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のみやさん【オリジナル小説】【連載】

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2021年11月の記事一覧

くぐり慣れない暖簾

「またいらっしゃっていただけて、嬉しいです」

 店内に通されてから、微笑まれる。その笑顔があまりにも綺麗で見惚れてしまうし、きっとその顔はかなり呆けていたのだろう。私の顔を見るなり野宮さんはくすくすとまた笑ってくれた。

「そんな驚いた顔しなくていいのに」
「いや、でも、だって」

 先ほどのことを思い出し、再び私の頭は混乱しかけていた。
 先日初めて来たときに厨房にて小さな声で話しかけてくれた

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菓子折り一つ

 あの不思議な居酒屋であった出来事は、本当に夢だったんじゃないかと今でもたまに思う。というか、あんな夢みたいな出来事が本当に現実にあっていいのかな、と考え込んでしまうくらいには素敵なひと時だったと思う。
 気が落ち込んでいた私をそっと慰めてくれた、和服の女将さん――野宮さんに思いをはせて早一週間。この間のお礼とお酒のせいで覚えていない記憶について謝罪をしないといけないと思いつつ、その足は遠のくばか

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