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いろんな単語の語源や気になることを書いています。辞書のその日のWord of the …

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いろんな単語の語源や気になることを書いています。辞書のその日のWord of the Dayで出てきたことも。それ以外は、本やアプリのことなど。好きな食べ物は、ティラミス(関係ない。ちなみにTiramisuはイタリア語由来ですが、単複同形の単語)。

最近の記事

#101 Ticketと同じルーツをもつ、あの語とは?(その2)

前回のあらすじ ticketとetiquetteは、綴りと意味が異なるけれども、stickの印欧祖語*steig- "to stick"から派生したフランス語に由来する。なぜ同じ語に由来するこの2語はこんなに綴りと意味が異なってしまったのかの謎に迫りたい。 乗車券としてのticketの歴史 OEDを検索したら、ticketは無料で見れる単語だったので、train ticketが何年ぐらいから使われてきたのか見てみる。すると、6.b.に掲載されており、concert ti

    • #100 Ticketと同じルーツをもつ、あの語とは?(その1)

      ビートルズの「涙の乗車券」という曲がある。原題はTicket to Rideで、アルバムHelp!に収められている。初めてその曲を聴いたのは、確か中学生の頃で、なぜタイトルが「涙の乗車券」なのかなと不思議に思っていた。Wikipediaを見ると、rideにはさまざまな含みをもたせていたようだ。 Ticketの二重語 で、このticketという単語、同じルーツをもつ、日本語を話す人でも誰もが結構知っているあの単語と二重語である。二重語はこのブログでもたびたび取り上げてきてい

      • #99 先生、なぜ庭はyardとgardenがあるのですか?問題(その2)

        前回までのあらすじ yardとgardenは二重語との示唆を得る筆者。しかし、yとgと文字が全然違うのに、yardとgardenがもとは同じ語ってホントですか問題が新たに発生。その問いに立ち向かう。 yardとgardenはどう違うのか 前回では、もともとは同じ語だったが、yardは古英語から使われていて、gardenはフランス語から別の形で入ってきたことを示した。 まずは、yardとgardenの使い分けを簡単に見てみたい。gardenは13世紀後半ぐらい使われ出し

        • #98 先生、なぜ庭はyardとgardenがあるのですか?問題(その1)

          英語史好きを公言していると、たまに質問をいただく時がある。簡単に答えられることなら問題ないが、なかなかに英語史的にheavyな問いもある。 その1つが「庭ってどうして、yardとgardenがあるのですか?」だろう。どう答えるべきか難しい問いだといえる。今回はこれについて説明したい。 時代を遡る まずG6こと、Genius第6版をみてみる。yardは「原義:囲われた土地, 庭」と書いてあり、gardenは「原義:囲い地」と書いてある。既にやばい匂いが立ち込めているのは言

        #101 Ticketと同じルーツをもつ、あの語とは?(その2)

        • #100 Ticketと同じルーツをもつ、あの語とは?(その1)

        • #99 先生、なぜ庭はyardとgardenがあるのですか?問題(その2)

        • #98 先生、なぜ庭はyardとgardenがあるのですか?問題(その1)

          #97 バタフライ問題に迫る(その2)

          前回のあらすじ バタフライのバタとは、butterを指す。しかし、なかなか蝶とバターは結びつかない。そこには魔女が絡むと言う。なぜ? バター沼 というわけで調べ始めたのだが、思った以上にバター作りは沼だった。昔から人々にとって、バター作りは重要な家事だったといっても過言ではない。しかし、このバター作りは、実は難しい。バター作りのまずこのサイトを見てみる。 自由研究になるぐらい、バター作りはさまざまなものに左右される。まずは温度。温度が適切でないと乳脂肪が固まりにくくな

          #97 バタフライ問題に迫る(その2)

          #96 バタフライ問題に迫る(その1)

          「いやー、バタ難しいわ」「足と手が合わないよねー」 などの会話がプール脇で行われていても、特に不思議には思わない方も多いと思われるが、語源中こと、いわゆる語源中毒者にとってはそうとは限らない。バタとは何かという、いわゆるバタフライ問題が発生するからである! バタフライ問題とは そう、皆知っているが、水泳のバタフライとは英語のButterflyから来ている。「ああ、チョウですね」と考えるのは超フツーの人である(dad joke!)。 これが、語源中ともなると、ん?Butt

          #96 バタフライ問題に迫る(その1)

          #95 merryの意味変遷について

          先日、magazineの意味の変遷についての記事を読んだ。アラビア語に由来するこの語の原義は「倉庫」だったのだが、18世紀に「雑誌」、そして19世紀には「弾倉」の意味を持つようになった。倉庫から雑誌の意味に変化するのは、結構不思議だが、これは一つには初期の雑誌の名前がGentleman's magazine、つまり「紳士の倉庫」というもので、内容がガジェットまたは情報の「倉庫」だったからと言われている。 merryの由来 magazineと同じように、その原義から意味が大

          #95 merryの意味変遷について

          #94 Taffety Tarts(タフタタルト)問題について(その2)

          タフタタルトの後日譚 #93でお伝えしたタフタタルトだが、実はOEDの掲載が2018年である。伝統的なお菓子の割には、エントリされたのが最近なので不思議だと思っていたところ、その謎が解決した。 Word Stories OEDにはWord of the Day以外にいくつかコラムがあり、その1つがWord Storiesである。一見World Storiesと空目しそうだが、そうではない。このWord Storiesの説明の最初の単語がなんと、Taffety Tarts

