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目で聞き、耳で観る
護身にはリスク管理(予防策)とクライシス管理(犯罪に巻き込まれた時の対応)の2段階があって、大切なのはリスク管理のほう。事件が起こらないようにしておくこと。
護身術(クライシス管理)を学ぶのは心の余裕を持ってリスク管理するためなのだ。
その予防策で最近よく言われるのが「スマートフォンを覗き込みすぎないように」という言葉。
人間の目は本来、180°以上の視野角を持っていて、自分の左右にいる人が動いても、それを察知できる。
ところがスマホを見ていると(私の体感では)前方60°ぐらいしか視界に入らず、手元に焦点があってしまう。イヤホンをしていれば、聴覚も奪われた状態だ。犯罪者にとっては実に仕事しやすいターゲット。
武術には「目で聞き、耳で観る」という言葉がある。
もともと目には指向性があり、耳はあまり指向性が無い(指向性とは、ある方向に特化して機能するという性質)が、この弱点を補うチカラを訓練するというのが「目で聞き、耳で観る」。
前方をボーッと見ながら後方の音に注意する、という練習で良いと思う。前方を俯瞰してみていれば何かが動いたら気がつくので、見ることにチカラを注がなくてもいい。「遠山の目付」とか「八方目」とか呼ぶ流派もある。
後方は見えないので、耳を使って様子を探る。音の発信源がどのあたりか(右後方、真後ろ、左後方)、できれば距離まで分かるように感覚を研ぎすます。
私が日常的にやっているのは「後ろから近づいてくる自動車が自分の横を通り抜ける瞬間に肩のチカラを抜く」という練習。あるいは本屋で「本の並ぶ棚を見ながら、自分の後ろを通り過ぎようとする人に道を譲る」練習。
さりげなくリラックスしたままで、自分の内部が準備完了の状態を作る。
現代武道は1対1の競技が多いので前方に意識が集中するクセが付いている。直線的にパンチを連打する人は、まずそのクセを自覚すること。
護身的な考えを取り入れるのであれば、多人数に囲まれるような稽古も適度に行ったほうが良い。3対1の囲み組手なら「目で聞き、耳で観る」稽古になるんじゃないだろうか。