護身術を教える時に気をつけている事
10年ほど前に町内のオヤジ会から依頼を受けて「オヤジ狩りに遭わないために」というタイトルで2時間ほどの護身術教室をやったことがあります。その時には座学と実技を行いましたが、いま思えば中身の無い教室でした(苦笑)
座学では私が30分ほど喋りっぱなしで参加者は聞いているだけ。みんなが護身を考えるのではなく、理屈を聞かされているだけという状況。実技も柔術のカッコ良い技を教えましたが、とっさに使える技術ではなかったです。
最近また護身的なことを教えるようになったのですが、当時の自分の失敗を振り返って、こんな風に教えたら良いのではないかという項目を書いてみます。
1.参加者に「護身」を具体的に考えてもらう
護身術の座学は講師から参加者への一方通行の説明になりがちです。
テーマを与えて参加者に話し合ってもらいながら、講師が話を誘導していくのが良いと思います。数人で円座になって、お茶でものみながら話し合うのが良いでしょう。
護身術の練習を昼間に行い、二次会として喫茶店などで話し合うのが参加しやすいと思います。夜の稽古なら早めの時間に始めて、参加できる人は最初の30分間が座談会、その後に実技を行うというのでもいいかもしれませんね。座談会で出た話題が実技に活かせるかもしれないです。
<テーマの例>
・最近の犯罪事例を話し合う
・街の様子(ウェブカメラの録画とか)を見ながら、
不審者や犠牲者になりそうな人、危険な場所などを話し合う
・犯罪が起きやすい場所を写真を見ながら話し合う
・不審者/異常者とはどんな人か話し合う
・被害者として選ばれる人の特徴を話し合う
・狙われにくい人間になる方法を話し合う
・犯罪から遠ざかる心構えを話し合う
・身近なモノを使った護身術を提案してもらう
・刺された後の対処や、刺された後の戦い方を話し合う
犯罪機会論や犯罪者心理について詳しい人がいればベターですが、その人が喋り続けては参加者が考えるチャンスを無くしてしまうので注意が必要です。
2.「自分の場合は」を考えてもらう
座学や話し合いは一般論で終わりがちです。各人が自分の事として安全対策を考えるためには、練習に慣れた頃合いを見計らって、考える課題を与えてみるのが良いと思います。ここで考えた事がその人の護身フレームワークになります。
<内容例>
・なぜ護身術が必要だと思っているのか
そもそも護身術を習う動機を思い出してもらう
・体力はどれぐらいあるのか。どれぐらい必要だと思うか
・自分に合った護身の方法は何か
・事前察知の方法
・加害者への声がけの言葉
・逃げる方法
・逃げ切れたと判断する条件
・反撃開始の条件
・どこまで反撃するか
・護身道具として持ち物の何が使えるか
・他人を助けると判断する条件
それぞれを具体的に考えておくことで、犯罪現場で思考停止することを防げます。
自分の事として考えられるようになれば、自分の家族や友人に護身を伝えることもできるようになるでしょう。
3.普段の状態で使える護身術を教える
護身術の実技は、たいていの場合
・服が破れないように厚手のシャツを着る
・転んでも良い広い場所で練習する(武道館など)
・裸足で練習する
・明るくエアコンの効いた場所で練習する
・自分がケガしていないと想定
このような「日常とは違う状態」で練習しています。
毎回の練習ではなく、月に1回程度で良いと思いますが、あえて不便な状況での練習をすることで、いつもの練習がいかに「良い条件での」練習なのかを実感することができます。
<練習場所>
・暗い場所
・狭い場所
・クルマの中
・電車の中
・人混みの中
・大音量の場所
<不便な状態>
・普通の服で練習
・半袖、長袖、上半身ハダカ
・伸びる素材の服
・ジーパン
・靴をはかずに靴下だけの状態
・両手に荷物を持った状態
・利き手をケガしている
・足を怪我している
たとえば相手に腕を掴まれた時、伸びる素材の服では振りほどくのが難しかったり、護身術の技をかけようと思っても半袖では汗で滑って失敗することがあります。
