その花は、敵か味方か
①敵か味方かの二項対立
Aの陣営と、敵対するB陣営。
戦争中など、過酷な状況で生き延びる上で、有用な視点です。反面、人の想像力は豊かなので、実像よりも敵を大きく感じさせるデメリットもあります。
②味方かそれ以外かの二項対立
あなたの味方Cと、C以外のこと。
法治国家で、一定の安全が守られている時に、心的リソースを、より大切なものに注ぐことが出来ます。ただ、実社会の人間関係は虹のようなスペクトラムで出来ています。二項対立で単純化し過ぎる点は、わかりやすい反面、正確さに欠けるかもしれません。
③そもそも味方って何だろう?
味方Dは、Eだけでなく、「0、f、ア、い、漢…」など、様々な要素を含んでいます。
一般的に尊敬される例で考えてみましょう。
マザーテレサ
「死を待つ人々の家」などの活動で知られ、ノーベル平和賞(1979年)を受賞しました。
空海
密教の第七祖である唐長安青龍寺の恵果和尚に師事し、正当な後継者として、日本に密教を持ち帰り、体系を完成させました。真言宗の開祖であり、弘法大師、お大師様とも呼ばれています。
両者は敵ですか、それともあなたの味方ですか?
「味方」は抽象的
より具体的に考えることも出来ます。
「味方」は、敬愛する対象であったり恩師かもしれない。「恩師」は歴史を通して出会うこともあります。歴史上の「恩師」に共感するかもしれない。または、「恩師」が生きた時代から学ぶのかもしれない。
歴史ではなく同時代の存在だけど、会ったことのない「恩師」が、存在自体で勇気づけてくれるかもしれない。
学ぶ相手は年上とは限りません。もしあなたが、未成年の保護者であるなら、その未成年は幼いなりのやり方で、あなたを深く理解しているはずです。理解の深さで考えるなら、誰よりも頼もしい味方です。
「味方」は理解者でもあります。あなたのパートナー・家族・友人かもしれない。友人といっても親友もいれば 、特定の話ができる友人もいます。年賀状のやりとりをする友人もいれば 、ほとんど知人に近い友人もいます 。知人の中でもある話題に関しては 、分かり合える関係性もあります。知人だから友人より劣るとは言い切れません。友人と知人の関係性や距離感が異なることの、影響もありますから。
人以外も味方になります。例えば酪農されていて牛を大事に面倒見ているのであれば、その牛は気持ちに応えてくれるでしょう。犬や猫も人間と家族になって 共に暮らすことができます。
生物だけが味方でしょうか? 「書籍を読むことで友人を増やす」という表現があるように あなたの味方になってくれる書籍もあります。書籍が扱う抽象的な概念はどうでしょう。あなたが何かを考えるときに、経済学でも人道主義でもいいのですが、抽象概念によって物事がより鮮明に見えたなら、頼りになる味方ですよね。
抽象概念ではなく、具体的なものはどうでしょうか? お庭に花が咲いていたり、家の中に季節の花を飾るといった形で、花を愛でるのであれば、その花はあなたを勇気づけてくれます。花も味方です。
花から話を広げれば 何らかのアート、それは印象派の絵画かもしれないし 抽象画かもしれないし、あるいはそれ以外。あなたの感性にしっくりくるアートもまた、味方です。
美しいものは美術作品だけではありません。街の中、電車の中、オフィスの中、大学に行く途中など、どこにいても何かしら美しいものってありませんか。雨が上がって水たまりがあって、そこに空が映っている。なんでもないことだけれども、そこに美しさはないでしょうか 。
美しさを理解し鑑賞するのは、センスだけでしょうか? 考える力も貢献します。物を考える力の源は言葉です。言葉がなければ考えることができません 。いくつもの言葉を習得している方に お話を伺ってみました。「物を考えるときは母語で考えるのが考えやすいよ 」と仰っていました 。考える力もまた私たちの味方になってくれます。
考えるためには情報が必要です 。材料が必要です 。ですから情報リテラシーも私たちの味方になってくれます 。
考える力や情報リテラシーは、教育で獲得出来ます。「財産は失うことがあっても、努力して身に着けた経験や学問やスキルは奪われることがない」。1945年の敗戦で財産を失った、私の母方の祖父の経験則です 。非常時でも奪われない財産、頼もしいですよね。
そして、教育は次の世代を育てます 。教育をするには、まず教育を行う人を育てる必要があります。 1世代目の先生が育って、その先生たちが育てた第2世代がまた次の世代を教える……。こうして、数世代かけて、長期的なスパンで教育は行われます。教育によって育てた次の世代は私たちの味方になり得るかもしれません。
④結論
私も戸締りはします。PCのセキュリティ対策も行います。悪意や害意からの自衛やセキュリティは必要であることを、もちろん認めます。
私は淡々と事務的に行います。その際に、心を揺らすコストは払わないようにしています。そして、すべき対処を終えたなら、大切なものに時間や心的リソースを注ぐことを意識しています。
私たちの時間は有限です。 平均80年とされています。 時間の長さは前後します。幼い頃に亡くなる方もいれば、100歳を越える方もいますので、生き抜いた時間の長さは異なりますけれども、有限だという点では変わりませんよね。 時間が希少財であることは、共有出来る前提です。
有限の持ち時間をどう使うかは、その人の自由です。 例えば、敵か味方かの二項対立と、味方かそれ以外かの二項対立だと、私は前者よりも後者の方が、自分の大切なものに集中しやすいと考えています。
ですが、そもそも味方とは何だということを確認することで、より自分の大切なものに集中しやすいのではないでしょうか。 ただし、味方とは何か考えることが、敵か味方かより優れていると主張したなら、それも二項対立です。二項対立にする必要はありません。TPOで使い分ければ、選択肢が増えます。優劣は問いません。
なぜって、この記事は、頭の中から「敵」を、意識の外へ出す試みなのですから。
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