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『空をゆく巨人』面白かった◎◎◎

夫のつんどく本の中から何気なく手にとり、ペラペラめくって読み始めたらとまらんかった。なんの先入観も期待もなく、急に旅が始まって、読み終わったころには、知らない世界が自分に広がった感じ。川内有緒さんに感謝。

まず、現代アートのスーパースター蔡國強のことを知らんかった。
火薬を使って、キャンバスバチバチ火花飛ばして、絵を描くやなんて、面白すぎるやろ。めちゃめちゃやね。確かに絵はかっこいい。
そんなすごい人が、若い時に中国から日本に来て、東京(しかも最初住んでたところが板橋区)からの福島のいわき市や茨城に住んでいたとは。

今回、この本を読んでいろんな意味で、知らん事ばっかりやったけど、知った今、なんでこんなことも知らんかったんやろって思うことは。
なんでも、はじめるってことは、お金や支援がいるんであって、ましてやこんな大掛かりなアートを作りたいって思う人は、自分が描きたいことが壮大であればあるほど、それを支援している人がいるってことやね。

今まで、出来上がったアートを見て、すごいなぁ~と、その人の成果だと感心してたけど、この本で描かれているのは、中国のとある芸術家が世界的に有名になるなかで、日本のいわきの人たちと過ごしてきた時間。

いわきの実業家の志賀忠重さんの、スケールが規格外。
蔡國強のことを、全力の手弁当で!支援するんよね。これまじすごい。
夜の海、水平線に花火を通して、地平線を描くプロジェクトアートやりたいって。蔡さんが言うのよ。めちゃめちゃや。
それを、1m1000円で街の人たちが買って、準備して作って、夜、寒い中準備して、必死で成功させる。

「アートって、寒い」。まさに(笑)
功績は、蔡國強のアートなのか、これはいわきのアートなのか。
もう、そんなことどうでもいいんよね。おそらく。
私が、この本の最初のへぇ~は、蔡さんが、地元の人と作ること、この対話そのものが、アートだと言ったこと。だから失敗してもいいんだって。
この蔡さんが、なんだか感じいい人なんよね。本で読んでいると。
また志賀さんはじめ周りの人たちも、またいい感じ。
単純に、一緒にいて、なんか一緒に作ったりするのが楽しいんやろうなって、そう思う。

蔡さんはその後、世界でバチバチアートをやって、どんどんスーパースターになっていって、それでも、いわきの人たちは、ずっと蔡國強通信を作って、いわき内で配って、応援し続けているんだからほんとにすごい。
それで、蔡さんが、また、いわきの難破船をアートにしたいから、海外の美術館まで送って、って言ったら、いいよ~って送るんだよ(笑)
もうめちゃめちゃすぎて笑える。
しかも掘り起こすの大騒ぎで、人手はかかるしお金もかかる。
200万円の費用を、関係者10人で分けて一人20万円。
この船のアートの名前が「いわきからの贈り物」。まんまやん!

そして、最初のころは、自費で美術館まで行って、輸送するために解体した船を組み立てる。展示するんやね。そのいわきチームの行為そのものがアートだということで、後々は美術館が費用を出すようになるんやけど、本当にすべてが想像をはるかに超えて、おもしろい。

また、実業家の志賀さんが、蔡さんとは別に、北極海の単独徒歩横断をした大場さんを全力でサポートするくだりも、本当にびっくりした。
志賀さんの熱量がすごい。

そして、そのすべての流れの後に、東日本の大震災がおこり、現在も志賀さんが進めている万本桜プロジェクトにつながる。

ものすごく読みやすくて、私の場合、一晩ちょっとで一気に読んだ。
語りだしたらとまらんので、これでもかなりネタバレだけど、まだこのnote誰も読んでないやろと思って、書きたいように書いた。

何をするかも大事だけど、誰とするかが大事なんやなって。
むちゃぶりなことも全部含めて、それが生きるってことなんやな。



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