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ほんのりした恋のお話

それは恋だ

最初に言っておこう、キャベツの千切りなんてものは、刺し身でいう『大根の褄』のようなもので脇役にすぎないと思っていた
そう、あの時までは …

今から5時間ほど前の話だ、トンカツ屋でいつも通り定食を頼んだ。
トンカツの前に、あらかじめキャベツがだけ運ばれてきたのだ、それがあんな事になるとは。

「じゃあ、とりあえずキャベツからいくか、ドレッシングは面倒だからいいや」
箸でつかみとり、素っ気なく口の中に放り込んで噛んでいく

野菜の苦味とともに、ほんのりした甘さが口の中に広がっていった

「キャベツは自然な甘みがあるんだ、今まで知らなかったな」
思わず私の背筋は小刻みに震えていた、その甘味はゆっくりと胸を締め付けてくる

 ― そ れ は 恋 だ ―

いつの間にか目を瞑って咀嚼を続けていた
純粋に舌の感覚だけで受け取りたかった、ただそれだけだ

おまけ

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【辛島信芳の著書】
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