ギャルと私と山田詠美さんの本
たまにはエッセイのようなものでも。
(ということで、いつものハイテンションですます調の文体を封印)
高校時代、私は陰キャだった。というか生まれてこの方陰キャである。
陰キャなのに何故かギャルのグループと仲が良かった。
私の何がギャル達に気に入られたのかはわからない。
陰と陽で何かお互い惹かれるものがあったのだろうか。
おそらくギャルのリーダー的存在と美術の班が一緒になり、意気投合したことが理由だとは思う。多分。
ギャルたちの1人とは特に仲良くなった。
どれくらいの仲かというと、学校の帰りに2人でカラオケやゲーセンに行くくらいだ。めっちゃ仲良しである。
派手な見た目だが映画やドラマですぐ泣くし、ジブリ作品が好きでロマンチストな少女だった。
彼女は私が読書好きだと知るとおススメの本を貸してくれた。
その本が山田詠美さんの『放課後の音符』だった。
当時の私は恋愛がメインの小説や漫画に全く興味がなかった。彼女が貸してくれなかったら、この小説を読む機会は一生なかっただろう。
興味はなかったが本に罪はない。ありがたく借りて読むことにした。
読みやすくて、あっという間に読めた。
「あ、私が今まで読んできた小説と違う」と思った。
ある意味衝撃的。
ラノベのように読みやすい。
でもラノベとは違う。
みずみずしい、という言葉がしっくりくる文章だった。
軽やかだけど的確で、少女の繊細な気持ちをふんわりと言い当てるような言葉たち。
ストーリーは自分の好みと違けど、山田詠美さんの書く文章は好き。
そんな感想を持った。
目をキラキラさせて「どうだった? 面白かった?」と感想をせがむギャルに私は何と返したのだろう。そこは覚えていない。
ギャルが納得していた気がするので、何かうまいことを言ったのだと思う。
何故ストーリーが琴線に触れなかったのかといえば、恋愛ものだったから。
本当に恋愛に興味なかったのだ。
(ただしBLは読んでいた。どういうことだ)
別に学業に勤しんでいたわけでも、部活に精を出していたわけでもない。
漫画を読んだりゲームをしたりといったオタク活動が忙しく、恋愛にうつつを抜かしている暇がなかっただけである。
(モテなかったというのも理由のひとつだと思うが)
そんな私とは対照的にギャルの友人は恋愛の悩みを常に持っていた。
恋愛体質というやつだったのだろう。
私の記憶が確かなら、彼女は高校生活3年間の間にできた彼氏を2人ほどクラスメイトだか同じ部活の子だかに盗られている。
その激動の恋愛遍歴を思い出すと、私よりも彼女の方が執筆に向いているんじゃないかと思うくらいだ。
そんな恋愛に命をかけているような彼女の姿は『放課後の音符』に登場する少女たちに重なって見えた。
大人に憧れて背伸びしているような少女たちに似ている。
高校生の時の私はそんな風に思っていた。
でも、今『放課後の音符』のことを思い返すと。
そんなオマセさんな少女たちに憧れる主人公は、ちょっとだけ当時の私に似ているかもしれない、なんて考えてしまった。
……が、この記事を書くにあたって図書館で少しだけ立ち読みしてみたところ、そうでもなかった。別に似ていなかった。
今後『放課後の音符』を読むと「私の記憶が適当だった」ということが思い返されてしまいそうだ。
何とか別の思い出を刷り込むために、また機を見てこの本を読んでみようと思う。
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