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初任給について

学生が就職先を決める時に、初任給の金額はどれくらいのインパクトを及ぼすのであろうか?

たぶん、就職した会社でどういう働き方を展望しているか、もっと言えば、いつまで働こうと考えているかによると思う。

終身雇用的な雇用関係を前提とするのであれば、学生として重視するとすれば、定年まで勤め上げた場合の生涯賃金であって、目先の初任給ではない。

僕が就職した頃、初任給が高い会社は総じて「ブラック」なところが多かった。社会的な評価がイマイチで、離職率も高いから、初任給で「釣ろう」という思惑だったのであろう。だから初任給が他社・他産業と比べてやけに高いと、「何かあるのでは?」といったマイナスのシグナルとして認識される可能性さえある。

銀行などは逆に初任給はあまりたいしたことはなかった。入社して何年か経過するとだんだんと給料が上がっていって、30手前で年収1,000万円を超えた。たぶん生涯賃金ベースでは他産業と比べても当時としては高い方だったと思う。

最近は終身雇用、年功序列等の日本の伝統的な雇用制度が崩れてきている。若い人たちで定年まで同じ会社に勤め上げようと考えている割合はどれくらいであろうか。あまり多くはないような気がする。それよりも、むしろ若い頃から責任のある仕事を任せてもらえて、いろいろな経験を積み、スキルを磨けるような職場かどうかといったことの方が重視されているのではないだろうか。

優秀な人材が、昔のように官庁とか邦銀ではなくて、コンサルとか外資系金融機関を志望するのは、給与水準が高いという理由ももちろんあるのだろうが、ハードな競争環境で自分の能力を短期間のうちに向上させたいという理由が大きいのではないだろうか。

リクルートとか DeNAのような企業は、若くしてスピンアウトして起業を志すような人が多いと聞いたことがある。同じようなココロザシを持ったメンバーが多い環境で切磋琢磨することは、たしかに起業をめざす人にとっては良い刺激になるのであろう。

終身雇用を前提とする日本企業の場合、入社後のキャリアパスとか体系的な研修制度についてあまり整備しているようで整備しておらず、昔ながらの徒弟制度的なOJTが基本のようなところが少なくない。言い換えれば、促成栽培的ではなくて、長い目でじっくりと育成すれば良いと考えているのかもしれないが、たぶんそういう会社だと若い人にだんだんと受け容れられなっているのだろう。

給料に関しても、定年まで勤めるのであれば、生涯賃金ベースで考えれば良いのだろうが、数年だけ働いて転職するつもりであれば、足元の初任給が少しでも高い方が「お得感」を感じるであろう。伝統的な大企業の場合、終身雇用を前提にして、若い頃は安い給料でこき使って、シニアになると逆に働きが悪くても相応の給料で処遇するといった「後払い」的な賃金体系になっている。今後は働きに応じて都度、適正な対価を支払うような賃金体系に改めないと納得が得られないであろう。逆に退職金制度とかはもはやアテにされていないかもしれない。

短期間働いて、他社に転職したり、あるいは起業したりして他の仕事に就いて、また双方の条件が合えば、元の会社に戻って来るといった、回転ドアのように常に門戸が開いたような状態、たぶんアメリカ企業などは既にそういう感じなのであろうが、日本もいずれそういうのが当たり前だと考えられるのではないか。

自社出身のOB・OGとの円満な関係を維持できれば、「関係社員」「アルムナイ(卒業生、同窓生)」といった形で組織化できるし、いざとなったら頼りになる無形資産みたいなものだと考えることができる。

そうなると、企業と社員(元社員も含めて)の関係は、クローズドに「囲い込む」のではなくて、もっと緩いネットワークのような関係性になっていくようになるのだろうし、働き方もずいぶんと変わってくるのであろう。


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