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Photo by
yusaku
水筒の中には見栄がはいっている
今の仕事を始めたばかりの去年の秋ごろ、どんな簡単なことにも時間がかかって仕方がなかった。「休憩してね。お茶も自由に入れていいからね」と言ってくれるが、お茶を入れに行く時間もおしくて、喉の渇きを我慢していた。
でも、冬が近づくにつれ空気が乾燥し、緊張もあってか喉はカラカラになった。水分がほしい・・・でもお茶を入れたり、コップを洗ったりするのは、10分くらいかかる。
そこでいいことを思いついた。水筒があれば、いつでも飲めじゃない。
家で水筒に浄水ポットの水を入れた。これで、いつでも飲める。
仕事中、水筒中の蓋をキュッとあけてぐびっと飲む。あー 快適。
そんなある日「水筒持ってきてるの?」
と聞かれた。「自由に飲んでね」と言ってるのに、持参した水筒で飲んでるのが不思議だったのだろう。
「何飲んでるの?」
水、とは言いにくい。デトックスウォーターとかオシャレなものと思われたい謎の願望が湧いてくる。
「いろいろです。お茶とか水とか」
へんな見栄をはってしまった。
水でもお茶でも他人は一緒だろうに。
「え? お茶飲んでいいんだよ。水もウォーターサーバーがあるよ」
「通勤途中に喉渇くんで持ってきてるんです。」
仕事が間に合わなくて、とは言えなかった。
机の上の水筒が何か言いたそうだった。
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