#144 英国の伝統「Wassail」について
たまには、クイズ以外の記事も。
忘年会シーズンともなると、「乾杯!」の声をよく聞くが、古英語での乾杯、"Ƿes hāl!"(ウェスハー!)を声高らかに発する団体もあると聞く。なお、最初の文字ǷはWynnと呼ばれる文字で、現在のWに当たる。
この"Ƿes hāl!"と関連深いのが、イギリスのCarolの1つに数えられるWassailである。今年は特に、下のGloucestershire Wassail | The Longest Johnsを何度も流して聞いている。聞いてて、楽しくなる歌だ(キャプチャ絵がすでに楽しそうだ)。
Wassailの意味等については、堀田先生の記事に詳しいので、参照したい。
OEDに!?
ただ、このWassail「健康に!」だが、元来は2語だったのが1語になったものと考えられる。そして今、なぜかOEDではサブスクなしで名詞も動詞も見ることが可能だ。クリスマスプレゼント?と妙なことを考えてしまう。
早速読み込んでみる。名詞には用法が5つ(うち2つがobsolete=死語)、動詞には用法が2つある。
意味の変遷をみてみると、間投詞的意味を端に、クリスマスや12夜で楽しむ飲み物であるスパイシーなワインやエールへと広がり、さらには大騒ぎする飲み会を意味するようになっている。Keep wassailで「大騒ぎ」の意を、シェイクスピアも使用したとされる。
なお、このことに関連して、十二夜にりんごの木にお酒もしくは酒に浸したトーストを捧げる行事もまたWassailingという名で伝わっている。
Wassailingについては詳しくは、英語版Wikipediaで様子を伺い知ることができる。今回、その下にリンクを貼ったサイトも参考になる、というか、純粋に読んでいて楽しい。さらに、作者の安田さんのブログも、お菓子がたくさん載っていて、楽しい(もはやWassailing、関係なし!?)
まとめ
年末が近づくと、仕事も落ち着き、人々は会話や飲食に楽しみを見出す。Wassailもその1つであり、「乾杯」という言葉が、人々の楽しむ様子を描写する鏡となり、少しずつ意味が移り変わっていった様子が伺える。
言語的には、wesan 系列の be 動詞の命令形が生き残っている貴重な言葉だ。伝統や文化を慈しみながら、Wassail! Drinkhail!と、楽しい時間を過ごしたい。
今日はこんなところです。