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魔法チューダー朝のディーン  一話完結SS置き場

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140字ショートストーリーまとめ

【カンタベリ大主教ヨナタン・フラメル】安宿のカウンターに2シリングを置いて、赤紫の聖職服を着た少年のような男が微笑む。「ごきげんよう、用意は出来ているか?」店主は奥の部屋を指さし、硬貨を受け取ろうとする手を杭を打つ様にナイフで突き刺す。「あんたの商品に用はない。貰うのはアンタの首だ」

【2】敵をひも付きで泳がせることも大事だが、”ハワードの姫様”に刺客を送った相手は別だ。ヨナタン・フラメルは血で

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ロンドン塔の密会

 ロンドン塔の光の当たる場所には、造幣局と魔術師たちのいる天文台や研究室がある。ここはオクスフォードにもケンブリッジにも負けない研究者が集うと言うのだが、ここに勤めたがる魔術師は大学の共同生活を嫌って逃げてきた自由人か放蕩者すれすれの者たちばかりだ。ふつうの神経では、ロンドン塔に寝泊まりしたいとは思わないものらしい。

 ロンドン塔の光の当たらない場所、それはあの悪名高い門をくぐって入る反逆者たち

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ハンプトンコートの朝

 宮廷魔術師ディーン・ハワードは侍者を持たないが、代わりに沢山のおぞましい魔物の使い魔たちと暮らしている。かつては肉を裂き血をすする魔物と恐れられた彼らは、早朝の日課を欠かさない。寝惚けている魔術師を完璧に装わせることだ。

 魔物たちが人間の侍者の真似事をするのは、全ての仕事が終わった後に褒美として貰える蜂蜜のタルトの為だと、この奇妙な光景を目にした宮内官は青ざめながら言う。

 魔物たちはタル

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