「リアル脱出ゲームノベル Four Eyes〜姿なき暗殺者からの脱出〜」感想

SCRAPの脱出ゲームや謎解きは好きでよくやっているのですが、今回「リアル脱出ゲームノベル」なるものを初めて読んでみました。

https://www.amazon.co.jp/リアル脱出ゲームノベル-Four-Eyes〜姿なき暗殺者からの脱出〜-SCRAP/dp/4909474528

Amazonの評価がかなりよくて読む前から過剰な期待をし過ぎていた感じはあるのですが……まぁ感想を書いていこうと思います。以下、本のネタバレを含みます。



こういう謎解き要素、推理要素を含む創作物を生み出している全関係者に言いたい……
メタ読みできる要素を帯に書くんじゃない〜〜〜〜〜!!!!

「仕掛けだらけの体験型謎解きミステリー小説」
「謎を解くと物語がひっくり返る」

もうね、この二点↑の謳い文句、さらに『Four Eyes』っていうタイトルから「あぁ一人称すり替え型ミステリー小説ね」って先読みできてしまうのよ。
極め付けは最序盤で登場する「VINEツインタワービル」。
左右対称の建物、最上階からはスカイツリーと東京タワーのどちらかしか見えないという、正直申し上げ得ると使い古されたありきたりなトリックで、短編2本目にして「はいはい一人称入れ替わりものね」と先読みできてしまい楽しみ半減でした。せめて帯の前情報がなかったら、もしくはタイトルが違っていたらもっと楽しめたのに……

近ごろこういう帯の煽り文句がネタバレになっている小説多過ぎないか? 『世界でいちばん透きとおった物語』のアオリ文「電子書籍化絶対不可能」っていうのも「あぁ、装丁か紙に仕掛けがあるんだな」ってメタ読みできてしまって残念だった。こういうコピーって誰が考えてるんだろう? 少なくとも推理小説や謎解きが好きな人が考えているとは思えないのだが。推理小説系は帯アオリネタバレに対してもっと慎重になって欲しいよ〜〜

各章に登場する謎解きに関しては初心者向けという感じで文脈上かなり不自然なところはあるものの、よく考えられていたと思う。答えが得られた時の達成感というより、「この問題作るの大変だっただろうな〜」というクリエイターの労力の方が気にかかったくらいだった。

また、登場人物のキャラクターがとても魅力的だった。
大企業令嬢ながら自分をしっかり持っている女の子と元ヤクザの冴えない四十路の探偵。この組み合わせ嫌いな人いる??
脱出ゲームノベルということで心理描写にはあまり期待していなかったけど、なかなかグッとくる文章もあった。例えば物語の最後、事件解決後に犯人について語る探偵の言ったひとこと。

「これは決して、私や彼のように特殊な過去をもつ人間だけの、特別な話ではありません。全ての人に当てはまる話です。我々はいつだって道を踏み外し得る。たとえ犯罪を犯さなかったとしても、何も考えずに生きていたら、いずれ自分や他人を傷つける」

答えを求めるのではなく、自分で考え、自分の決断に責任を持てと常に言っていた探偵の言葉です。何も考えずに生きていたら誰かを傷つけるって、まぁ当たり前のことだと思うんですけど、その対象に「自分」も入っているという探偵の考え方が、彼の背景を考えるとすごく含蓄があってなんかグッときました。終章にあるこの言葉に出会うだけでもこの本を読んだ価値はあると思っています。

結論。
謎解き・ミステリーが好きで本をよく読む人には勧めたい。ただしその時は、帯を外して手渡しするのがいいと思う。


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