夜が明ける-西加奈子の小説から
西加奈子さんの小説、『夜が明ける』を読んだ。
どこかの誰かも感想として挙げていたが、「夜」がほんっとうに長い。
小説は2016年で終える。しかし、現実としてその後の状況は変わらないように思う。というかむしろ、より悪化した気もする。
何がだ、というと日本の貧困問題だ。
日本は平和だし豊かな国だ。だから、貧困と言われてもピンとこない。
そう思う人は、やはり恵まれているだろう。
経済的格差は拡がる一方。何とか雨風凌げる家を確保し、どうにか食いつなげていても、貯金はゼロ。そんな人も少なくない。わたしのように、非正規で働く者も大勢いる。
小説内では、日本の貧困問題に関わる様々な課題が描かれている。
例えば、虐待、ホームレス、過重労働、ハラスメント。
それぞれがどう絡んでいるのかは、本を読めばわかることなので割愛するが、パッと思い出しただけでもこんなにもあるのだ。
いったい、いつになれば「夜が明ける」のか。わたしが、わたしでいられる間に朝を迎えられるのか。小説と現実社会とがリンクして不安になる。
西加奈子氏は、希望として、助けを求めることのできる社会を書き残した。
辛いや苦しいは、他人と比べるものではなく、自分だけのもの。自分の人生は自分のもの。しんどい時は他者に助けを求めよ。
そんなふうに、登場人物の「森」を通して語る。
生活保護を甘えと見るのか、命綱と見るのか。その視点の移り変わりで生死は分かれる。
以前わたしはこの社会を、「助けて」が蔓延しているとみていた。
でも、小説を読んで、SOSを発することなく亡くなってゆく人たちも多くいるのではないかと思い改めた。
この社会-日本というこの国において、「我慢」の文化はまだまだ残っている。
「夜が明ける」には、まだ時間はかかるだろう。
しかしながら、そう気付けたのなら、また多くの方々がそう気付いたなら、必ずいつか朝がやって来る。
西加奈子の小説『夜が明ける』には、そんな力があると信じている。