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大学生がお店を運営した思い出【学生団体】
大学2回生の頃、私は人生の袋小路にいた(気分だった、と記憶している)
なんであんなにクサクサとしていたのか今では思い出せないが、恋愛や友人関係であまりうまくいってなかったような気がする。とにかく大学で居場所のない、疎外感を感じていた。
あまりにも悲壮感漂う私に、高校の同級生が「面白い店がある」と紹介してくれた場所があった。
それは私たちの住む街の繁華街の、路地裏、一人では絶対に訪れないようなビルの4階にあった。
ドアを開けると暗がりの店内にバーカウンター、カウンターの中には、店に似つかわしくないような天真爛漫な女性と、渋い髭を蓄えた男性。彼女がアルバイトで、彼がマスターだと思った。
友人が私を紹介する。聞いて驚いた。この店は大学生だけで運営しているお店だというのだ。え、おじさん、大学生なんですか?(彼は見た目が渋いだけで、年齢は1つ上なだけだった)
近隣の様々な大学メンバーで集まり、学生活動を支援してくださるスポンサーを募り学生だけで、学生が集まれるお店を経営する。社会実験を兼ねた学生団体だった。
料理、酒、店舗デザイン、企画。自分たちの強みや好きを活かして、お店で自己実現を図りながら、社会からお金を頂戴する。私は話を聞きながら、魅了されていた。
しかし、自分は特にやりたいこともなく、特技もない。そんな私にも前述の渋い先輩は声をかけてくれた。
「やりたいなら、いいから、やってみなよ。何か見つけることに、この場所を使ってくれればいいよ」
そうして私は、この学生団体に所属することになった。
お店はCafe&Barという体裁をとられていた。これは、Cafeを運営したいスタッフと、Barを運営したいスタッフがどちらもいたからだ。
私はそこで初めて、オムライスを作りながら、マルガリータをシェイクする体験をした。料理もカクテルも、私には初体験だった。
お店には様々なお客様が訪れた。もともと、大学生が大学を越えて集まる場所というのがテーマなこともあり、様々な大学生、それに、繁華街の住人や顔役。私たちの活動を応援してくれる社会人の姿もあった。
何も得意なことはないが、時間だけはたっぷりある。私は毎日のように店のカウンターに立ちながら、来店者との会話を楽しんだ。
来店者同士の喧嘩、ベロベロのお客様、旅行でふらりと訪れた海外旅行客、毎日色んな人が訪れた。スタッフ同士での意見の相違による修羅場も何度もあった。
あんなに貴重な経験はなかったと今では思う。学生の未熟な経験ながら、原価管理をして、家賃と給料を払い、顔役たちに筋を通し、看板のペンキを塗った。
夏祭りやクリスマス、大晦日には、予定のない寂しい奴は全員集まれと声をかけて、小さなお店がパンパンになるほど人が溢れた。
閉店後、前述の先輩と同じ通りにあるビリヤード場で始発までナインボールをしたことが忘れられない。
失恋した常連と朝まで付き合って、そのまま大学の講義に向かったこともあった。
いまその店は、場所も変わり、コンセプトも何もかも変わってはいるが、今も名前だけはそのままに、今もあの街に残っている。
その事実が、少しだけ嬉しい。今の若手が、それぞれのやりたいことをしてくれればいいのだ。その為の場所だと思う。私のように。
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