#106 cashとbankはイタリア語から? bankの元となった机をみる。
前回までののあらすじ
スーパーのレジで、cashierの綴りに驚く筆者。なぜそこにアイがあるのか!? なぜ貯金箱はブタさんなのか? 謎に迫る!!(一部、前回とまったく関係ない疑問が含まれています。)
cashの語源
cashの語源は貯金箱からきている。英語語源辞典こと、KDEEでみると、「◆□F †casse "money box" // It. cassa box < L capsam "case"」と示されている。やはりフランス語かイタリア語のどちらかが語源となっているようだ。しかもラテン語をみるとcaseとなっており、端的にいえば「箱」が語源となるようだ。つまり、もともとは箱の意味だったのが、その箱に入っているお金を表すようになった。広い意味での換喩こと、メトニミーである。入っている肉や野菜を食べるのに、「今日は鍋食べよう!」の「鍋」と同じ使い方と言える。
このcashとつながりが深い語としては、cassetteやcapsuleなどがあり、興味深い。昔、cassette tape全盛のとき、cassette caseなる語もあった。よく考えれば、これは箱箱であり、マトリョーシカを彷彿とさせる。
イタリア語との関連とは?
前回も書いたが、KDEEのcashの説明の中に「◇金銭に関する多くの語がIt.経由であることに注意(cf. BANK², BANKRUPT)」と書かれている。イタリア語由来なのはなぜか考える。これ、答えは簡単で、銀行や金融の発達にイタリアが関係しているからである。具体的にはベルギー国立銀行博物館のサイトを見ていただきたい。
上記サイトを見ると、以下の興味深いことが書かれている。
◯ 両替商はイタリアのロンバルディア出身者が多く、彼らはヨーロッパ初の銀行家とみなすことができる
◯ 両替商は盗難対策がなされた「バンコ(上の画像にあるイタリア語の木製のベンチまたはテーブル)」を使っていた(注:この机がbankの語源とされている。上記サイトには、もっと見やすい画像があるので、ぜひ。なお、bankはbenchのdoubletとなる(cf. Wiktionary ))
◯ 両替商が不正を働いたり、失敗したりすると、商売を再開できないようにテーブルが粉々に砕かれて、「バンコ ロット(壊れたテーブル)」という表現が使われた(注:bankruptの語源とされているが、KDEEには注釈がある。諸説あり、である。)
メディチ家
中世におけるヨーロッパの金融については、メディチ家の影響も否めない。これは以下の世界史のサイトでも触れられている。メディチといえば、フィレンチェ、イタリアである。多くの金融系の語が歴史の経緯から考えると、イタリア語が元となるのは、ある意味当然かと考えられる。
まとめ
英語語源辞典こと、KDEEでは、cashの現金の意味は1596年、bankの銀行の意味は1622年からとされている。メディチ家の銀行も15世紀からとされており、そういう意味では、やはり金融系の語はイタリア語の影響がかなりあったと考えるべきなのだろう。KDEEはきっとそのことまで踏まえて、「金銭に関する多くの語がイタリア語経由であることに注意」という文言を入れていたと推察される。いやはや、そんなことまで辞書の中で触れていることに驚愕である。まさに、少年老い易く、学成り難しとはこのことだと感じた瞬間だった。
今日はこんなところです。おっと、ブタさん貯金箱問題が残っている?(つまり、続く!?)
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