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空き地がなくなった
小学校のころ、大きな空き地があった。フェンスに囲まれてはいれなかったけれど、回り道をしてその空き地を眺めながら帰るのが好きだった。
しばらくすると私の背の何倍もある看板がつけられて、背伸びをしても中の様子を見ることができなくなった。
またしばらくたつと、そこはあの地震で被災した人の一次施設になった。それもしばらくすると撤去されて、コンクリートで固めた公園と、老人ホームができた。
元空き地のすぐ近くに、最近また空き地ができた。もともとは銭湯だった。広い駐車場の古くなったコンクリートに時々カタバミが顔をのぞかせていた。
店の主人が死んだ途端に空き地になって、うるさい機械があっというまに5階建てのマンションを建てた。
中学校たまり場にしていた古いゲームセンターがあった。クレーンゲームにはもう長いこと最新の玩具は設置されず、リズムゲーム用の太鼓のばちは何年か前の先輩が引きちぎってしまったのがそのままになっている。
数年前に、そこは大きなショッピングセンターとともに撤去され、空き地になった。空き地になってすぐは夜な夜な先輩がフェンスの中に入って警察沙汰になっていたが、最近はまたあのうるさい機械が空き地の中を占拠してなにやらものをつくっている。詳しく看板をみると、一階にショッピングモールを併設する超高層マンションができるらしい。
私たちの地域から空き地がどんどんなくなる。障害物が何もない空間は公園では生み出すことのできない興味や安寧を私たちに与えてくれた。
その空き地には鉄とコンクリートと硝子で固められた四角い彫像が建ち、新しくきたよそ者が3人ずつくらいで狭い空間に放り込まれる。
その空間は「都会の忙しさを感じさせない憩いの場所」で、死んだ顔をした若者が老人のように背中を曲げて門をくぐっていく。膝を曲げなければ入ることすらできない。
どんどん空き地がなくなってゆく。カタバミはショベルカーで粉々にされた。