海幸彦を祀る潮嶽神社は山の中/俳優(わざおき)神話と思い出
さて今日は日本の神話、古事記から海幸山幸についての
お話です。よかったらおつきあいください。
なんでまた?と思われる方もいらっしゃるかもしれませが、
実は数日前からインスタグラムの方で
思い出の宮崎の旅の写真をUpしていまして、
といってもなんともう20年も前だったので
びっくりしたんですが、それをstandfmでお話しましたので
こちらでも記事にしてみました。
日南海岸を南へ
宮崎に友人が移り住んでいまして、彼女を訪ねていきまして
そしたら車でずっと日南海岸を下って
有名どころの青島や鵜戸神宮やライオン岩と連れて行ってくれました。
👇こちらは上のライオンの向かいに偶然みつけた
梅ケ浜の窟祇園神社
石窟などが好きなので、すぐ入ってしまいます。
スサノオノミコト、クシナダヒメノミコト、
本殿入口左右の神様は龍神(八岐大蛇・ヤマタノオロチ)と
水神(ミズハノメノミコト)をお祀りしているそうです。
…と、前置きが長くなりましたが
でも、なんでそっちの方向に出かけることになったかというと、
私が潮嶽神社(うしおだけじんじゃ)に行きたかったからなのです。
弟山幸⇒兄海幸にねだる
潮嶽神社は日南市にありますが、海からは少し離れます。
そこは日本で唯一、海幸山幸の神話でおなじみの
海幸彦が祀られている神社です。
海幸なのに、山の中にある神社です。
皆さんはこのお話、ご存知ですか?
世界各地に似たような神話があるのですが、
これは釣り針型神話などとも言われていてますが。
どんなお話かといいますと…
物語に登場するのは、
兄のホデリとも言われる海幸と
弟のホオリとも言われる山幸
兄弟です。
こちら👇は境内に佇んでいらした海幸彦さん
海幸はその名の通り海で漁をします。
山幸は山で猟をしています。
そしてある日、弟の山幸が
「ねえお兄ちゃん、ちょっと道具を取り換えてみない?」
って言いだしたんです
おにいちゃん海幸は気が進まないから、
「イヤだよ」と言っていたんですけどね、
山幸が「お願いだよ~魚とってみたいし」と
あまりしつこく、と私は思いましたが
本には「熱心に」とありましたが、
そんな風に頼むから、
「じゃあ、ちょっとだけなら」と、
ついに海幸は山幸の言う通りにしてあげました。
ちなみに原文では「さちを変えてみましょうよ」と
山幸彦が言ったと書いてあります。
道具をさち、収穫物もさちといっていたようですね。
だから海幸彦びこ山幸彦ってさちがついているのも
道具を使う者という意味でもあったそうです。
ここには特殊な力、呪力の意味も
含まれているのだと思いますけどね。
漁の結果はどうだったというと、
海幸も山幸も何の獲物もとれず、
兄海幸は、疲れたなあと思って
ただ戻っただけでした。
ところが言い出しっぺの山幸はなんと、
お兄ちゃんの大切な釣り針を
海の中でなくしてしまいました。
海幸の針をなくした山幸
山幸はごめんねと、お兄ちゃんに詫びますが
あの針を返してくれ!とお兄ちゃん。
でも無くしちゃったし…と、弟。
そこで、自分の十束剣(とつかのつるぎ)をつぶして
500の針をつくて渡す山幸でしたが…
自分が大事にしていた針を返して!の一点張りの兄
ちなみにスサノオさんでも十束剣とでてきますが
日本神話に出てくる剣の総称だそうです。
漢字は十で握るの「十握剣」とか「十拳」とか
いろいろみたいですが「つか」とは、
握ったときの人差指から小指までの長さを指します。
なので、「十の握り」の長さと言うことだそうです。
余談ですが。
話を戻しますと、その十束の剣を針にしても
それじゃダメ!といわれた弟は、
さらに千本の針を作ったそうです。
でも、勿論、それも受け取らず許してもらえなかった。
「貸した針、元の針を返してくれ!」と、海幸彦は迫ります。
そりゃそうですよ。
だって、嫌だって言ったのを
むりやりに近いしつこさで借りていっておいて、
「無くした」って、それは納得いかないよ!!!と、
子どもの時にこのお話を読んで思ったわたくしでした。
でも、古事記は山幸の方が主になる神話です。
支配者側で描かれていますから、
許さないお兄ちゃんがひどい感じに展開されます。
‥‥解せない…と、子どもの頃の私は
ここでもそう思っているのでした…。
だって道具、さちって呼ばれるくらいですから
大事な大事なものなんです。
音声配信はこちらです👇
とそれはさておき、
そこで「弟の山幸彦は困って海辺にまで行ってみました」
とお話は続きます。
山幸⇒海神の宮へ
でも、実際は、そこで嘆くだけなのですよね。
するとそこへ塩椎(しおつち)の神が来て
理由を聞き、海神の国に行くことを教えてくれます。
そして、山幸は、海神(わたつみ)の宮にたどり着きます。
でも、そこで針を探す方法聞くはずなんですが、
まずは、美しい豊玉姫(とよたまひめ)に出会い、結婚。
夢のような3年を過ごした…となるのです。
そしてやっとあるとき、
山幸は釣り針のことを思い出して、
急にため息をついたりします。
それをみた豊玉姫は、すぐ魚を集めて捜索に乗り出し、
釣り針を探し出したんです。
いやいや、結局、山幸なにもしてないよね!!!
