限界、そしてレイン
晩酌をあまりしない。酒が嫌いなわけではない。ただあまり呑んでも、そこまで気分が晴れることもない。
でも、やっぱり呑みたいときはある。
積もりに積もった鬱憤と、それを処理できなくなった自分との葛藤に負けたときアルコールは私の血液となる。
今日はそんな日だった。
夕食前の1時間。私は缶チューハイを1缶開けて、ため息を1つ吐きながら口に流し込んだ。
酒のお供は、魚肉ソーセージとさけるチーズと小魚アーモンド。
私は、ソーセージを1口かじる、そして酒を少し口に含む。とても機械的作業であるが酔ってくると、それがどうも気持ちいい。
30分アニメを1本ゆっくりと見ながら私は晩酌を楽しんだ。
台所では家のものが夕食作っている最中であった。
今日の夕食は焼肉だ。午前中に私が買い出しに行って材料は全て冷蔵庫の中に入っている。千切りキャベツも買っているから野菜も大丈夫だ。炊飯器の準備もできている。
私は自分の部屋に閉じこもり、晩酌を楽しみながらアニメを見て、少しばかりの余暇を楽しんでいた。
なぜリビングで見ないかって、そんな野暮なことを言ってはいけないよ。人には好みがあるんだ。その人の好みをけなすような人とは一緒に見ることができない。
見ている最中ですら、その作品に対する文句が山のように発生しセリフすら聞こえない。
その事はどうでもいい。いつものことだ。
私はあまりにも何もしない家のものたちに残念と言い放つこともできず、ただ1人部屋に閉じこもって酒を食うことにした。
30分はあっという間だった。まだ夕食までの時間がある。かなり食べてしまって夕食はあまり食べれそうにない。でも今日は家のものが大好きな焼肉だ。きっと肉に群がることだろう。
私は風呂の準備をし始めた。夕食の後にさらっと風呂に入る予定だ。食べた直後は誰も入らない。だから私の唯一のひとときをそこにカケル。
想像通り私はあまり夕食を食べることができず、テーブルを後にすることができた。
すぐさま風呂に入る。ほろ酔い状態であるためなんとも気持ちの良い湯船であった。
風呂上がり、私はリビングに行くのをやめ、また自分の狭い部屋に逆戻りした。
さあ寝るまでにたっぷりの時間がある。
何をしようか、絵でも書こうか、小説でも読もうか、いやいや映画でも見ようか。
でも頭の中には何も浮かばず、手が止まってしまった。
はぁ〜。私はつぶやく。。
Google homeに声をかける。
こういった時は昔の曲をかけるのが一番。
OK Google、谷村新司かけて。
80年代の懐かしい曲を期待して話しかける。
Spotifyから選曲し、曲を流し始めた。
だが、流れてきた曲はどう聞いても谷村新司ではない。Shazamを起動し確認する。
稲垣潤一のドラマティック・レイン。
私は思わず口ずさんでしまった。
レインもっと強く求めてくれ、冷えた躰で。
口ずさみながら、私の両目から涙が溢れていた。
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