紙ねんどの信号
それは幼稚園の父兄参観日のこと。
土曜日なのに幼稚園に行く
次男の動きは鈍い。
ぐずぐず布団で過ごしていて、
もう8時になりそうだ。
私はというと、
初めての父兄参観ということで、
朝からテンションが上がっている。
次男の幼稚園生活を垣間見られることで、
すでに胸がいっぱいだ。
朝食を終えても相変わらず、
ぐずぐずしている次男。
見かねて、妻と長男も一緒に
幼稚園に行くことになった。
もちろん私も付いていくのだが、次男が
「お父さんは来なくていいよ」
と残酷なことを言う。
どうやら、一度、
私が幼稚園に迎えに行ったとき、
周りはお母さんばかりで
気まずくなったことを
根に持っているようだ。
幼稚園に向かうと、
何人かのお父さんが子どもを
連れて歩いていた。
その様子を見た次男、
「お母さんは、もういいよ」
自分だけお母さんと一緒にいるのが
気まずくなったようだ。
幼稚園に着くと、子どもたちは
普段どおりに着替えや朝の挨拶をしていく。
なかには、子どもの着替えを
手伝うお父さんもいたが、私は普段どおりを
見たくて、じっと次男の様子を見守った。
家ではいつまでもテレビを見ながら
ゆっくりと着替えているが、幼稚園だと、
テキパキと着替えている。ひと安心だ。
さて、歌の時間も終わり、ここからが本番。
子どもと一緒に紙ねんど作りだ。
絵具が用意され、
子どもたちが作りたいものを作るという。
懐かしい長方形の粘土が各親子に配られる。
「なんでもいい」が口ぐせの次男。
作りたいものなんてないのでは、
という心配をよそに、すぐに
「信号が作りたい」と言ってきた。
なぜ、信号機なのだろう?
ただ、なんでもいいと言われたら
「ドラえもん」でも作ろうと思っていた
大人の発想を裏切ってくれた。
まずはライトの部分をつくる。
丸めた粘土に赤や黄色の色をつけていく。
ここでも私は次男に任せて、
見守る予定だったが、周りのお父さんは
率先して手伝っている。
このペースでは無理だと思ったので、
私も積極的に手伝うことにした。
次男は周りのお父さんが
やっているのを見て、
「スマホで調べて」と信号機の写真を
要望してきた。
二人でその写真を見ながら、
一緒に作り上げていく。
私が輪郭を作って、次男が仕上げていく。
時に却って遠回りになることもあったが、
徐々に形になっていく。
そして完成。少し不格好だが、
誰が見ても信号機とわかる代物にはなった。
あとは園で乾かし、
ニスを塗ってくれるらしい。
次男は再び家に帰るために
着替えをしている。
それを見守る私は思いに耽っていた。
なぜ信号を作りたいと言ったのか、
いつの日か教えてくれるかな。
紙ねんどの信号を見ながら。
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