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#132 【英語史クイズ】パーカー、セーター、トレーナー、ジャージのうち、和製英語はどれ?

急に寒くなり、慌てて冬用の服を取り出したが、実は冬用の服に関して、名前の由来を知らないことも多い。今回は服に関するクイズを考えてみた。

問題

次のうち、ナイターのように和製英語で、実は英語ではないものはどれ?
(a) パーカー
(b) セーター
(c) トレーナー
(d) ジャージ

問題のねらい

案外、英語を習いたての頃に感じた疑問は割と後に尾を引く。筆者の場合は、高校生の時など、特に汗に関するものが不思議だった。ポカリスウェットやスウェットまたはセーター。なぜ汗が?と思って調べたことを思い出す。当時はインターネットがなかったので、調べるのに辞書を複数引いたりして一つ調べるのも、結構時間がかかった(しみじみ)。

解説

(a) パーカー
英語で表すとparka
. 語尾が-erではないのは、イヌイットの服に由来するからだと考えられる。

◆□Aleut.  $${\textit{parka}}$$ skin jacket □ Russ. $${\textit{parka}}$$ pelt of reindeer ← Uralic (Samoyed).

研究社「英語語源辞典」"parka" (p.1032)

上記のように、英語語源辞典こと、KDEE ではアリューシャン列島で使われていた言葉からの借入語とされている。1780年ごろから使用されているようだ。

reindeerの表記から分かる通り、トナカイやアザラシの皮から作ったフード付きの民族衣装がその由来だろう。Wikipediaでは、もともとは「動物の皮」の意味だったと説明されている。

以上、(a)parkaは和製英語ではない。

(b) セーター
英語で表すとsweater。冒頭にも書いた通り、スウェットと並んで、服の名称に「汗」が含まれているのはなぜかと疑問が浮かぶ。

sweater n. 1 (a1529) 汗を流して働く人。2 (1882) セーター、⇨-ER¹. ◇語義2は本来汗を出して減量するために着用したもの.

研究社「英語語源辞典」"sweater" (p.1389) 太字は筆者

さすが、KDEE、しっかりとその疑問にも答えてくれる(高校生当時はKDEEはなかった。ありがたい辞書である)。「汗を出して減量する」ためとの表記があるが、etymonlineではもう少し詳しく出ている。

As "woolen vest or jersey," by 1882, originally worn by rowers in training, from earlier sweaters "clothes worn (by a man or horse) to produce sweating and reduce weight" (1828), plural agent noun from sweat (v.). (それ以前のsweat(v.)の複数形行為者名詞であるsweaters「発汗を促し体重を減らすために(人や馬が)着用する衣服」(1828年)から、もともとはボートの漕ぎ手のトレーニング用に着用されていた「ウールのベストやジャージ」としての意味が1882年までに出現。)

Etymonline "sweater" https://www.etymonline.com/search?q=sweater

以上、(b)sweaterも和製英語ではなく、しっかりと英語である。

(c) トレーナー
デジタル大辞林によれば、「3 運動選手がからだを冷やさないために着る、練習用の上着。スエットシャツ。[補説]3は日本語での用法。」となっており、和製英語である。よって、これが答えとなる

日本語版Wikipediaのスウェットの項で和製英語との説明があるが、やはり、「汗」という言葉に抵抗があり、トレーナーと言い換えられたようだ(wikipediaの参照先は404になっているが、internet archiveでは見ることが可能。ただし、信憑性は不明)。

(d) ジャージ
英語で書くと、Jerseyだが、もともとはイギリス海峡のジャージー諸島で着られていた服に由来し、現在では生地の名前としても用いられている。KDEEによると、19世紀中盤から服の種類としてJerseyは使用されている

よって(d) jerseyも和製英語ではない。

まとめ

個人的には、パーカーとセーターが好きだが、NordicなFisherman'sを特に好んでいる。由来を知ってからは、セーターを着るたびに、昔これで減量をしていた人がいたのかと感慨深いが、汗をかくとかなり重くなったのではないかとか、いろいろと感じることがある。

今回の答えとしては、トレーナーが和製英語ということで(c)が答えだが、他の語も18世紀から19世紀にかけて現れている。それ以前は何を着ていたのだろうかと新たな疑問が浮かぶが、それはまた服飾史を調べないとわからない。とにかく、人に歴史あり、服の名称にも歴史あり、である。今後も身近な英語をさぐっていきたい。

今日はこんなところです。


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