麻婆豆腐ラヴ
麻婆豆腐が好きだ。
特別辛党というわけではない。しかし「その気になればどこまでも辛くできる」料理が好きなようで、この麻婆豆腐も、中華を食べる時は相当な確率で注文している一品である。
カレーも好きということを考えると、どうやらご飯にかけられるドロドロ系が好きらしい。ただし私の唾液に含まれるアミラーゼは相当濃いらしく、片栗粉で作られる麻婆豆腐のドロドロをあっという間にサラサラにしてしまう。食事の際は小皿に専用のスプーンで取り分けるなど、注意が必要である。
しかしそれでもなお、私の麻婆豆腐に対する愛は揺るがない。それは英語で言うならeverlasting、そう、永遠である。
私がどれぐらい麻婆豆腐のことを好きかというと、もしも私がギターウルフなら「麻婆豆腐ラヴ」という曲という曲を書き上げたいほどである。
というか、少し書いてみた。
[リフ]A - G - C - D
（※ギターのコードで豆腐の四角さを再現）
四川の悪魔が俺の舌を焼く
辛味がなければラー油を足すのさ
丸美屋！ クックドゥ！ ×2
麻婆豆腐LOVE
しかし、そんな丸美屋やクックドゥが販売する「麻婆豆腐」の素は一様に2人前以上である。以前は1人前の、レトルトのやつもあって、ダイソーでそれを買い溜めしていたりもしたが、いつの間にか終売してしまったらしい。
今振り返ると悪くないビジュアル。
単純に食べるだけならお店で食べたり、あるいはコンビニで買ってしまう方法もあるが、出先とかならまだしも、せっかく家で作れるというのに作らないというのもなんだか物足りない。「豆腐を入れれば電子レンジで作れる」系も基本的には同じだ。
どうやら私は「家麻婆豆腐」が食べたいらしい。しかしどうすればいいものか…
そんなとき、俺の中の豆腐が
「ないのなら、作ってしまえばいい」
と囁いた。
家で一から作ること自体は実はそこまで難しいことではない。しかし材料にネックがある。某ックパッドのレシピによれば、豆板醤、紹興酒に甜麺醤、オイスターソース… 家ではどれも使っておらず、食習慣的に麻婆豆腐以外にはまず使わないだろう調味料ばかりである。一度使ったとしても二度とは使われず、最終的に調味料を腐らせてしまいそうな気がする。
かと言って、家にある有り物で作るには、あまりにも麻婆豆腐ではなさすぎる。ともすれば「肉豆腐のラー油がけ」で終わってもおかしくない勢いだ（それはそれで美味そうではあるが）。エバラのウェブサイトで「『黄金の味』を使えば麻婆豆腐が作れる」という話も聞いていたが、それも豆板醤が必要となってくる。最低限豆板醤を使わないと、中華風の味わいは期待できなさそうだ…。
あれこれ考えを巡らせているうちに、だんだん面倒くさくもなってきた。
私はそのレシピを大幅に簡略化し、「冷奴の黄金の味＆ラー油がけ」というアレンジ料理は開発したものの、そんなものは麻婆豆腐でないことは明々白々である。
募る想いも叶わぬと知ると、だんだんと気持ちは薄れていく。途中入院も挟み、いつからか私は「麻婆豆腐は買ってくるもの」と、心のどこかで諦め始めていた…。
そんな日々を過ごしていたある日のこと。
私はまた豆腐そぼろを作ろうと木綿豆腐を買ってきたら、家族が肉そぼろを作ってしまっていた。
予定が（豆腐だけに）崩れてしまったのは残念だが、そういうことはある。素直に肉そぼろのお相伴に預かろうと豆腐を冷蔵庫にしまおうとしたとき、突然、
そうだ 麻婆豆腐、作ろう。
と私は思った。どうして突然そう思ったのか、理由はわからない。わからないが、今考えるとよほど麻婆豆腐に飢えていたのかもしれない。
エバラのウェブサイトもすぐに思い出した。少し前までは億劫がっていたのに、私はレシピを確認するとすぐに自転車に飛び乗り、豆板醤を買うためにスーパーへと向かって行った。
そして、レシピに書いてある2人前の分量を半分にし、ひき肉の代わりに肉そぼろを使用。そして出来上がったものがこちらである。
火を止めた瞬間、私は思わず快哉の声をあげた。ビジュアルは完璧すぎるほどの本格派。少し濃いめだが一つの料理として「仕上がった」味付け、さらに肉そぼろについた和ダシがこの麻婆豆腐をさらに奥深い味に仕立て上げている。
すべてが完璧だった、そして、自分としては新たな料理のレパートリーが加わった瞬間でもあった…
が、後日また作ってみたとき、
（…黄金の味だな）
という味になってしまった。今回は味付きのそぼろではなく切り落としをミンチにして作ったのだが、どうやらそれが「黄金の味」の存在感を強めてしまったらしい。あの成功は幻だったのか…。
少し和風になってしまうかもしれないが、今度作る時は麺つゆも足してみようか… ここまで凝るのなら焼き肉のタレではなく甜麺醤ぐらい買っても良い気もしたが（紹興酒は料理酒で代用）、もう少し粘ってみようかと考えている。
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