          #94 Taffety Tarts(タフタタルト)問題について(その2)

          #93 Taffety Tarts(タフタタルト)問題について(その1)

          タフタタルト 先日のOEDのWord of the Day(August 24)は、Taffety tartsだった(今回は、Facebookに書いた記事に加筆修正)。 このtaffety tartという伝統的なリンゴタルトは、示されたOEDの定義では、「薄いパイ生地の中にリンゴや(あまり一般的ではないが)他の果物のスライスを詰めた甘いタルト」と書いてある。 apple pie好きな方々にはたまらない、このタルト。ちなみにtaffety tartで検索してもなかなか出て

          #93 Taffety Tarts(タフタタルト)問題について(その1)

          #92 toponymの続きの謎に迫る

          昨日時間がなくて書けなかったが、toponymの続き。前回の記事は何気なく書いたので、mozhi gengoさんに取り上げていただき、びっくりした。ありがたい話だ。 滲出とは で、toponymこと地名由来の単語は、「滲出」が起こりやすい。滲出とは、ざっくり言うと、単語の一部が新しい意味をもつことをいう。堀田先生のVoicy#1085にある通り、例えばburgerは、hamburgerの一部であったburgerがburg「砦」→「町」の意味から離れ、食べ物の「バーガー」と

          #92 toponymの続きの謎に迫る

          #91 初期近代英語の特徴とは!? 「第5章」を読む。

          辺見、他(2018)の「英語教師のための英語史」第5章は「初期近代英語」についてである。実は、toponymsの話を書こうと思っていたが、ちょっと書く時間がとれそうにないので、以前書いておいた第5章を掲載する。 初期近代英語は1500年から1700年の英語を指す。この章については家入先生が執筆されている。家入先生も言及されているが、大航海時代とルネサンスが関わり、さらに大きな変化が生じた時代だと言える。 1 語彙と綴り字、発音 まずは、初期近代英語の特徴である。端的にい

          #91 初期近代英語の特徴とは!? 「第5章」を読む。

          #90 地名に由来するが、その由来を知られていない英単語の謎

          久しぶりのWord of the day. ちょっと古いが、MWの8/31の今日の一言は、Byzantineだった。 Byzantineは、複雑で秘密裏、かつ理解し難いことを指す。Genius第6版では「権謀術数の」との定義が書いてあるが、実はこの単語、知る人は知るで、東テーマ帝国のことを意味する。 地名が元になった英単語 上記のByzantineのように、地名(国名等)に由来する英単語は、実は多い。昔、高校生のときによく着ていたダッフルコートのDuffleも、もとも

          #90 地名に由来するが、その由来を知られていない英単語の謎

          #89 まだあるイタリア語関連(あるいは誕プレはどうするか問題)

          イタリア語ネタでどこまで引っ張るのか・・・という声が聞こえそうだが、これで最後。今日の投稿はかなりDad jokeに過ぎるとお叱りの声も聞こえそうなので、真面目な方は静かにブラウザをそっと閉じていただければこれ幸い、である。 誕プレのことを思いついた経緯 いつもの通り退勤時間が近づき、筆者がソワソワしていると、同僚はもっとソワソワしていた。そして、おもむろに「今日は早く帰ります」との宣言が同僚が出された。いつも退社が遅めの同僚のその発言に少々驚いたが、よく聞くと家族の誕生

          #89 まだあるイタリア語関連(あるいは誕プレはどうするか問題)

          #88 deerは数えられるのか問題について

          電車に乗っている時に、bambi問題(クリック)について話していたら、知り合いから、「そういえば、deerって数えられるのに複数形がないってどういうことですかね?」と尋ねられた。頭の中で、どの説明からいくかさんざん迷った末に「そもそも動物は、deer→beast→animalと変化してきたんですよね。」となぜか英語史の話を始めてしまい、なぜdeerが数えられないように見えるのかを話す前に、違う話になってしまった! 痛恨の極みである。なので、今回は、しっかりとその問題について向

          #88 deerは数えられるのか問題について

          #87 そこにiはあるか問題について

          なぜか気づけば8月ももう終わりである。8月はだいぶ仕事が不規則で、これまでのように毎日更新ができなかった(という言い訳でサボっていた)。9月からはいつもの生活に戻るので、できればまた日々更新の生活に戻りたい。 さて先週末、博多にいた。なぜか予定と異なり、超多忙な週となってしまっていたが、急いで博多に行き、急いで資料を作成し、急いで発表した。が、なぜか時間をオーバーし(大汗)、たくさんの面白い方々とお会いして、そして帰ってきた。やっほー!という感じである。 で、今回残った課

          #87 そこにiはあるか問題について

          #86 暦のナゾに迫る(その3)。「クリスマスイブ」はなぜ前夜を指すのか問題を考える。

          暦のナゾシリーズ第1段(クリック)、第2段(クリック)ときて、第3段は、最後の2つの疑問に答える。 ・なぜ、暦をカレンダーと呼ぶのか。 ・なぜ、クリスマス「イブ」は前日の夜なのに、クリスマスの「夕べ = evening」なのか。 なぜ、暦をカレンダーと呼ぶのか。 英語語源辞典こと、KDEEにも示されている通り、calendは印欧祖語*kelh₁- to shoutに由来する。Wikitionaryから引用する。 ラテン語にあるように、カレンダーは勘定帳を意味する。KDE

          #86 暦のナゾに迫る(その3)。「クリスマスイブ」はなぜ前夜を指すのか問題を考える。