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読書ログ⑤「透明になれなかった僕たちのために」(ネタバレあり)

こんにちは、Kasaです!
今回は青春サスペンスの傑作の「透明になれなかった僕たちのために」について書いていこうと思います。
それではいってみましょう!


あらすじ

アリオとユリオ、幼馴染の深雪は、自分の中に潜むある欲望に苦しみつつ成長する。ユリオの自殺、連続する殺人事件を契機に驚愕の真相が明らかになっていくが… 著者渾身の青春サスペンス。

通販サイトAmazonより

読書感想

ネタバレなし

250ページありましたがチャプターが細かく、またチャプターの中にも小さなチャプターがあったので、隙間時間に少しずつ読みました。
また文章も語り掛けるようなものなので、とても読みやすかったです。

前回の読書ログ④「6」のような章を読むごとにアクセルをかかるようなものではないが、青春のように一瞬の優しい風と海を感じさせるような緩やかな物語だと感じました。
だけどサスペンス要素もあり、物語が進むごとに少しずつ謎が判明されて、「自分」という存在が徐々に認識していきます。

また主人公と関わりをもった人物たちも自分の思いや葛藤を主人公を通して、話している姿はすごい青春だな~と社会人は少しじんわりと温かい気持ちになりました。
主人公の暗い気持ちの描写はありますが、それでも知り合いや友人との何気ない会話ってすごい幸せなんだと思いました。

今まで読んだことがなかったジャンルだったので、不安でしたが、とても読みやすく面白かったです。
表紙のような海底や空は暗いけど、空から降る一筋の太陽の光のような、真実はとても険しく先の見えない道だけど、その中でも煌めく何かを手繰り寄せるような物語でした!

※ネタバレあり

ここからはネタバレが含まれますので、気になる方はスキップしてください。
また独自の感想ですので、これ違うのではないか?と感じる方はぜひコメントで共有していきましょう。
また、ここでは本全体ではなく、一つ一つのシーンを見ていきます。

映画の小ネタがめちゃくちゃ良かったです!
映画好きにはたまらんですし、何よりその表現をすることによって頭にもイメージを浮かべやすいです。
ただ知らないとどういうこと?となるので注意です。

それから遺伝子についてすごく綺麗にまとめられていて、勉強になりました。
生物に習いましたが、そんなものあったなと片隅にあったものをわかりやすく丁寧に書かれていました。
またそれが謎を呼び、謎を解明するヒントにもなりました。

まさか主人公たちの本当の父親が幼馴染の女の子の叔父で、しかも実験的に殺人衝動を起こす可能性を確認するためというのがびっくりです。
しかもやり方が、体外受精した親子に勝手に精子提供したという、なんとも反倫理的なものでした。
でも、山田悠介の「キリン」でも同様のやり方で自分の優秀さを世に残そうと躍起になっていて、マッドサンエンティストならやるのかなと思いました。
(実際にやったらやばいです、犯罪行為なので捕まります。)

叔父の場合は、心臓の弱い姉を助けるためにしたことだとわかりました。
だけど、そんな姉は実の娘に殺されてしまうという皮肉な結末で、なおかつその叔父は自分で作った子供によって殺害されてしまいました。
なんとも滑稽なラストなんだろうと思いました。願ったりかなったりではないのかなとも感じました。

だから主人公と顔のそっくりな第3者がいたり、似たような考えを持ったものがいてもおかしくないことがわかり、またそれを示唆したようなことをチャプターの下のところに書いてあると判明しました。
最初は主人公と関わりのある事件や事故ではないかと考えましたが、叔父のデータ収集でした。

また遺伝子データの中に動画を見せることによって、自分の中に眠っていた殺人衝動の理由を裏付けることになるという、論理的思考を持ち合わせているから頭のいい人は回転率はちょっと違うのではないかと思いました。
遺伝子データに何かのメッセージを組み込むのは、最近の作品だと「水星の魔女」でもありました。あれは感動シーンなので一緒にするのはどうかと思いますが汗

主人公には双子の弟がいて、その弟が亡くなってから、主人公はずっと一人で生きていたい、自分の殺人衝動と生きながら自分の死ぬタイミングをうかがっているような、透明人間になりたいような人間でした。
でも、自分にはたくさんの異母兄弟がいて、なおかつその存在がちらつくことによって、透明になれなかたったのではないかと考えました。
自分とは遠くて、でも近い存在がたくさんいるのであれば、そう思ってしまうことでしょう。

なおかつ、自分のことを好いてくれる存在が、主人公の冷めきった心を溶かすのに十分だったのでしょう。
自分のことを赦してくれる存在は、それだけでいい、と愛を認め認められるような気がして、言葉を見つける意味も意図もなく、自由意思にのっとって「生きる」という選択をしました。
主人公のそんな思いが、本書の最高のラストに締めくくられて、ジーンとほろ苦さも残しつつ、暖かい気持ちにしてくれました。

まとめ

「透明になれなかった僕たちのために」の読書感想はいかがでしたか?
小説ではありますが、中には映画のキャラクターや作品などが書かれ、映画好きとしては、情景が頭に思い浮かび、いい表現だなと思いました!

主人公がいろいろな人と出会い、関わることによって、自分はどう思っているのか、どうしたいのかと心理描写が劇場的ではないが、さざ波のように私たちに語り掛けるような文章でした。
青春とサスペンスが半々に描かれていて、配分がすごいなと感嘆しました。

ずっと生きていることに悩んでいる人たちにおすすめです。
暗い心理描写ですが、それでも前を向いて歩むような気持になります。

最後まで読んでくださってありがとうございました!
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