での利用しやすさ
北海道や四国などには現時点では無いようですが、東京・大阪など都市部を中心としてかなりの劇場数・スクリーン数があるため利用できる方は多いでしょう。料金も通常料金+100~200円程度の割増で済むので、その分の利用価値は十分にあると言える音の良さを感じられると思います。
1-3.『BLUEGIANT』での効果
単純に通常規格と比べてスピーカーなどの設備が良いため、いわゆる「音の解像度」が高く、繊細な音まで聞き取りやすくなっています。また、ジャズライブの空間が劇場内に再現されているようで、JASSの3人や映像内のプレーヤーがそこにいるかのような感覚になります。
2.TOHOシネマズ「轟音」
2-1.公式の謳い文句
「音の体感・迫力あるサウンド」を意識したシアターです。スピーカーユニットを向かい合わせで駆動させることで通常の1.5倍~2倍のパワーを発揮するアイソバリック方式を採用したサブウーハーを導入します。TOHOシネマズ以外では体験できない、空気を震わせる体感型サウンド・シアターを実現します。
サブウーハー、つまり低音の強さが最大のウリということになります。シネマシティ立川などで実施される「爆音」のようなシートまで振動するほどの音圧は無いものの、常設されているため、その時上映されている作品で「轟音」が体感できます。
2-2.アクセス性と価格面での利用しやすさ
TOHOシネマズ独自の音響システムであり、現状では東京・大阪・福岡の6館でしか採用されていません。割増料金がかからないため、劇場側がどの作品を上映するかによりますが、通常料金のまま迫力のある音響で観賞することができます。
2-3.『BLUEGIANT』での効果
単に低音が強いだけではなく、低音以外が圧されないよう全体の音響設備も通常より良いものを使用しているような気がします(気のせいかも知れない)。そのため、通常の劇場には無い音圧が感じられ、JASSが目の前で演奏しているかのような臨場感がありました。
3.立川シネマシティ「極上音響(極音)」
3-1.公式の謳い文句
シネマシティではサウンドシステムに映画館ではごく稀な、音響調整卓が組み込んであり、他館では出来ない細やかな調整が可能。
その調整を一流の音響家の手にゆだねることで、コンテンツが持っている魅力を最大限に引き出す、それが「極上音響上映」です。
前述の2つの音響システムとは違い、作品ごとに専門家が音響を調整しているとのこと。人間の感性で聴こえ方を細かく調整することにより、その作品の際立たせたいところをより印象的に強調することが可能なため、実際に他の劇場で観るのとは一味違うというか新たな発見を得られるように感じます。
3-2.アクセス性と価格面での利用しやすさ
立川シネマシティのみの環境。東京の中でもそこまでアクセスしやすい場所ではないため、気軽に行ける人は限られるでしょう。ただし有料会員(年会費1000円)の特典が強力で、常時鑑賞料割引だけでなくドリンク・フード割引、先行予約で圧倒的にお得。最新の映画だけでなくロングランや昔の名作なども上映しているため、ここでしか見れない、この劇場に行きたいという気持ちにさせてくれます。
3-3.『BLUEGIANT』での効果
何故か分かりませんが、「極音」で一番強く印象に残ったのがピアノ音の鮮明さです。他の劇場で聴くよりも更にピアノに繊細でありつつもキレのようなものが感じられました。主人公であるサックスの圧倒的に強い音とバランスを取るよう調整しているのかも知れませんし、ピアニストの沢辺雪祈、そして上原ひろみの力を伝えたいというリスペクトの精神が乗ったのかも知れません。ドラム音もよく聞こえたし、臨場感も、他の高規格音響と比較しても遜色ありません。
4.まとめ:比較とそれぞれの強み
最初に述べた通り、通常規格であっても十分に楽しめますが、高規格であれば更にこの作品の魅力が伝わってきます。上述の3つを比較すると、
DolbyAtmos:JASSのライブ会場にいるかのような空気感と音場
「轟音」:目の前にプレーヤーがいるような存在感と音圧
「極上音響」:各楽器と奏者を際立たせている独自の特別な調整
ということが言えるでしょう。謳い文句が的確だったことが比較してみて分かりました。特に「極上音響」は音のデカさ・強さに頼らないセッティングの妙を感じ、料金面も含め立川に近かったら毎週でも行きたいところです。
複数回見た後でも、この高規格音響で聴くとやはりライブシーン後、ソロパート後は歓声を上げ拍手したくなってしまう気持ちが沸き上がってくる……と思い続けていたら、公式から拍手歓迎のアナウンスが。だからと言って勝手に拍手するのもいかがなものかと思うので劇場側の許可を待ちたいところですが、立川シネマシティなど検討してくれているところもあるとのこと。応援上映ならぬ、拍手上映、あるいは喝采上映か。ついにJASSに拍手が送れる日が来る。
余談:立川シネマシティに行った日のこと
私の場合、家から立川まで行くには片道1時間以上かかります。そこまで遠いというわけではないですが、映画を1本見るためだけに行くには……という距離感なので、せっかくなので同日に複数鑑賞することにしました。その日『BLUEGIANT』以外に観たのは、『RRR』と『セッション』。
『RRR』は初見でしたが、ダンス・歌唱・アクション・友情・ロマンス・歴史・愛国心・勧善懲悪などの闇鍋状態で、途中休憩ありとはいえ上映中は一切休まる部分の無い怒涛の展開。『セッション』も知っての通り重苦しい空気と狂気を感じさせるドラム、それと裏腹に奏でられる軽快で爽快感のある曲とのギャップ。続けざまにこの2本を観て脳が爆発しそうでした。意識が朦朧としていたので若干気絶していたかも知れません。
そして、その2本の後に『BLUEGIANT』。マトモな感覚で観れるか少々不安にもなりましたが、やはりJASSの演奏部分になると一気に引き込まれる。言葉通り「目の醒めるような」最高の演奏だということを、妙な体験から改めて実感しました。