『からこといのち通信 №14』8月号2021/7/15 発行

『からこといのち通信 №14』8月号(人間と演劇研究所 瀬戸嶋 充 ばん)2021/7/15 発行

私ごときが知っていることは、誰もが知っていることで、取り立てて言葉にして世間に公表する必要など無い、と考えてしまう傾向が私にはある。(ほとんど無意識に浮かぶ考えだけれど)

ところが、どうやらそうでは無いようだ!と考え始めたのが、最近のこと。話したり書いたりすることで表れてくるのは自分なのだ。私にとっては、自分の知識や考え・技能をお披露目することではなくて、自分で自分を新たに発見していくのが、話したり書いたりすることだったのだ!

自分の考えを述べる。知識をお披露目する。経歴や身分を紹介する。自分というのはこういうやつだと、理解して(つもり?)自分を言葉にして説明するのが、自己紹介だと思っていた。私は自己紹介が苦手だった。それだけでなく自分を売り込むことが嫌いだった。転じて他人が自分を売り込むのを見ていると、嫌な気分にさえなったものだ。

それが、自分を発見すると考えるようになったら、書いたり話したりすることが楽になってきた。(歌うことも! 笑)立派な自分を語る必要はなくなったからだと思う。(自分を発見し始めたのが60才過ぎてからということになる 笑)

そういえば願書を書くときに、あなたの長所と短所を書けという欄があった。あれも苦手だった。考え出すと頭が煮詰まって真っ白になる。息が詰まって苦しくなって投げ出したくなる。

やっぱりそのころから世間の価値観に照らして、自分の善し悪しを裁くことができなかったのだと思う。自分の価値(商品価値)を説明するという発想がなかったのだろう。むしろ自分に対する気持ちはいつも「好き!」だったように思う。だから徹底して自分を大事にしてきたのかもしれない。

「それでは進歩がないだろう!」と言われそうだが、全くその通りだとしか返す言葉がない。自分を「好き!」なら、克己(己に克つ)など必要がない。競争して評価を求め、成長しなければなどという発想もない。今ある自分をあれこれと飾り付けたり、所有を増やしたりする必要を感じることもない。「あなたはやればできるのにやろうとしない、全く欲が無いのだから!」と高校受験の時に担任に怒られたこともある。

でも、「好き」な自分に意識をつなげると、優しい気分になれる。それが大切なのだった。自分を苦しめてまで、理想を追いかけるのは、私にはそぐわなかったようだ。

瀬戸嶋 充 ばん

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【1】 救いとしての「ことば」
【2】 あまねとばんの交換日記
【3】 レッスンのご案内
【4】 あとがき
【5】 note バックナンバー

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【1】救いとしての「ことば」

私がこんなこと(からだとことばといのちのレッスン)をしているのは、小学校時代のいじめられた体験が元にあるようだ。小学校3、4年生の頃、担任とそのクラスの生徒全員からイジメられた。以来、私は石礫(イシツブテ)を飲み込んだように、外界と自己との繋がりに蓋をした。

私の内側へと「言葉」を注ぎ、詰め込まれた石の蓋を切り裂き、私の「いのち」(魂)が息を吹き返す機会を与えてくれた人たち。「林竹二・竹内敏晴・野口三千三・吉本伊信」その他にも「魂」(真の個性)を剝き出しにして語り掛ける人々との出会いがあった。

「言葉」と、それを語る人の「いのち」(魂)が一つになっている。そんな人物に出会うことに拠ってしか救われない「いのち」がある。豊かな知識や、優秀な知能や技能を持った人物は、私の救いにならなかった。

どうすれば彼らのように、私(私たち)がそんな「言葉」を語れるようになるのか?言葉の力を回復(=「魂」を解放)する方法を模索して来た。「いのち」(=「魂」)が語りだす「ことば」の成立のために、「からだ」を薄く深くしなやかにして、内側からの「魂」の衝迫が、自在に活躍できるような身体の状況を準備する。それが「からだとことばといのちのレッスン」の主題なのだ。

今の時代、知識としての言葉(「あたま」から「あたま」への情報伝達と説明)はとても発達しているけれども、それに反比例するように、話し言葉(「からだ」から「からだ」へと直接に訴えかける「ことば」)の力が、ひどく弱まっている。

そのような「ことば」の力の回復無しには救われることのない、時代の流れの中で自分を閉ざさざるを得なかった人たちが大勢いるように、私には思えてならない。知識や技術・技能によっては決して救われることのない人々=「いのち」が在る。私がそうであったように。

「問い続けて」と林竹二は言った。「未完の完成」と言ったのは、宮沢賢治だったか?(「永久の未完成これ完成である」)「傷」を意志の力で消滅・消去しようとすれば強張りを心身に残し、道を進むことを妨げる。私たち人間は常に「未完」の存在と覚悟するとき、そして人間とは何か?と繰り返し問い続けるとき、無限の道が開けてくる。「傷」も道行く糧となり薬となり、やがて幸せの花を開くだろう。