そして「見つかったから帰るよ」と山幸彦。
え?豊玉姫は?!と、
私は突っ込みたい所だらけでした。
さらに、それを持って帰国する山幸彦に、
海神の神が作戦を授けます。
山幸彦の計略にはまる海幸彦
この針を返す時には後ろ向きになって
お兄ちゃんに帰しなさい、と教えられる山幸彦。
これは呪詛の一種です。
そして、他にも海神から呪文を授けてもらったりして、
ついでに、お兄ちゃんが高い所に田を作ったら
あなたは低い所につくりなさいとか…そんな作戦も…
そうすれば3年のうちに兄は必ず貧しくなって
上手く行かないからと、
山幸彦を恨んで責めてくるだろうから、
その時にこの「塩盈玉(しおみつたま)」を出して
溺れさせなさい、そしてあやまってきたら、
もう一つの「塩乾玉(しおふるたま)」出して
水を引かせて配下にしなさい…と。
ちょっと待ってよ!
お兄ちゃんの海幸彦は、
そもそも何も悪い事してないよね!?と
私は、またまた思ったものでした。
しかし結局、山幸彦はこの通りに針を返します。
でももうこの時点で呪詛された釣り針です。
本来の、魚をつる呪力を消してから
返しているのですよ。
だから田んぼもいるんでしょうね。
そして、計画通り、溺れさせられそうになったお兄ちゃん。
そして海幸彦は俳優となる
その時、海幸彦は言いました。
この後は、自分は山幸彦の守護人になります、そして
山幸彦を祀るために「演じる人になる」と誓うのです。
わざおぎとかわさおさとかわざおきとか
いろいろ呼ぶようですが
今日はわざおぎといっておきます。
そしてこのわざおぎとは俳優と書きます。
この言葉は天宇受売命(あめのうずめのみこと)の時に
先にでてきますが、海幸彦も芸能の祖といっていいのでしょうね。
ちなみに『日本書紀』の天鈿女命(あめのうずめのみこと)バージョンは
彼女がアマテラスを外に出すために踊るあのシーンは
こう書かれています。
この時、反閇(へんばい)といって
足を踏み鳴らす動作などもいれていて
これが神事などにも繋がっていった
ウキウキする私の好きなお話は、
いつかお話したい所ですが
また脱線したので、話を戻します。
ともあれそんなことで、
海幸彦は弟の家来になると約束したわけです。
そして、その約束を忘れないために、
毎年、弟の前で、
水に溺れて苦しむさまを演じてみせることになった
そうなのです。
まあ、なんてこと!とちょっと思ったりしたのですが
この是非はともかくとして
この海幸彦の溺れた様子が、
1300年の時を超えて「隼人舞」となり
今に継がれているそうなのです。
このお話は、大和王朝に属さない九州南部のひとたち隼人族が、
大和朝廷に服属したことを意味するとか、
黒潮系の南方族との交流を意味する、という説もあるそうです。
そして、なぜ、山側に海幸彦の神社かというと…
やっとこのお話にたどり着きましたが、
海幸が満潮に乗り磐船(頑丈な船)にのって
流れ着いた場所だから、ということだそうです。
階段を上って森の中にある感じ‥‥海のイメージはない神社です
潮嶽神社の公式ページはこちらです
俳優の民に参拝
そして、ご存じの方も多いでしょうが
弟、山幸彦は、海にいる間に
豊玉姫に子を宿らせていたので、
出産には鵜戸神宮でのお話など、いろいろまだ続きます。
結局その子が草葺不合命(うがやふきあえずのみこと)であり
さらにその息子が初代天皇である神武さんという風に繋がるので
朝廷側がまとめたお話ということになります。
いつも勝った側の言い分のお話しか残っていないので
たったひとつでも残っている、この神社に行きたいな、
お兄ちゃん、災難だったよねと手をあわせたいな、と思って
訪ねたの潮嶽神社でした。
そして、私のまわりにはわざおぎの民が
縁があってたくさんいらっしゃって
私も趣味ですけど芸道をかじるっているのもありまして
俳優である海幸彦さんも詣でてみたかった
というのもあります。
この点では、海幸彦もですが、
天鈿女命を祀っている高千穂も大好きです。
特に荒立神社は有名ですが。
またそのうち今度は
天鈿女命が祀られている所についても
お話もできたらいいなと思っています。
ということで今日は思い出の旅
日本で唯一、海幸彦をまつる
潮嶽神社(うしおだけじんじゃ)
にまつわるお話でした。
今日も最後までお付き合いいただきありがとうございました
また感想など、コメントやレターでお寄せいただければ嬉しいです。