このような想定は危機的状況で「覚悟できる」メンタリティを育てるためにも大切なことです。人間は想定していた事であればパニックになりにくいので。
4.安全に配慮した練習をする
護身術実技では参加者の意識がマチマチで、それがケガを誘発する可能性もあります。参加者には武術経験者と未経験者がいるからです。
・武術をやっていた人
・多少痛いのは構わない。護身術も武術だからケガは当たり前だろう。
・練習するためには自分も投げられたり、痛い目にあうのは当たり前。
・相手が技を練習するときには痛くても協力してあげよう。
・ケガしてもそれはこちらにも落ち度があるので仕方ない。
・普通の人(護身術だけをやりたい人)
・痛いのはイヤ。ケガをしないために護身術をやろうとしている。
・護身術を習いに来たのに、投げられた。痛い目にあった。
・痛いから、相手に技を掛けられないようにしよう。
・ケガさせられたら治療費を払ってもらうのは当然。
このように考え方の前提にギャップがあるため、武術経験のある人は相手をケガさせる可能性が高くなります。自分は痛いのに慣れているため、相手も大丈夫だと無意識に思っているのです。
武術経験者の中でも打撃系経験者は、パンチやキックでの極めを経験してきたので、柔術系の関節技や崩し技でも極めや勢いが入ってしまうクセがあります。私も護身術の稽古で肩を壊されて、いまだに不自由を感じてます。
フルコンタクト打撃系の競技では致命傷になる人体部位は全て反則になるので、ルール内ではチカラ一杯攻撃しても致命傷にはなりません。その経験しか無い人が柔術系護身術での加減が分からず相手に一生のケガ(関節、首、背骨など)を負わせる事もありますので、段階的に練習するのが良いでしょう。またスポーツ保険に入っておくのも大切です。
<練習相手と意識合わせすること>
[安全モード] 安全を考えて、ゆっくりと形を練習する
[本番モード] 本番を想定して、通常スピードで練習する
双方が了解した上でというのが大切で、片方だけがスピードを上げるとケガします。「いまは形の練習をしよう」とか「本番モードで練習しよう」とか、意識を合わせて練習してください。指導経験の浅い武術経験者にはモード切り替えが苦手な人が多いと思います。もし相手のモードが違うと思ったら、練習せずに距離を取りましょう。
道場経営は難しいもので、ケガをしそうな道場からは生徒が消えていきます。生徒を集めたいのであれば、安全に配慮していることを身をもって示していくことが大切です。
また私の武術稽古の経験から「カッコつける人は、練習相手をケガさせる」という法則があります。「相手への安全配慮 よりも 自己主張」タイプの人です。私の周りにも数人いますが、なるべく「自己主張させないように」練習しています(笑)。みなさんもこのタイプには気をつけてください。
なんだか「護身術を習う時の護身術」みたいで本末転倒なんですがね(笑)
コロナでの外出自粛による経済への締め付けの影響が、今後数年で(あるいは今年)発生します。具体的には企業がコロナ融資の借金を返せないことによる倒産での従業員の失業。犯罪者の多くが「無職・住所不定」なのはご存知の通りだと思います。無職の人が犯罪に走るのは「お金がない。時間があるので悪いことばかり考えてしまう」からです。
また最近ではコロナ禍の影響で海外でも犯罪が増えています。ハワイではコロナ前の4倍近い殺人・強盗・窃盗が起きているそうです。日本国内でも今後、外国人による犯罪が増えることが予想されます。コロナ鎖国によって国力と円が弱くなっており、日本は世界から見るとなんでも安い「100円ショップ」に見えています。開国したとたんに「富裕層ではない外国人」が日本になだれこんで来ますが、その中に混ざっている犯罪者の割合は以前よりも多いでしょう。
いままで平和ボケだった日本にも、護身の心構えや技術は重要になってきます。
「誰かが守ってくれるだろう」ではなく、自分で身を守らないといけない時は、確実に近づいています。