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6歳男子、アホで意味不明

"バカと天才は紙一重"、よく聞く言葉だ。そして多くの子(特に男子)を持つ親が、わが子に対して抱く期待の言葉ではなかろうか。

私にはもうすぐ10歳になる娘と、もうすぐ7歳になる息子がいる。
娘は幼い頃から本を読むのが好きで、いつも本を読んでいた。女の子の中でも活発というよりは、どちらかというとおとなしい部類に入るかもしれない。ただ、かなり気が強いので、"おとなしい"という形容詞は彼女にはあまり適さない。今風(でもないが)に言うとインドア派、という感じだろうか。
本が好きということと通じるかもしれないが、いろんなことを知りたがり、知的好奇心が旺盛だ。ただし、初めてのことに積極的に取り組むタイプではない。"知識"はどんどん増やしたいが、あえて自分で"経験"したい、とは思っていない様子。
そんな娘に関しては、意味不明、理解不能と思うような行動は、小さい頃から今に至るまであまりなかった。幼いこどもなりに考えた上での行動がほとんどだったように思う。女同士だからわかる、ということもあったのかもしれない。

対して息子。5歳くらいまではとても育てやすい子だった。気は強いがおとなしめインドア派の姉の弟として生まれたせいか、遊び方も男子にしては激しくはなく、男子の母がよく口にする「手を離した瞬間にいなくなる」とか「気付いたら高いところから飛び降りてる」とか、そう言った突飛な行動はあまり見られなかった。大人しく素直でまるまるとした、それはそれはかわいい息子だった。
ところが、5歳くらいから息子の様子が変わってきた。年齢的なものなのか、周りの友達や環境によるものなのかはわからないが、急に男っぽくなり、カッコつけるようになった。私や家族の前では自分のことを名前で言うのに、友達の前では「オレはな!」とイキがってしゃべるようになってきた。家族の前でも、友達のことを話していると段々と興奮してきて「オレが・・・」と口調が変わってきたりもする。その様子がかわいくて母としては笑えてしまうのだけれど、笑うと怒り出すので笑わないようにいつも必死である。
そして最近は、意味不明な行動が増えてきた。反抗することも随分と増えた。日本からイギリスに来た環境の変化なのか、年頃なのか、理由はこれまたわからない。たぶん、理由なんてないんだと思う。ただ本能の赴くままの行動、本能的な反抗なのだろう。
昨日は、布団のシーツに蛍光ペンで文字を書き、自分の服とお腹にも書いていた。娘なら、「こんなことをしたらお母さんに怒られるやろうな」と思ってやらないようなことを、息子はそんなことを考えるよりも「やりたい」が勝ってやってしまうのだ。「そんなことやったらあかんて、考えたらわかるやろ!」と叱りつけると「なにがあかんの」と反抗する。そうだ、そもそも息子は考えていないのだ。考える前に行動している。やりたいと感じたことをそのままやっているだけ。それが男子と女子の行動の違いなのかもしれない。
そんな息子だけれど、所属しているサッカーチームでは「周りの状況を見て、考えてプレーできている。コーチの話をちゃんと聞いてプレーに活かせている」とコーチからお褒めの言葉をいただいているらしい。本人談。ほんまかいな。
そして、家のあちらこちらから出てくる謎のメモ。そのほとんどが謎の暗号のようなものだけれど、たまに英語と日本語で単語が書いてあり、息子なりに言葉を覚えようと努力している姿勢が見られる。おぉ、ちゃんと頑張ってるやないか。
そういうのを聞いたり、見たりすると、「アホやと思ってるけど、もしかしたら賢いんかもしれへん」と、ほんのわずかな期待が母の胸の内に膨らんでくるのである。胸そのものはちっとも膨らまないが。
そして、「バカと天才は紙一重と言うし、もしかしたらうちの子も天才になる可能性があるんかもしれへん」と思うのである。わずかに期待するものの、数年後には結局「バカはバカ」「アホはアホ」だと気がつくのがオチだろうけれど。

とにもかくにも、そんな息子が愛おしくてたまらないのである。あと数日で7歳。残りわずかな6歳のアホで意味不明な姿を、しっかりと焼きつけておこう。