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【2】あまねとばんの交換日記

お題の㈠『ぶら下がり(野口体操)の動き』

ばん(6/15)↴↴↴

レッスンでは「ぶら下がり」と呼んでいるけれど、名称からは何をどうするか解かり辛いよね。
先ずは、YouTubeの動画を見てください。(1分55秒の短い動画です)
動画では「ぶら下がり」の動きが前後にあって、その間に「腰回し」と「波の動きが」挟まっていて、どれが「ぶら下がり」なのか分かり辛いけど、立っているところから「からだ」を前、下へと降ろしていき、腰から上半身を逆さに「ぶら下げる」ところ。そこで胴体や首肩をゆるゆると揺らして緩める。膝を軽く前に曲げて、足裏からからだを噴水が吹き上げるようにして起き上がって、立ってくるところまでの一連の動きです。(0:00~0:30と、1:10~1:55くらい、2か所が「ぶら下がり」の動き)
https://youtu.be/A47fuCWC5Ms
これは50代半ばくらいに撮った動画だけど、若々しいし、動きの瑞々しいこと。そのころは自分の動きはまだまだだなぁと反省しきりだったけど、いま見返してみると悪くない。むしろあの頃映しておいて良かったなぁ。家宝になるかも(笑)と嬉しい気分です。あの頃は髪の毛もふさふさしてたので、30代ですかとよく言われてた。
レッスンの中で、私がみんなの前で「ぶら下がり」の動きをやって見せる時って、自分が「気持ち良い!」ばかりで、見ている側からはどんなに風に見えているのだろう?感じ取っているのだろう?と考えたことはあまりなかったなぁ。。。こうやって改めてみていると、我ながら案外良い感じがする。
初めてこの動きを見たときは気持ち悪かったと、あとから感想を言ってくれた人は、何人もいたけど(笑)
あまねちゃんの感想、聞きたいな。あまねちゃんも、あちこちで「ぶら下がり」してるみたいだし、自身の「ぶら下がり」体験についても、いろいろ聞いてみたいな。


あまね(6/20)↴↴↴

いや〜、若いですね!知ってる人のことだから、どうしても現在との比較のほうに注意が行ってしまいます。ふさふさ。
本題に入って、ばんさんのぶら下げの感想。
まずあらためての初見で思ったのは、「気持ちよさそうでフレッシュっすね!」です。
それだけじゃ困るよな・・・と思って何度も見てみたんだけど、いや〜書きがたいことこの上ない。笑
でもその書きにくいこと、それこそがミソな気もする。
めちゃくちゃ柔らかいクラゲって、肉体が海中仕様になってるから、陸地に上がって重力を受けると、もう本来の在り方を留めていられなくなるじゃないですか。あんな感じです笑
ばんさんの「感覚」(とてもクラゲ)を見て受けたわたしの「感覚」(それなりにクラゲ)を、活字にする(陸地に上げる)という荒技・・・というか罪深さを、重々承知して書いていかねばなりませんね。

前置き言い訳が長くなりましたが・・・
身体のなかの繋がり(骨、筋肉、健、関節とかいうケチくさい話じゃなく)を感じるというか、「感じている」という状態に確からしさがある。
だから、ゆらゆらと動く動きには感覚的な根拠があるんだろうな、という印象を受けました。
パッとした見た目に特別なところはないんですが、内容には大きな、ではなく「巨きな」と書きたくなるような根拠を感じます(英語で言うなら、bigではなくhugeかな)。
いろんな人のぶら下げを見てきたけど、その「巨きな根拠」が、ばんさんのぶら下げの特徴じゃないでしょうか。
なぜ大きいではなく「巨きい」を使ったかというと、「大きい」というと、単純にビッグ、ただサイズがデカい、というかんじ。
「巨きい」は、天体でも海流でもなんでもいいんですが、細かいちりぢりのモノがぐお〜んと繋がりながら動いている、その一片を、たまたま、ばんさんの身体越しに私は見受けた・・・。
または、「巨きさ」を、自分の身体を風見鶏のような計測器にして、感知しているばんさんを、私は見ている。
そんなかんじかなあ。
風見鶏になる瞬間は、身体を傾けはじめてまもなく、ほっと口から何かが抜けていくとき、という感じもします(合ってるかわかんないけど)。

