空上タツタ
私の飲み友達でヤバい奴だと待ち合わせ場所に現れて即挨拶すら抜きで「ごめん今日の飲み代貸して!」と金の無心をかましてきたウワバミ女とかがいるが、まあそれを除いてもけっこう大概な経歴の奴らが揃っている。 イカレたメンバー、紹介するぜ。 「8%のチューハイと6%のチューハイ飲んだから14%」と驚異の理論をぶっぱなした理系のF。 「吐いたら胃の中身が減ってまた飲める」リアルローマを体現したN。 「岐阜で飲んだあと電車で寝過ごして名古屋で降りられず豊橋へ。あわててタクシーで
むかし聞いた話だけど 本物のお祓い・拝み屋というのは大体が2人組で、その手法は「呪いがある」と深く信じ込ませてコトに当たる場合と「呪いはない」と否定してカウンセリングする場合の2パターンに分かれるそうな。 そして1人目として依頼人に当たった奴がそいつの性格・性質・傾向を見て「無い」と否定した方が良ければその場でカウンセリングをはじめる あるいは、1人目が既に「お祓いが生業のひと『らしすぎる』振る舞いをしていた」場合は2人目にカウンセラー役を投げて「こちらの方に依頼される
以前バーで隣に座った女性から「さいきん友人がマルチかなにかにハマってしまったのか、ことあるごとに物を売りつけてくる」という話を聞いた。 ふんふんとうなずいていた私は思い付きで「じゃあこっちも同じことやり返してみたら向こうも気持ちがわかるんじゃないすか」と言った。 そう、たとえば 『――このグラスね、スピリッチュアルなパゥワーがエクイップメントされてて注いだ水を毎日テイスティングしてるだけで見る見るうちにエナジーがハイになってきてライフイズビューティフルになるの!
『……対決の時間がやってまいりました。実況は私、田中がお送りいたします!』 『解説の佐々木です。本日はよろしくお願い致しますー』 『ハイよろしくお願い致します』 『早速ですが今回、とくに前置きなどもなく戦闘シーンに入るようですね』 『そのようですね。疑似三人称視点でキャラが目覚めるところからです!』 近藤が目を開けると、そこは等間隔に無骨なコンクリート柱が立ち並ぶばかりの、殺風景な廃墟だった。 広くは、ない。大股で十歩も進めば、もう壁にぶつかるくらいだろう。影
「ああ、ひどい会社勤めで働くの嫌になったけどニートにも飽きた。もう現世に飽きた。寿命でもなんでも売ってやるからすんごい超能力が手に入るとか、そういう面白い話はないだろうか」 「お呼びかな」 「だれだよお前」 「悪魔だよ。契約の話っぽかったから出てきましたよ」 「おお、悪魔か。じゃあさっそく、寿命売るからすんごいのを頼む」 「了解です。じゃあ残りの寿命を5秒まで削るということで」 「ちょ、ちょっと待った。せめて1日は残して欲しい」 「1日残すなら時間を2秒止めると
好きなお酒の吟醸工房が豊田市の山奥にあるのを知ってて友人になにも伝えずそこまで遠距離ドライブに連れて行き、 「あ! 吟醸工房だって!」と、さもいま見つけたかのように振る舞い一目散に駆け込んで試飲をがっぱがっぱ飲みハンドルキーパーを押し付けたことがありますが、まあそんな話は関係なくお酒の銘柄っていろいろありますよね。 でも正直、お酒の味ってうまく覚えられない。 そもそも私はさほど鋭敏な舌を持っていないのだ。 『一度飲んだ味は忘れない!』とか『ハッ、これは〇〇の……!』
「――――我は『切る』神だ。お前たち七人それぞれに我の能力の欠片として『なにかを切る』能力持つ刃物を与えた。存分に力を振るい、最後のひとりになるまで戦うがよい」 「クソ雑なデスゲームに巻き込まれた」「雑過ぎますわね」「もうちょっとなかったの?」「なかったんでしょうなぁ」「勘弁してほしいっす」「帰りたい」「……ぬふう」 「あーとりあえず現状把握するか。お前、お前は能力なんだった?」 「『大見得を切る』ナイフですってよ」 「ハッタリで勝ち抜くタイプか……お前は?」 「僕
「ねえせんぱい。わたし就活してるうちに思ったんだけど、かっこいい女性ってどんなひとかしら」 「そうだな……たとえば、」 二行連作 かっこいい女性 そのいち 物おじ 「物おじしない女性ってかっこいいと思うぜ」 「この辺りにカチコミかけられそうなとこあったかしら」 そのに 謎の過去 「謎の過去がある女性ってかっこいいと思うぜ」 「三年分の日記を書いてきたわ。脚色交えてるけど」 そのさん 勉強 「勉強出来る女性ってかっこいいと思うぜ」 「ねえいま気づいたんだけど、力と強
自炊歴が4年目に入ったこの頃、怪現象が起きました 朝目が覚めて冷蔵庫を開けると――知らない炒め物が入っている。 食べてみるとなんだか知らない味付けを感じます。 細君の味付けでもない。近所に住む我が母の味付けでもない。 まさか、私の知らぬ間にだれか家に上がってつくっていったのか……? と一瞬不安にさいなまれましたが、左手の指に残る真新しい切り傷がすべてを思い出させてくれました。 ――そういえばなんか、切ったような気がする―― と。 辻斬りを神速の