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人のこころとからだ まとめ

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私たちの「こころ」や「からだ」について書いた文章をまとめています。こころとからだは、一つの現象の二つの現われであると思っています。人という営みは、個人のこころとからだを通して、多…
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2024年2月の記事一覧

贈与の霊がつなぐもの

マルセル・モースの『贈与論』の中に、ニュージーランドのマオリ族の人たちが「ハウ」と呼ぶ不思議な力についてのお話があります。 それはどんなものかと言うと、例えば自分が誰かから何かの贈り物をもらい、そしてそれをまた誰か別の人に贈ったとします。 しばらくして今度は逆に、贈り物をした相手から御礼として何か別の物を贈られたとしたら、それは自分が贈った贈り物の霊であり、それを「ハウ」と呼ぶのです。 そのハウは、自分が贈った物の霊であるのと同時に、自分が初めにもらった贈り物の霊でもあ

愉気とはともに同じ夢を見ること

私の話はいつもそうなのですが、思いついたままにつらつらと話していくので、どんな話になっていくかはあまり意図しておらず、私自身も予想をしていない方向に向かっていくことがほぼ常のことです。 今回も愉気(ゆき)についての話をしていたら(2016年のこと)、「愉気とはともに同じ夢を見ることなのです」という言葉が口をついて出てきました。 (※注:愉気とは整体のお手当てのこと) 自分でもそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったので、我ながら「おお…そうだったのか」と新鮮な驚きがあり

いつかの言葉【世阿弥】

 世阿弥(ぜあみ)といえば、言わずと知れた室町時代の能(猿楽)の大スターですが、彼は後進のために多くの能の伝書を書き残しました。現在でも使われる「初心忘るべからず」とか「秘すれば花」といった言葉も、世阿弥の言葉です。 彼の伝書は、能の稽古について書かれたものですが、そこで説かれていることはあらゆることに通じるとして、現代でもさまざまな芸事や運動の稽古においてよく引用されています。 伝統芸能の世界では、きわめて幼少の頃から稽古をしていくこともあって、伝書の中には小さな子ども