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【エッセイ】猫がかわいいんじゃなくて、猫が好きなあなたがかわいいの。角田光代『今日も1日きみを見てた』

随分前に、猫が目をつむっている写真が表紙の本を、何度も見た。
角田光代さんのエッセイ集『今日も1日きみを見てた』だ。

表紙とタイトルを見た時、猫が可愛くてたまらない人の為の本だろうなぁと思い、自分には分からない本だと判断した。
私は猫派でも犬派でもなく、あえて言うならインコ派かスズメ派で、猫をずっと見ていたいと言う気持ちは無い。

しかし最近、Audible(アマゾンの本の朗読が聴けるサービス)を聞き始め、その中で再びこの本を目にした。角田さんの本だし、エッセイの勉強になるかも、再生ボタンを押した。

第一印象は、ワードのインパクトが強い!

なにせ、「角田光代さん」が「西原理恵子さん」から子ネコをもらい受けるところから始まるのだ。大物から大物へ渡る猫の話だ。
はじめのうちは、角田さんが子猫を”トト”と名づけ、猫バカ全開で育てていく姿を冷静に、やや冷やかに読んでいたのだが、だんだん「かわいいな・・・」と言う気持ちが芽生えてきた。

例えば角田さんに怒られ、プライドを傷つけられたトトが、
角田さんにドロップキックをしたり、わざと台から降りられない振りをして、四つん這いになっている角田さんの背中に乗って、降りてみたりする様子がなんとも愛おしいのだ。

ふと、似たような感情を前にも抱いたことがあることを思い出した。

母だ。

母は子供の頃、子猫を飼っていた。親には内緒で押し入れや、自分の布団に隠しながら密かに飼っていたらしい。しかし、結局親に見つかり手放したようだ。それ以来、母はずっと子猫好きだ。

私は子猫の写真を見つけると、母に見せる。

「ねぇ これかわいい?」
すると母は
「あ~~~~ かわいい~~」

と見える限界まで目を細め、もだえるように言うのだった。母のその姿を見るのが大好きだ。何度でも見たい。

その感情と同じだ。

読んでいいると、ドロップキックをされ、”トト”に踏み台にされる角田さんを、もっと見ていたいと言う気持ちになる。猫ではなく、角田さんのことを。大作家にはふさわしくない言葉だが、かわいい人だな、純粋な人だなぁ思う。

そして後半で、なぜ西原理恵子さんが角田さんに猫をあげることになったのか理由が明らかになる。それを聞いて、ほろりとした。
(是非、この感動を体験してほしい!)

角田さん!トトが来てよかったねーと心から思い、感動させてくれるこのエッセイを書いてくれたことに感謝した。

そしてやっぱり、猫のことをここまで、感動的に深く書ける角田さんは、大作家なんだなぁと思う。



読んでいただきありがとうございます!一緒に様々なことを考えていきましょう!