エッセイ 故郷のない人の故郷のつくり方
話しかけないでよ、と思っていた。
父はコーヒーを運んできた若い店員さんに
「ここに飾ってあった絵良かったのに、どこに行ったの?」
と聞いた。
アルバイトの女の子がそんなの知るわけないじゃん。
案の定、店員さんは引きつった顔で何も答えられないでいる。
すると、母まで
「あの絵素敵だったわ」
と残念そうな顔をするではないか。
店員さんは、分からないとも言えず、なんとか作り笑いをしていた。
両親はどこに行っても、とにかく話しかける。
社交的すぎるのだ。
そのことが昔は恥ずかしかっ