結局はないものねだり 小話
生まれ変わったら、何になりたいと願うか?私は鳥になりたい。翼を持ち、悠々と空を飛ぶ鳥になりたいと思っていた。
地上にいるときは上品にたたまれている羽を、飛び立つときには大きく開いて風に乗っていく。
人の知らない空からの水平線を、鳥たちは見る。私たち人間は、重い金属と石油を使わなければ、彼らと同じ目線に立つことはできない。目線が同じでも、その時に流れる空気や温度はわからない。分厚いガラスがないと私たちは空中で息すらできないから。
翼をもし持てたとしたら、どんな気分だろう。飛び方は自然と身につくのだろうか。人間の赤ん坊がだんだんと歩く術を身に着けるように、何度も何度も挑戦をして、途方もなく遠くて広い上空へ、自由を目指して飛んで行くのか。
空を飛んでいる鳥たちの羽が空に溶けていく様は美しく、羨ましいと思う。
人間として表現できるものに限界が見えたとき、きっと私は自由に動く手と腕を取って、翼を手に入れる。
グロテスクな腹を地上にいる生き物にさらしながらも、自由に空中で呼吸を楽しむだろう。
まだまだ、人間であることを手放すことはできないけれど。