わたしのぶら下がり体験ですか。
私は、公園とか、映画を観る前とか、眠れないときとか、踊る前にぶら下げすることが多いかな。
風と土の豊富な場所でやるとよいかんじ。
生まれ育つ娘を見ていて顕著だったのは、頭の位置が、地上を離れるとともにつよくなる意思でした。
「〇〇したい!」という衝動は寝っ転がってたときだってあったろうと思いますが、その衝動の意識され方や、表され方が、頭の高さと比例してつよくなる。カリッとエッジの効いたものになっていく(寝っ転がってたときはぐにょぐにょと液体のように、流動的な衝動の在り方だったように思います。)。
この「〇〇したい!」っていうのは、動物の食欲やらとはどうやら別物で、人類固有のものという気がしています(言語や理性や文化のせいか?それとも脳みそくんの癖?)。
で、わたしはそういう人類固有の「〇〇したい!」で、自分が埋め尽くされそうなとき、ぶら下げをしたくなります。
端的にいうと「あー、人間したくないな」って時にしています。
だから自然と、わたしのぶら下がり体験や感想は、ここに根ざしたものになる。
頭の位置が下がれば下がるほど、自分を制御しているものがわきへ避けていく。
というよりも、海だか沼だか分からない何かに沈見込んでいくことで、地表のこととオサラバしていく・・・
わたしのぶら下げは「エスケープ」なんじゃないかなあ。
さわりですが、ひとまずこんなところで。

(つづく)

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【3】 レッスンのご案内

● オンライン・レッスン『野口体操を楽しむ』のご案内はホームページ、
https://ningen-engeki.jimdo.com/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%95%99%E5%AE%A4/

● オンライン・プライベート・セッション開始
http://karadazerohonpo.blog11.fc2.com/blog-entry-370.html

● 琵琶湖和邇浜合宿
恒例になっています琵琶湖合宿、今年も開催します。
・7月23日~25日 琵琶湖夏合宿(キャンセル待ち)
・年内に伊豆川奈合宿を開始予定
・2022年1月8日~10日 琵琶湖冬合宿

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【4】 あとがき

●先月は、仕事で外に出たのが4日だけ。近所の喫茶店をウロツクくらいで、あとはStayhomeの毎日。そのうえこの頃は梅雨の天候不順。かなりウンザリしていました。気分転換もかねて、パソコンデスクをYouTubeライブ用に改造。マイクを吊るしてスピーカーを置いて、PCに動画編集ソフトを入れて、、、。世の中、ずいぶんと便利になってますね。自宅が手軽に放送スタジオになってしまう。。。てなわけで、番組作ってネットで配信していこうかと考えています。どなたか、その辺りのことに詳しい方がいらっしゃれば手を貸してください。なにせ素人(=私)というのは要領が悪くて、プログラム配信ができるまでには人生が暮れてしまうのでは?と危惧しております。そうそう、スマホも動画がキレイなのに買い換えました。準備万端です。準備は万端ですが、さて次にどうしようか?と、途方に暮れてる次第(笑)番組スタッフ募集ちゅう。
●あと2週間で琵琶湖合宿です。私にとっては、これがあるから生きていけるといえるようなイベントです。もういくつ寝るとお正月♪的な気分。今回は賢治童話から『かしわばやしの夜』をテキストに「ことば」を語る喜びを深めていきます。「うまいうまい。よしよし。夏のおどりの第三夜。みんな順々にここに出て歌うんだ。じぶんの文句でじぶんのふしで歌うんだ・・・」
●この複雑怪奇な時代の動き。政治もオリンピックも、生活も将来も、なんだかどうにもしようがない。さらに自然の猛威。。。ちょっとそこを離れて自分の「正気」を取り戻すことができるのが「からだとことばといのちのレッスン」。レッスンにはそんな効用・効能があるようです。オリンピックが終わったころには、何としてもレッスンの機会を取り戻して(増やして)行きたい。皆さんとお目にかかれるのを楽しみにしています。どうぞ息を深くしてお過ごしください。
●質問・感想などお便り大歓迎です。瀬戸嶋はStayhome続きで、人に会う機会が無くて煮詰まっています(笑)せめてネットを利用してお話を弾ませましょう。通信の記事に引用させて頂くつもりです。下欄のメールでどうぞ。
●いつもありがとう。皆さんもお元気で。
(ばん)

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【5】 note バックナンバー

当通信のバックナンバーをご覧になりたい方は、ばん/note
https://note.com/kara_koto_inochi/m/mdc4d18c059db
をご覧ください。

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● 私、瀬戸嶋 並びに 人間と演劇研究所『からだとことばといのちのレッスン教室』の 活動と情報は、ホームページで告知しています。
レッスンへ参加頂く際は、ホームページをご確認ください。
https://ningen-engeki.jimdo.com/

● 問合せ・申し込みは、メール karadazerohonpo@gmail.com 又は 電話 090-9019-7547 へご連絡ください。

     人間と演劇研究所代表 瀬戸嶋 充 ばん     

『からこといのち通信 №14』8月号 2021/7/15 発行

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