たまにゃ、見上げることが、必要なんだよ。
詩集『夜空は いつでも 最高密度の 青色だ』最果タヒ著:リトルモア
オレはもうおじさんだから、こういった若い奴の詩なんてわかんないんだけどね。ブルース・リーじゃないけど、考えるな、感じろ的なもんかなって思って、えい、やっ!って勢いで読んだんだ。やられたね、見えない空気のピストルで胸を射抜かれた感じさ、夜空はいつでも最高密度の青色だ、って。すげぇ、かっこいいよ。
で、読後、やっぱ良かったのは表題になっているその「青色の詩」だな。詩は詩人が言葉を苦労して凝縮、醸成させて作ってるから、軽々しく引用はしないよ。でも、たった六行だけだけど素晴らしい。その他の詩は、おじさんは正直ピンとこなかったけどね…。
オレも若いときがあったからわかるんだけど、若いときって、自意識が過剰だったり、自分が自分が、なんて思いすぎて、かえって他人や世間が見えてなかったりとか、あるじゃない。そういうときにさ、自分の内側なんか見たってなんも見つかんないよ。要は、夜空とか海とか(山とか夜霧の都庁ビルとかでもいいけど)見上げりゃいいよ。すこしだけ雑踏とか、自分から離れられるからね。特に十代の頃は、自意識が世界に向かって閉じたり、開いたりね、忙しいんだけど、(恋愛なんてそうだよね)詩の行間にそうしたこころの開閉が自動ドアみたいに頻繁に繰り返されてね。そんな感じが、詩によく表れてる。
この詩人は言葉に、自殺とか、死とか、何かがないとか、否定的なワードが多いんだけど、なぜか不思議と不謹慎さとか、嫌みがなくて。清潔さがあるんだよな。それが才能なんだろう。ほとんどが、「ぼく」と「きみ」という人称で語られる。いまのJポップみたいだね、だから若い人たちに人気があるのかな。これに、第三者が入るとたぶん、小説になるね。
余談はさておき、オレみたいなおじさんは遠い昔の過去だけど、十代とかの奴らには、この詩集の言葉の弾丸に射抜かれると思うよ。(まぁ、若くなくても…若かった頃が誰しもあったろうから、共感はもちろん出来るんだろうけどさ)