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つみかさね

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4000字前後の短編小説です。
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#小説

【短編小説】渦

 鈍い音がして顔を上げると、店の奥のカウンター席から誰かが転がり落ちたようだった。ほどよ…

三山 重
7か月前
1

【短編小説】うんめいのひと

 ごしゅじんさまは今日もかえってきません。まい日のおそうじとおせんたく、おりょうりはつか…

三山 重
10か月前
4

【短編小説】 隠して

 隣の席の藤森菜々子さんはマスクを外さない。学生証の集団撮影の日はお休みで別日に撮影だっ…

三山 重
1年前
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【短編小説】アイソレーション

「僕、人を殺してしまいました」  土の匂いが夜風に舞い上がる。土に汚れてその美しさは隠れ…

三山 重
1年前
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【短編小説】インパチェンス

 腕が重くなって手を止めた。気がつけば咲ちゃんの声ももう聞こえない。私を好きならその声を…

三山 重
1年前
4

【短編小説】私のオトモダチ

 気がつけばみいこはひとりぼっちだった。  幼稚園の頃から結月とは親友で何をするにもどこ…

三山 重
1年前
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【短編小説】保護

 連絡もなく佐知香が我が家にやってくるのは、今に始まったことではない。いつも決まって身体のどこかに傷を作っておりその手当をするのが私の役割だ。消毒をして、湿布や包帯を巻いてやる。記憶の中の佐知香はいつも薬の匂いがしていた。 「ごめんね、こんな時間に」  何を今更と思わなくもないが、深夜一時過ぎの来訪には流石に面食らった。この日は特に楽しくもない会社の飲み会があった。最悪は帰宅後まで続くのかと自宅の前で座り込む人陰をみつけたときは思わず叫びそうになった。大きめのパーカーを羽

【短編小説】 口実

 アルコールと揚げ物の匂いが充満した空間に誰かが連れてきた煙草の残り香が入り混じっている…

三山 重
2年前
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