逆算思考をやめたら、違ったものが見えてきた〜NINIROOMのひと vol.3〜
NINIROOMでの対談企画、「NINIROOMのひと」。第3弾は、スタッフのゆうさんと話した記録である。
ヘルパーをする前、わたしはNINIROOMに宿泊客として訪れたことがある。その時も、ゆうさんが親切に接してくれたことを色濃く覚えている。ふんわりほんわかしたオーラで周りを包み込むゆうさんだが、以前からこういう性格だったわけではなかったそうで。
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常連客から、スタッフへ
ーーーゆうさんは、もともとNINIROOMの常連で、そのあとスタッフになったんですよね。
ゆう:そう。家と大学院を行き来する道沿いにNINIROOMがあって、東京にいる友達が来たときに泊まったり、大学院帰りにラウンジで作業したりしてた。スタッフになったのは去年の10月からだよ。
ーーーわたしが10月に行ったとき、ゆうさんはスタッフなりたてだったんですね!全然気づきませんでした。すっかり馴染んでましたよね(笑)。
ゆう:ほんま?だとしたら、もうちょっとフレッシュさ欲しいな(笑)。
つるんとした人生やってん、これまで
ーーースタッフになりたいなって、以前から考えていたんですか?
ゆう:ううん、常連だった時は全然考えてなかってん。新卒で働いてたとき、働き方について考えることがあって、その時にぱっと思い浮かんだんだよね。
新卒で働いていたのは、企業向けのロボットをつくるベンチャーで、3週間とか1ヶ月の出張がよくあって、行き先も九州から東京まで幅広くて。小さい子どもがいる上司も同じような働き方やったから、「自分はこれから30年間このスタイルでやっていくのか、今ここで変えるのかどっちかやな」と思って、変えることにした。
結婚も考えてた時期だから、1ヶ月出張しながら結婚は嫌やなと思って。
ーーー大学院で勉強していたことや、ベンチャーで扱っていた分野とNINIROOMの仕事って、直結するわけじゃないと思うんです。後ろめたさや、迷いはありませんでしたか?
ゆう:なんなら前のロボットの仕事も大学院の分野と直結してなかったんよ(笑)、大学院は医学研究科やから。だからNINIROOMに行くときに迷いはなかったけど、大学院からロボット系ベンチャーに行くときは、少し(迷いが)あったな。医療の最前線に自分が行くことはもう無いんやなって。
つるんとした人生やってん、これまで。大きな悩みはあんまり無くて。そんな人生の中でも、この時はかなり悩んだ。
NINIROOMに来たことは大きな分岐点やったと思うよ。自分でやりたいことをやっていく形に方向転換したから。大丈夫かな、って不安だった。
ーーーそれでもこっちの選択にした決め手があったんですか?
ゆう:あった!2年くらいかけて取り組んでいた、新しくロボットを開発するプロジェクトがあったんだけど、結果としてはあんまりうまくいかなくて。そのときにクライアントとの関係性も良くないまま終わってしまって、「これまでの2年間の仕事は誰のためにしてたんだっけ」と思ったんだよね。
自分の仕事が、どこに繋がっているかがよくわからなかった。この先、どんな人に対して仕事をしたいかと考えた時、顔が見える人に対して仕事がしたいってその時思ったかな。
逆算思考が、ぼやけた
ーーーNINIROOMに仕事が変わったことで、どんな変化がありましたか?
ゆう:ここに来る前から、本屋をやりたいと思っているんだけど、前の会社の時はアクションを起こせなかったんだよね。時間もなかったし。
でも今は、行動に移せるようになったかな。時間も、人との繋がりもできて。
あと、性格が変わったと思う!「あいまい」になった。前はロジカル強めというか、もっとパキパキしてた気がする。結構周りから言われるよ。
それこそ、NINIROOMに入るときに、事前に競合の分析とかもして、マーケティング戦略を練ってたんよ。資料も作り込んで代表の二人にプレゼンしてた。逆算思考っていうのかな、それがぼやけた。
ーーー逆算思考が「ぼやけた」のは、どんな要因があったんですか?
楽しくなくなってきたんだよね、逆算ばっかしてたら(笑)。逆算思考しかしてないと、ゴールばっかり見えて、それ以外のものが見えなくなるやんか。NINIROOMは、せっかくいろんな人が集まって、毎日なにかしら面白いことが起きてるんじゃけど、逆算ばっかりしてるとそういうのに気付けてないかもと思ったんよ。
もちろんバランスが大事やけど、ゴールに縛られすぎないことで周りが見えるようになるし、楽しいことに気づけるようになると思う。矛盾してるようだけど、ここで働いている自分たちがそのおもしろさにちゃんと気づいていないとNINIが目指しているビジョンも実現できないのかなって思ってる。
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逆算思考が「あいまい」になった、という言葉が印象深かった。
就活に取り組んだり大学での授業を受けたりしていると、いかに論理的か、いかに批判的か、ということばかりに焦点がいきがちだったように思う。でも、世の中は論理だけで成り立っているわけではないし、逆算思考だけで成り立っているわけでもない。
寄り道したために最短時間で行けなかったことを憂うより、寄り道したから見つけられた、小さな花や素敵な景色に喜べる方が、わたしは好きだ。
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