今年の春はここから! 『ピーター・グリーナウェイ レトロスペクティヴ 美を患った魔術師』を映画館で皆で観ましょう!!
春の日にこんな歓びがやってくるなんて!
何だろう、『ピアノ・レッスン4K』やるからかな? とにかく嬉しい。
ピーター・グリーナウェイ大好きなんですよ。特にマイケル・ナイマンと組んでる時が最高に好き。
そこにこの4本。最高じゃないですか? まさに黄金期。
ところであなたのグリーナウェイはどこから?
わたしは『英国式庭園殺人事件』から!
日本公開、1991年に見ました。多分旧みなみ会館。もしかしたら朝日シネマかも。
明るい戸外ののどかな風景と暗い部屋の退廃、そこに流れる豊かなオーケストラの響き。細かなフレーズが何度も反復されるごとに和音や上にのる旋律が少しずつ変化して、ぐいぐいとこっちの気持ちを盛り上げるミニマル・ミュージックの極み。視覚と聴覚、双方で味わうデカダンで贅沢な映画体験でした。
『数に溺れて』
「ああやっていつも何かを数えているのよ」シシーと名付いた3人の女、この世をとりまく美しく正しくちりばめられた数の秘密。1から100までのカウントの間に語られる水底の夢。
もうたまらなく好き。最高に好きです。実はまだすべての数を見つけられていないので、今回はそこに注力してみたい。無理だろうけど。
『ZOO』
カメラの中に滝のように流れ落ちる時間。魂の死を受け入れる為に肉の腐敗を見つめ続ける。世界を美しいシンメトリーであらしめんが為、記録し、切り、身籠り、並び、断つ。
ちなみにある一定以上の年齢の人なら下のピアノフレーズを知っている筈。最初に聴いた時には「料理番組の曲にこれを使うとは」と面白くも可笑しかった。
ちなみに曲名は『Swan Rot』です。この静謐なフレーズの直後に弦楽器が大暴れします(笑)。
なお、同じ出だしで大暴れしない『Lady In The Red Hat』て曲もあります。これも良い曲。更にピアノフレーズは無いものの、同じ旋律でより重たくエモく流れていく『Time Lapse』、これがえも言われぬ程好き。開始1分半くらいからの管楽器の音打ち、2分くらいから一番上に弦が乗せてくるメロディ、2分半くらいから弦が強く奏でる繰り返しの旋律がたまらないです。
『プロスペローの本』
シェイクスピアに見せたかった……!
めくるめく光と色彩と火花を放つ24冊の生きた魔術の本。焼くなんてもったいない、わたしに頂戴! サー・ジョン・ギールグッドが素晴らし過ぎる。彼こそがプロスペロー。
グリーナウェイ×ナイマンという意味でもとびきり好きな作品なので、何故これで袂を分ってしまったのか、本当に残念。
と思ってましたが、これを書く為に改めて聴き直していると、上の『ZOO』と結構曲の雰囲気がかぶっている。もしかしたらそれが原因なのか。でもそこが良いんだよ、このワンパターンを無限に変奏させるのがナイマンの真骨頂じゃあないですかグリーナウェイさん!!!
これ以後のグリーナウェイも勿論観てはいるけれど、正直自分内ではナイマンと組んでの作品を超えるものが無い。やはり音楽が人の心情にもたらす効果はでかいのだなとつくづく思います。
『プロスペローの本』の曲で最高に好きのは『プロスペローのマジック』『ミランダ』、そして『仮面舞踏会』。疾走する弦のスピード、高らかなるウテ・レンパーの金属質な声の響きよ!
ひとつだけ残念なのは、京都、公開期間が短すぎるんですよ……!
京都シネマで1週間。映画4本を。なかなかのハードスケジュールじゃございませんこと? しかも年度替わりのこの時期に。
頼むから2週間はやってほしかった。せめて10日……!(切実)
こちら京都シネマサイトのスケジュールページから拝借してきましたスケジュール表です。
*延長決まりました。嬉しい!→日程こちら
今回の記事のトップ画像、下はBlu-rayのコレクションボックスの箱と中身の『英国式庭園殺人事件』『ZOO』のBlu-ray。
上の2つは、『プロスペローの本』のサントラと、1990年にナイマンが来日した際に記念でつくられたグリーナウェイサントラ集。『英国式庭園殺人事件』『ZOO』『数に溺れて』『コックと泥棒、その妻と愛人』のサントラがすべて入って定価8000円のスーパーお得価格。素晴らし過ぎるよね。
ちなみに今回の上映ラインナップには入っていませんが、『コックと泥棒、その妻と愛人』はまだ若かりし頃、「ヘンな映画でオールナイトしよう!」と友達と二人でおうちでレンタルで観ました。
もう最高にテンション上がりまくって、ラストの例のアレに至っては二人で諸手をあげて「ひゃっほう!」「よくやった!」てな勢い。その後映画館でも観ましたが、あの夜の体験は楽しくて忘れられない。
あとナイマン無関係ですが、『建築家の腹』のサントラも何故か持っています。
作曲者がお二人いるんですが、どちらも大変にナイマンに曲が寄っている(笑)。これは作曲者側がどうしても意識せざるをえなかったのか、それともグリーナウェイ側が「ナイマンっぽいので頼むね!」と言ったのか。
我ながらレアサントラだ、と思ってたんですが、Spotifyにもあるんですね。なんという良い時代になったものだ。ご興味ある方は一聴して、そのナイマンっぷりに痺れてください。
映画の内容は、「建築家の腹がふくらんでいく話」です(笑)。
まもなく観られる今、気になっているのは『プロスペローの本』に公開当時に日本でつけられていたボカシがあるのかどうか(笑)。
最近はズバリ性行為直前状況でもボカシが入らないことがよくあるので、今回は付いてないと思いたいのですが。その後に出た円盤とかでは無いらしいですし。
特にこの話、ナマで映ることは映ってるけど、ただ単に「人間型した精霊が精霊だから服着てなくて見えてる」てだけで、エロ状況では一切ないので、ボカシ入れる意味がホントないんですよ。
まあそういう意味ではボカシ入ってたって構わないっちゃ構わないんだけど、あの美しく完成された画面にボカシが入るとそこだけやたら浮いてしまって、逆にその局所に目がいってしまうんですよね(笑笑)。
どうなってるかな。それも楽しみに見に参ります。
映像の魔術師・グリーナウェイ体験済の方も未体験の方もぜひ。
グリーナウェイ×ナイマンという二十世紀奇跡のコラボをスクリーンで体感すべし!