#179 【英語史クイズ】 Everest, first, next, worstの中で最上級と関係ないものは?
問題レベル★★☆☆☆(初級レベル)
最上級を表すのに、形容詞や副詞に-(e)stをつけると中学生の時に習ったのを覚えている。さて、今回は、そんな最上級に関するクイズである。
問題
最上級には-(e)stをつけるとされる。次の単語の中で最上級とは関係ないものは?
(a) Everest(山名)
(b) first
(c) next
(d) worst
問題のねらい
最上級については、高校生になると語彙が広がり、primaやmaximumなど、他の接尾辞で終わる最上級もあると学んだが、他の言語からの借入とは習わなかった。primeもまた、印欧祖語*per- "forward"由来の*preis- "before"の最上級とされている。
解答
(a) Everest
Mt. Everestは世界最高峰の山なので、最上級!?と思うかもしれないが、なんと人名由来のeponym(冠名語)である。つまり、カーディガンやサンドイッチと同じように人の名前に由来している。というわけで、この単語は最上級には関係しないので、これが答えとなる。
Everestの名は、英国の19世紀の測量と地理の専門家であったGeorge Everest氏に由来する。現地の名前を採用するのが通例だったが、山の呼び名が複数あったことなどがあり、測量総監の前任者だったEverest氏にちなんだ名前が名付けられた。
なお、Wikipediaの英語版には、Everest氏自体はその名付けに反対していたとされる。また、George Everest氏の姓はカタカナで書くと「イーベレスト」と発音が異なることが記されている。Everestは、ノルマン系の姓であるDevereuxに由来するとされる。
(b) first
KDEEでは、古英語 fore "before" の最上級 fyr(e)st 由来とされる。古英語の頃には、fyr(e)st の類義語が、forma, fyrmestと複数あった。以上のことから、firstは(あまり気づかれないが)最上級である。なお、古英語formaと、ラテン語primusは対応関係である。
(c) next
古英語では「一番近くの(に)」という意味だった。nēahの最上級とされる。ちなみにnēahの比較級は、nearとされている一方で、比較級のnearが形容詞原形として捉えられ、nearerとされる例がある。が、それは堀田先生のhellogの#209に掲載されている。
というわけで、nextも最上級である。
(d) worst
これは誰もがbadの最上級と知っているが、もとの原形は何?と聞かれると困るかもしれないので選択肢に加えてみた。また、worseも-erになっていないが比較級であることも気になる。
このworstとworseが遡るとされる印欧祖語は*wers-"to confuse, mix up"で、worstはその最上級とされる。古英語の頃には既にwierrestaと最上級で入ったが、原形は英語に入っていないのかもしれない(まだ調べが浅くてよくわからない)。ちなみに、印欧祖語*wers-には、単語war「戦争」も遡るとされている。
まとめ
ちょっと紛らわしい最上級の語尾-(e)stについて出題した。Everestは最上級と何か関係あるかもと自分でも思っていたが、人名由来と知った時はびっくりした。
あと、数字シリーズとして、firstは実は最上級であることを押さえておきたい。
短いですが、今日はこんなところです。