私の読書●小説家志望の読書日記⑱ ベルンハルト・シュリンク『朗読者』
タイトルだけ知っていたベルンハルト・シュリンク『朗読者』(新潮文庫)を昨日から今日にかけ読み、読了。
はじめはありがちな思春期の少年のお話かと思ったが、二部以降でまったく様相を異にした展開となっていく。
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主人公が15歳のとき、初めての肉体関係を持った女性、ハンナ。
彼女を心身ともに夢中で愛した主人公だが、彼女は突如失踪する。
その後、大学で法学を学び、ゼミで裁判所を訪れた彼は、ハンナと再会することになった。
「戦犯」として裁かれるハンナに。
(ネタばれ)
実は文盲であったハンナ。
文盲の女性はそれゆえに、罪を犯し、ナチ加担者として裁かれることになったのだ。
ただ一人、その事実を知っている主人公のとった行動は?
(「文盲」という言葉は原文のままに使っています。)
この小説は「答え」を明示していない。多くの優れた小説と同様に。
けれど、おそらく読む者は、ハンナと同じ境遇で同じ状況に立った場合、彼女と同じように罪を犯さない人間がどれだけいるのかと考えるだろう。
だからしかたないというのではない、だが、ただ糾弾して済むことではない。
今も続く現代ドイツのナチの問題、また世代間のギャップの問題も窺い知ることができた。
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