板前の常識は世間の非常識 包丁編
板前の常識は世間の非常識
包丁編
板前以外の皆さんは、板前がどの位包丁持ってるか想像つきますか?
刺身を引く柳刃、魚を卸す出刃、野菜を切る薄刃。。。
こんな感じでしょうか?
正解は、もっともっと多いです。
僕に置き換えます。
薄刃1本
柳刃6本
河豚引き1本
鰻割き1本
鱧切り1本
鶏割き1本
出刃4本
洋包丁3本
もうちょっとあるかな。
全部でたしか30本だと思う。
およそ普通の人には何が何だか分からないし、どうしてそんなに必要なんだろう??ってとこだと思います。
日本料理ってのは、「切る」って事が既に料理なんです。
だから、素材や仕事内容によって使う包丁が違うんです。
使い分けてるんです、めんどくさいですね。
でもね、柳刃で千切りしたり薄刃で鱧の骨切りしたりって。。。。駄目だよ。
全部が全部万能選手じゃないからね。
ちゃんとその包丁の得意とする用途で使わないとね。
あと、包丁は素材が違うんです。
包丁は鉄と鋼をくっ付けて作ります。
一般的に一番ポピュラーなのが「かすみ」って奴。 可愛い名前だよね。
その次が「鍛錬、本鍛錬」とかで、その上が「青鋼」
これは質感もプロっぽいし切れるし、なんだか持っただけで仕事出来る気になっちゃう。出来なくても。
一般に新入社員にはこの青鋼で包丁を揃える様に言います。
更に先輩のお下がりや、自分の包丁で練習して研ぐのが上手くなってくると、そろそろもっと良いのが欲しくなる。
で、その上ってのが「本焼き」と呼ばれる日本の包丁の最高峰の物。
これは簡単に言うと日本刀と同じ。
研ぎを両側から入れて、もう少し反らせば日本刀になる。
だから、最近は買う時に警察に届け出が必要って聞いた。
さらに細かく分類すると、「白一」とか「白二」とか、水焼きとか油焼きとかね。
これは「白紙一号鋼」の略。
切れ方と腰が違うんですよ。突き詰めるとね。
これ以上は専門的になるので、興味があれば直接きいてね。
まあ兎に角本焼は切れるって事。
勿論もの凄く高いし、研ぐのも大変。長さによっても違うしね。
1本20万円は下らないですね。
で、僕の包丁は殆ど青鋼。
柳刃は本焼き。 僕は水焼きの方が好きだから
「白一鋼尺二水本焼き」ってな感じの名前になる。
尺ってのは30cm、一寸が3cmだから尺二ってのは36cmって事。長いですね。
長い包丁は邪魔だって言う人もいるけど、いいの僕は長いのが好きなの。
更に、家の家宝にと家紋入の輪島塗鳳凰蒔絵鞘柄は50万円。
握りから全て伝統工芸師さんにオーダーメイド。
息子が生まれたら、渡すって決めてる。笑
結婚が先だけどね。
メーカーによっても値段が違って、僕の使ってる「子の日」ってブランドは少し高めかな。
ここはネイビーシールズ(アメリカの海軍特殊部隊)のナイフ作ったり「NOBU」グループに収めたりしてる神奈川の包丁屋さん。
先代の社長にかわいがってもらって、今の社長は研ぎ師でもある息子さん。
休みの日によく研ぎ方教わりに行ったっけ。
僕の研ぎ方が他の人と少し違うのは、板前ではなく研ぎ師に教わったからだと思う。
今日は何が言いたいかって、板前卵達は入社したら先ず包丁買いなさい。
今は使わなくたっていいの、そのうち使うんだから!
良い包丁持ってると、早く使える様になりたくて頑張れるから。
俺なんか最初のボーナスで「花梨の柄と鞘の柳刃」を買ったもん。
当時30万だったかな。
もう嬉しくて毎日磨いてたもんね。
そしたらある日、兄貴が貸せ!切れ味試してやる。っていって取られてベッタラ漬け切られたりしてね。
残念な柳刃包丁の童貞喪失になったりしたもん。
他にも早く買う事には利点があるの。
たとえば結婚すると色々物入りだろ?
だからする前に揃えちゃうんだよ、全部。
「包丁欲しいけど、買うと母ちゃんがな〜、、、」なんて言ってる先輩いないか?
そうならない為に今買うの!
独身で少しは自由に使えるお金があるうちにバシバシって揃えて、後は悠々自適に使うの。
風俗行ってる金あったら包丁買いなさい!